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1、転生先は、推しの生きる世界

はじめてのオリジナル小説です!


慣れないことばっかりですが、生温かい目で見守ってもらえるとありがたいです。


私はどうやら、最近流行り(?)の異世界転生をしてしまったらしい。

マジかぁ〜〜〜…やっぱり死んでしまったのかぁ。

やり残したこと、ちょぴっとあるんだけどなぁ。

でもね、ちょーっとワクワクしてる。

だって!

転生したこの異世界、私が前世で好きだった乙女ゲーム『乙女の運命の道標』、略して"おとしるべ"の世界なんですもん!

…ただ、私、モブなんだよなぁ〜〜〜!


―――なぜ私がそれに気づいたか。

気づくに至るまでの話を、少ししようと思う。





私はどこにでもいる、ひとりのJKだった。


強面で口下手なお父さんに、ぽやぽやしてて若干天然なお母さん。

結婚してだいぶ経つのに、二人はものすごく仲良しだった。

私は姉妹が、二人いた。

キリッと真面目な、一番上のお姉ちゃん。

お父さんに似て少し口下手で誤解されやすいけれど、誰よりも優しくて、私たち妹にものすごく甘かった。

オシャレが大好きでギャルな、二番目のお姉ちゃん。

髪を染めててメイクもバチバチで、周りにはよく遊んでるように見られてたけど、実は結構身持ちが固くて隠れて色んな努力をする人だった。

そして、末っ子の私。

優しい二人の姉に、ものすごく可愛がってもらっていた。

至極真っ当に、真面目に生きてきたつもりだけど、姉二人にはよく「アンタはお母さん似だから、気をつけなさい」って言われてた。

…私別に、ぽやぽやしてないと思うんだけどなぁ。



そんな私は、高校に入ってすぐに仲良くなった友達の影響で、乙女ゲームにどハマりした。


それが、『乙女の運命の道標』。

通称、"おとしるべ"。


"おとしるべ"は、人間、魔法使い、エルフ、ドワーフ…などなど、いろんな種族が共存する世界だ。


ストーリーの舞台は、貴族や王族など身分の高い者たちが通う学園。


主人公は、そこへ通うことになった平民上がりの子爵令嬢、リズリア・ベリート。

ふわふわとした色素の薄い茶髪に、くりくりと大きくて透き通るような水色の瞳。

この世界の平均よりも小さめな背丈が、儚くか弱いイメージを助長させている。

誰にでも優しくお人好しな性格のせいもあって、騙されることが多々ある。

守ってあげたくなるような、美人というよりも全面的に可愛らしい美少女だ。



そしてこのゲームの攻略対象は、全員で四人。

第二王子、近衛騎士、宰相の息子、公爵家の息子だ。

それぞれタイプの違った美形で、どのキャラも人気が高い。


貴族社会に不慣れで純粋なリズリアに、攻略対象たちは次第に惹かれていく…という、王道モノだ。



王道乙女ゲームということもあって、このゲームには悪役が存在する。


その名は、フレイシー・デイズリー。


公爵令嬢で、第二王子の婚約者だ。


主人公であるリズリアとはタイプの違う美少女だ。

サラサラとした黒髪に、ツリ目でルビーのように赤い瞳。

メリハリのある体つきは、妖艶でセクシー。

しかしそんな容姿とは裏腹に、口下手で融通のきかない真面目な性格をしているキャラだ。



…実は私は、この悪役令嬢が最推しである。


この悪役令嬢、最終的に卒業ダンスパーティーにて断罪されてしまうのだが、絶対悪的なキャラではないのだ。

"悪役"令嬢という呼び方も、あまり似合わないような気もする。


フレイシーは第二王子の婚約者という立場や使命感から、婚約者のいる男性たちと仲良くするリズリアに注意をする。

しかし口下手なためか、言い方がどうしてもキツくなってしまい、周りにイジメだと誤解されてしまうのだ。

誰にでも優しいリズリアも、フレイシーのキツイ言い方に傷ついてしまい、苦手意識を持ってしまう。

平民上がりということもあって周りからイジメられていたリズリアは、公爵令嬢という立場の強いフレイシーのそのキツイ対応のせいで、周りのイジメがさらに悪化してしまうのだ。


フレイシー自身は直接手を下していないし、手を回してもいない。


だが、イジメを悪化させた主犯として断罪、将来の王太子妃としてふさわしくないと、婚約破棄されてしまうのだ。


フレイシーは真面目な性格なため、自分にも責任があったのかもしれないと思い、なんの言い訳もせずその結果を受け入れてしまうのだ。




私はゲームのエンディングを見ながら、フレイシーの口下手で不器用すぎるその性格に、絶句した。

…私のお父さんや長女も口下手だけど、ここまでじゃない。

何この不憫すぎる子……


…………推せる!!!!!



