矜持
捜索隊は三十人体制。
それが三部隊に分かれ、交代で捜索にあたる。
しかしその中に我々人口管理班は入っていない。我々は各自別行動を取ることを許されている。
別に優秀だからだとか、捜索隊から信頼されているからという理由ではない。
我々人口管理班は警察内部ではならず者の集団、あまり関わりたくないのが本音らしい。要は爪弾きにされているということだ。
まあ、それはそれでこちらとしても都合がいい。
うちの中にも人口管理班のメンバーしか信用していない人が多く在籍している。彼らと共同で仕事することを嫌っている人たちがいるのだ。
しかし我々はたったの十二人、交代で捜索するわけにもいかず、とりあえず一段落ついたり、少し休憩を取りたいなと思ったものは休憩を取れるという曖昧なルールを設けた。
休憩時間に制限を設けていないが、それでもほとんどの人口管理班は十五分程度で戻ってくる。
それほど真剣に取り組んでいる証拠だろう。
捜索隊が森に入って四日経つがいまだに二十人あまりの行方がわかっていない。
時間が経過すればするほど生存確率が減る。しかし我々に生死は関係ない。もちろん生きていてくれた方が嬉しいが、もうそのジレンマは乗り越えた。行方不明のままなのが一番困る。それさえ解決できればなんでもいいと割り切っている。一刻も早く見つけてやりたいと思うのは、生存者がいるかもしれないからではなく、人口管理班の信頼を損なわないためである。
「事故から雨は降っていないし、その場にとどまり続けると…思ったんですけどね」
「喋る前にシャベルを動かせ」
原警部のダジャレも気にも留めていられない。
「おい、てめえ。もっとあっち捜索しろよ」
遠くで怒鳴り声が聞こえた。
事故現場で捜索に入って我々は初日だが、中には二日前に入ったものもいる。
彼らにしてみれば焦る他ないだろう。時間が全てのこの仕事、一刻も早く行方不明者全員を見つけ出さなければ、我々の信用は地に落ち、絶妙なバランスを保っていた日本の社会が崩壊する。
そんな恐怖が彼らを余計に苛立たせ、あせらせる。
彼らは皆自分の仕事をやり遂げなければならない義務がある。
別にやりがいを感じているわけではないが、これは使命だと感じて、取り組んでいる。
まだ入って一日も立っていないのに、もう手に豆が出来始めてる。
痛いのも我慢してひたすら地面を掘り続ける。それだけ私もこの仕事に賭けているのだ。少し前までこの仕事だけが存在理由だったこの仕事に。
「いたぞ!」
遠くから叫び声が聞こえた。
「すぐに運んで乗客リストと照合しろ」
「手を止めるな、井伊。お前自身が見つけるまで…」
真剣な眼差しを向ける原警部はどうやったらそうなったのか、全身泥まみれだった。しかしこんな時でも駄洒落を言えるのが原虎元警部なのだ。
「報告、捜索隊が行方不明者三名発見、うち一人生存確認、しかし危険な状態とのこと、身元がわかり次第再度報告すると」
声の主は籾井警部補だった。
彼は捜索隊と我々人口管理班とのはしごも担っている。捜索隊の情報を我々にも共有してくれている。
「ってことはあと…」
「あと何人なんて考えるな。まだ行方不明者がいるってことだけで十分だろ!」
小島警部補も近くの土を掘り返しながら、私に怒鳴ってきた。
はたから見れば、我々も警察官の一員として人命救助を優先していると思われがちだが、実際は少し違う。我々は被災者のことは頭にない。
回収する国民を選ぶ人選機に何らかの不備が見つかれば、たちまち反対運動が起きかねない。そうすればこの人口管理班は解体を余儀なくされ、人は増える一方だ。その結果また過去のような負の産物を招きかねない。
それを防ぐために私たちは今懸命に行方不明者の捜索に当たっているのだ。
決して自分たちがクビにされるかもしれないから頑張っているのではない。
社会の均衡を保つためだ。それはすなわち国民の幸せと安全を守る警察官と変わらないのかもしれない。
結局その日は行方不明者六人の発見で捜索は明日に持ち越された。




