警視庁刑事部第零課
私は死神だ。言い得て妙だと自覚している。
かといって別に私が人知を超えた存在。崇められたり、恐れられたりする神ではない。れっきとした人間であることに変わりはない。
異名というやつだ。甘美な響きと捉えるか。
じゃあ殺し屋はどうだ。
いや、私は国の治安維持を目的とした警察官、それも刑事部である。警察官を殺し屋呼ばわりするのは冒涜であるか。
警察官というのは正義感溢れるヒーロー的な存在、他人から信頼され、敬われる存在であるべきだと思っているか。
それは固定概念に過ぎない。
人々が警察官を敬うのは、身を呈して治安維持に努めているからである。
人々の生活を脅かす犯罪者を取り締まっているからである。
しかし我々は他の警察官とは違い犯罪者を取り締まる立場にはない。
だから尊敬されない存在、というわけだ。警察官としてお墨付きをもらっているがやっていることは殺し屋と同等。
我々が所属しているのは警視庁刑事部第零課、通称人口管理班。
警視庁の刑事部は主に四つの課がある。
一課は殺人、強盗、放火などを犯した者を取り締まる。
二課は詐欺、賄賂、脱税などを犯した者を取り締まる。
三課は万引き、窃盗、空き巣などを犯した者を取り締まる。
そして四課は指定暴力団を取り締まる。
他にも鑑識課など色々あるが、我々はそのどこにも属していない。
零課。それはそもそも警察内部でもあまり知られていない。
映画やドラマによく登場する身分を隠すスパイ、というわけではない。
一応警察手帳を持っていて、警察官であることは自覚しているが、その風格はないだろう。実際なんのために働いているのか最初の頃はいまいちピンとこなかった。だから警察官として鼻が高いと言った感情を持ち合わせることができない。自分の存在を公衆の面前で晒すのは極力慎んでいる。しかし肩身が狭い、針のむしろと感じたことはない。
人事担当の総務部がある一定の基準を満たした警察官をここに入れる。
私は三年前からこの課に所属している。上層部の都合とやらで配属された。
所属しているのは私を含めて五人。
二つ上の先輩、佐竹義和巡査部長。
その上に小島慎太郎警部補。
その上に馬場雅春警部補。
そして我々、四人束ねている班長が原虎元警部。
我々五人が第零課に所属する全員であり、他の警察官から死神というレッテルを押された者たちである。
さて、早速戦国武将になぞらえた登場人物を四人登場させましたが、彼らの接点わかりましたか? それでは今後をお楽しみください。