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別れは突然に

 別れは突然に。


 「なんでなの?なんで別れなきゃいけないの?」

「いや、だから言っているだろ?お互いの為を思って…」

「知らない!そんなの知らないよ!」

「いや、知らないっておま…」

「悠翔はいつもそう!肝心な所は絶対言わない! いつもいつもいつも!」

「だから説明を…」

「もう知らない!」


 バシッ!


「……」

「さよなら!」


そう言って扉を壊さんばかりに開けて出ていく莉瑠。

そのあけ放たれた自宅のドアを眺めつつ、右の頬を撫でてみた。

「今まで一番痛かったな…」

ハハッとお道化て笑ってみるがその姿に誰もツッコミは入れてくれない。


俺は今、彼女と別れた。

高校二年生の夏から付き合って四年目の今日。俺は莉瑠と別れた。

理由は色々ある。料理が全然できない所、結構短気な所、根に持つタイプな所。

でも一番は

「自信が、ないんだよなぁ」

そう、莉瑠を幸せにする自信がなかった。

俺は第一志望の大学を落ち、滑り止めの私立大学にギリギリ合格をし、なんの目標もなく、なんのやる気もなくただ日々を過ごしている。

 一方で莉瑠は高校卒業とともにアパレル系で働き始め、毎日をテキパキと楽しそうに過ごしている。

そんな莉瑠と俺を比べると凄く、虚しく、情けない気持ちにどんどんなっている自分に気が付いた。

そんな自分に気が付いたらもう後は劣等感との戦いだった。

 実際莉瑠がどう思っていたかはわからないが、会うたびに情けない気持ちになっていた。

そんな莉瑠を今後幸せにできるだろうか?俺に?

「無理…だよなぁ…」

そう思い始めたら止まらなかった。もう止められなかった。

この先あと何年か付き合ったら結婚の話も出るだろう。ただ、目標も何もない俺は大学を卒業したら適当な会社に入って、適当な給料を貰ってこき使われるだろう。

そんな人間に莉瑠を養う力があるだろうか?いや、無い。

もし、子供なんて生まれた日には一人で二人を養っていくなんて到底無理だ。

そんな事を考え始めたらもう莉瑠と付き合うのは無理になっていた。

 莉瑠の事は…多分今でも好きだ。

多分というのは四年も一緒にいるともう、その辺りの感情がよくわからなくなってくる。

だが、一緒にいて楽だし、莉瑠以外の女の子と付き合いたいかと聞かれてもそれは無い。

 可愛くて、誰にでも愛想がよくて、いつでもオシャレにしていた莉瑠。

自分の方が疲れているだろうに毎日連絡よこして「今日もお疲れ様!」なんて送ってくるマメさもあって、俺が風邪で寝込んだ時には会社を早退して家まで看病しにきてくれた。

会ったらもちろんいつもの莉瑠だ。いつもの莉瑠だが話す節々に「大学生のくせに」と思われているのではないかという恐怖がいつも襲った。

 デートをしていても高校生までは割り勘だった。むしろ見栄を張るために俺が多く出していた時もあった。

が、大学生、社会人になってからは莉瑠の方が多く出していた。

「悠翔、バイトでしょ?学生は学業が本分なんだから、ここはお姉さんに任せなさい!」

なんてお道化ながら奢ってくれることも、俺のプライドに傷をつけていた。

わかっている。つまらないプライドと決まってもいない未来に自分で恐怖して、一方的に莉瑠を傷つけたことくらい。

わかっている。

「莉瑠…」

 俺はホッとした気持ちと、後悔とが入り混じったぐちゃぐちゃな気持ちを抱えて、ベッドに潜り込み、少し涙を流した。

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