英語力
「では、今日は現在進行形について学んでいきましょう。まず…」
現在進行形か。高校で習った記憶があったし、この前の自習用のドリルで少しやった。
とりあえず、動詞の後にingをつければいいんだったはず。
「覚えておくことはisやam、areと言ったbe動詞を動詞の前につけること」
そうだった。日本語で直訳すると〜しているだから、どこかにnowが入れば現在進行形でいいんだよな。
「では例題を見てみましょう」
先生が言ったページを開いた。
「I go to schoolを現在進行形に変えるとI am going to schoolとなります。ここにnowなどを入れるとさらにいいです」
ドリルでやった通りだ。どうやら今日も自習で良さそうだ。
「では今日の練習問題はグループに分かれてやってみましょう」
しまった、そうだった。
このクラスでは一ヶ月に一回程度先生の気まぐれで、グループに分かれる。
自分がわからない問題などを互いに交換し、そして教え合うことで理解を深めるという意図がある。
正直言って私は一人でこなしたいと思ってしまう。
「よろしくお願いします」
席が毎回決まっているわけではないし、友達と一緒に通いに来ている者もいないので、グループ分けは毎回異なる。
隣に来たのは髪の長い女性。たぶんOLだろう。
他に特に変わった特徴がないので、そうとしか表現できない。
もう一人は私と同じ歳ぐらいのサラリーマン。
この人はわからないことがあればすぐに先生に質問をする人だってことでなんとなく認識している。確か名前は…
「新庄です」
そう。新庄さんだ。
「あ、どうも。井伊です」
「夏岡です」
「じゃあ始めましょうか」
仕方なく私はドリルを閉じて、教科書の方に集中した。
「あの、ちょっと難しいですよね」
え? 思わず彼女の方をガン見してしまった。
「ほんとですよね。俺も全然わからないな。そもそも現在進行形ってなんですか。そんなの日本語にあります?」
私は頭を抱えた。
まさか自分が二人を先導していかなければならないのか。
私は小さくため息をつき、一言言った。
「簡単に言うと〜しています、です」
「なるほど、じゃあこのI’m watching TVっていうのは私はテレビを見ていますってことですか?」
「そういうことです」
「へえ」
二人とも自分のノートに何か書いている。
「じゃあこのI write message to herも同じように…」
「あ、そこスペル違います。Write のeはなくなります」
「な、なんでですか」
男の方が身を乗り出して尋ねて来た。
「なんでっていうか、それが法則だからです。多分最後がeで終わる動詞はeがなくなるんです。例えば動くのmoveもeが消えてmovingになるんです」
「な、なるほど」
男は私の教え方に感心したのか、目をキラキラさせて私の話を真剣に聞いていた。
「あの、これは…」
今度は女の方が聞いて来た。
「she does her homework…」
「これってshe doesing her homeworkですか?」
彼女も相当だなと心の中で思ってしまった。いやいや別に馬鹿にしているわけではない。
「いやそもそもdoesはdoが変化したものなのでdoingになります。前に習いましたよね。三人称のhe、 she、 itの後の動詞にはsかesが付くって」
「あ、はい!」
彼女は私の話を聞いて、"she doing her homework"と書こうとした。
「それに先生言ってたじゃないですか。進行形にするにはbe動詞が必要だって。だからdoingの前にbe動詞を付けるんです」
「ええと、sheのbe動詞はええ〜と…」
彼女が自分のノートのページを何枚かめくった。
「isです」
「あ、そうでした。てことはshe is doing her homeworkってことですか?」
「そうだと思いますよ」
同じ生徒である以上、対等な立場を貫く。私自身あまり自信がないように見せなければ…
「わあ、ありがとうございます」
まるで難しい算数の問題が解けた小学生のような達成感に溢れた表情を見せた。
その後もなんの恥じらいも、遠慮もなく次々と私に質問を投げかけてくる。全てを知っている自分がおかしいのか。
確かにこんなレベルじゃ先生も何回も同じところを復習するわけだ。
私はもう一度小さくため息をついた。
みなさん、ご無沙汰しております。こちらで何か書くのは本当に久しぶりな気がします。
このピースメイカーは書いてから二年以上経ってしまっていて、私自身今後の展開を忘れてしまっています。毎回投稿するたびに初心に返った気持ちで読み返しています。
ところで私はインター歴が長いので把握していないのですが、英語の現在進行形は高校で習うものでしたか。それとも中学でしたでしょうか。
いつだったか家庭教師のバイトで英語を一般の日本人の学生に教えた際、私も似たような経験をしました。日本の学校の英語のレベルを過大評価していて、いざ指導した際に心中で思わず主人公と同じ感情を持ってしまいました。生徒一人一人に寄り添うのが教師の性だというのに、相手のレベルを知ると終始上から目線だったなと後悔しました。教師失格ですね。私はおそらく普通の学校に通う日本人に英語を教えるのは得意ではないということを学びました。私自信経験したようなインターに通っている日本人に英語で英語を教えるのが自分には合っているんだなと思いました。




