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莉瑠の気持ち

 「バカッ!悠翔のバカッ!」

私は、堪えても、堪えきれない涙を拭いながら、薄暗くなった住宅街を走っていた。

悠翔は、私の心の支えだった。

高校を卒業し、本当は大学に行きたかった。でも片親で、昼も夜も働きながら私を育ててくれた母をみたら「大学に行きたい」なんて口が裂けても言えなかった。

だから高校卒業とともに働いた。昔から洋服が好きだった。だからそんな理由でアパレルの会社に就職した。


 就職して後悔した。ノルマに追われ、お局のお姉さまに嫌味を言われる毎日。

ノルマを達成できないから自分で服を買った。そんな生活を一年以上も続けられたのは悠翔がいたからだった。

 悠翔は、いつも優しくて、背が高くて、時には私を叱ってくれていた。

そんな悠翔から別れを告げられた。


「なんで…なんでよ…!」

いつの間にか家についていた私は荒れる息も整えず、ベッドでぐしゃぐしゃに泣いていた。

悠翔が、悠翔がいなかったらこんな生活は耐えられない。

少ない給料の中から、家賃、生活に掛かるお金、ノルマを達成できなかった分の補填、母への仕送り。

自分のお金なんて全然残らない。髪もボサボサで何か月美容院に行けてないのだろう。

今は束ねてなんとかしているが、もうそれも限界にきている。


 月に一度か二度、悠翔に会える日だけが私の心の支えだった。

社会人、大学生の関係性上、あまり会えないし、お互いお金もないから、近場でデートするか、どちらかの家で映画でも見て過ごすことがこの一年大半だったけど、それでも幸せだった。

「幸せだと思っていたのは私だけだったのかな?」

わからない。何故、振られたのかわからない。

私の中には悠翔しかいなかった。悠翔だけだった。

辛い仕事に耐えられたのも、ストレスに耐えられたのも、悠翔がいたからだった。

悠翔無しでは生きていけない。

私は少し冷静になってきた頭を回転させてみる。


「なんでなの?」


わからない。本当にわからない。

今日もいつも通り休みが合ったので悠翔の家で映画をみていた。二人でお酒を少し入れながら推理ものの映画だった。

見終わっていつも通り感想を言い合いながら雑談していた時だった。

 「俺たち別れよう」

一瞬理解できなかった。

「え?なに?」

「だから俺たち別れようって」

そこからはあまり記憶がない。凄く喚いていた気がする。何故だがも問いただしたが「お互いの為だから」という返答しか返ってこない。

 私は混乱していた。今の今まで幸せに過ごしていた。特別な何かはなかったけど、辛い毎日から逃れられる悠翔との時間が大好きだった。

本当に、本当に悠翔の事を好きだった。

これから過ごしていって、悠翔が大学を卒業したら一緒に住んで、結婚もして、子供もできて…

なんて想像もしていた。それがあったから頑張れた。

だけどそれは予想もしてなかった一言で崩れ去った。

悠翔に別れを告げられてから一時間程経過したが、考えても考えても何故別れを切り出されたかが分からなかった。


そんなグルグルとした思考のまま、気づいたら私は眠っていた。


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