それから私はこの悪役令嬢のことが、大好きになった。




…と、ゲームのことはここまでで。


なぜ私が転生してしまったかというと、悲しいことに、これまた転生モノでありがちな交通事故である。


信号無視して猛スピードで突っ込んでくる車に、思いっきりはねられ、地面に強く頭を打ちつけた。

ドクドクと心臓の音が頭に響いて、意識が薄れていく。

手足の感覚がなくなり、目を瞑った……


あぁ、死んだかも。




そう思った瞬間、私はもうすでに転生していた。






温かく柔らかい感覚にゆっくり目を開くと、知らない外国風の女性に抱かれて、あやされていた。

数秒フリーズしたあと、思いっきり泣いた。


最初はものすごくびっくりしたし、恥ずかしさと慣れなさで大泣きしてばかりだったが、それも数ヶ月過ぎれば慣れてしまった。


私は、レティ・ルーキースと名付けられ、今世の母親にたっぷり愛情を注がれながらすくすくと育った。



その間に、この世界が元いた世界とは違う、"異世界"であることを知った。


母親に連れられて見た外の世界は、色んな種族の者たちが歩いており、明らかに前世と違ったのだ。





"異世界転生"したことを理解し、受け入れた五年後。


レティは、この世界が"おとしるべ"の世界であることを知った。




それは突然だった。


それまで普通に過ごしていたある日、レティは高熱にうなされた。

体の内側が燃えるように熱く、死んでしまうかと思ったその時、レティは不思議な力で部屋中をめちゃくちゃにしてしまったのだ。

家具が台風のように荒れ狂い、暴風が部屋の中を掻き回し、窓ガラスを割った。

レティはそれにびっくりして、さらに部屋をめちゃくちゃにしてしまった。

お母さんは慌ててレティを宥めようとするも、近寄ることが出来ずどうすることもできなかった。


それを治めてくれたのは、家の近くを通りかかったという、白い髭の長い、ローブを被ったお爺さんだった。

お爺さんは荒れ狂う部屋を難なく歩き、混乱するレティの額に手をのせた。

淡い光と共に、レティの中で暴走していた不思議な力が緩やかになり、荒れ狂っていた家具が動きを止めた。

レティはそのまま気を失った。



眠りから覚めると、目に涙を溜めた母親と、助けてくれたお爺さんがいた。

レティの目が覚めたことに気づいた母親が、ぎゅうぎゅうに抱きついてくる。

ぼんやりした頭のまま母親の背に手を回すと、お爺さんと目が合った。


『えっと…お爺さんが助けてくれたんですよね』

「そうじゃ、覚えておったか。具合はどうかな?」

『大丈夫です。なんだか前より体が軽いみたい。

私はレティ・ルーキース。お爺さん、助けてくれてありがとう!』

元気よくお礼を言うと、お爺さんはレティのサラリとした髪の毛を撫でて微笑んだ。



「レティか…良い名だ。

わしはシャーマル・トイティール。ただのしがない魔法使いじゃよ」




……………!?!?!?


シャーマル・トイティール、だと…!?!?


聞き覚えのありすぎるその名前に、レティはピシリと固まった。


シャーマル・トイティールは、"おとしるべ"に出てくる、いわゆる"お助けキャラ"なのだ。

主人公…プレイヤーが攻略に行き詰まった時に、好感度アップさせる方法や、助言をしてくれたり、時に魔法で(これは課金しなければつかえなかったが)助けてくれるキャラなのだ。


…いやいや、待て待て。

まだそうと決まった訳ではない。

同姓同名なだけかもしれな…


「えっ!?シャーマル・トイティール!?

あの宮廷大魔法使いの、シャーマル様なのですか…!?」

母親の驚いた大きな声が、部屋に響く。

それに対して、シャーマルは知っておったか、と笑った。

……確定かいな。

まじか。


ここ、"おとしるべ"の世界だったの!?



思わずまた気絶しそうになるも、頑張って耐える。

…そんなことって、ある!?

えっ、それじゃあ、もしかしたら、最推しに…フレイシーに、会えるかもしれない!?

ひょぇええ〜!!!

まじか!!!

内心、ひとりで盛り上がっていると、シャーマルはその長い髭を触りながらレティと目を合わせた。



「レティ。君は膨大な魔力を持っておる。

…じゃが、君の家系に魔法使いは、今は亡き父親しかおらんかったはず。

そこで提案したい。


…レティ・ルーキース。わしの弟子にならんか?」




その言葉に、レティは今度こそ気絶した。




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