8話 誓い
みんなか寝静まったころ俺は姉の部屋に行くためにシーンと静まり返った廊下を歩いていた。
【アリスにすべてを話すのですか?】
俺が姉にどこまで自分の事を話すかが気になったのだろう、ラファエルが念話で話しかけてきた。
【ああ、大体のことは、話しておこうと思う】
【すべてではないんですか?】
【ラファエルの力を使えることは話すが、契約の内容は話すことはできないんだろう? あと契約をして、ラファエルの力を使ったといっても自分を責めるかもしれないだろう?】
【なるほど、それなら安心です】
ラファエルは俺のことを案じてくれたのだろう。
【ありがとうな、ラファエル】
【何がでしょうか? 私はただ………】
ラファエルが早口でまくし立てているのが少しかわいいなと思いながらラファエルと念話で話していると姉の部屋に着いた。
コンコン
いつものことながらノックをする。
小さい声で
「クリストフです、中に入ってもよろしいでしょうか?」
すると中から声が聞こえた。
「どうぞ」
姉の声を聴いてから部屋に入る。
姉はベッドの上にパジャマの状態で上半身だけ起き上げて俺を迎えてくれた。
「夜分に失礼いたします、体調は大丈夫ですか?」
「ええ、とても体が軽いの。 不治の病にかかっていたのがウソみたいだわ」
そう言って姉は微笑んだ。
「良かったです、それではなぜ病が治ったのかを話してもいいですか?」
俺の言葉を聞いて姉は真剣な表情になった。
よし、話すか。
「単刀直入に言います、お姉さまの病は私が直しました」
姉は意外と驚いていない、なんとなく察っしていたのだろう。
「信じられませんかもしれません、それもそうですだって医者や回復士までお手上げだったからです、それでもなぜ私が病を治せたかというと私は天使の力を使えるんです。 ラファエル出てきてくれ」
俺がそう言うと、ラファエルが霊体の状態で出てきた。
「私は四大天使が一人、ラファエルよ。 よろしくねアリス」
姉は口をぽかんと開け放心状態になっている。
そりゃそうなるよな。
俺は内心で苦笑する。
「ラファエルは、治癒をつかさどる天使なんだ。 だからお姉さまの病を治すことができた。」
「え、あれは夢じゃなかったの?」
姉は小さな声で何かをつぶやいたけど声が小さくて聞き取ることはできなかった。
「お姉さま?」
俺が聞き返すと、姉は慌てて
「ううん、なんでもないの。 クリストフ、ありがとう私のことを助けてくれて、あなたは私の誇りだわ」
姉の言葉を聞いた瞬間、俺やったことは
間違えじゃなかったんだと思えて何だか涙が出てくる。
俺は家族を救うことができたのか………
「クリス………ありがとね」
お姉さまは俺のことをそっと抱きしめてくれた。
「申し訳ありません、お姉さま。 ふがいないところを」
すると、姉は俺が言ったことが気に入らなかったのか口をとがらせた。
「クリス、その口調はなに?」
え、俺は何を怒られているんだ?
貴族は誰に対しても敬語じゃなかったのか?
俺は何かおかしいことをしたのか?
「えーと?」
俺が首をかしげていると姉はさも当たり前のことをいうかのような口調で
「私のことはお姉ちゃんでいいわ、あともっといつも通り話してくれていいのよ、クリスもそのほうが楽でしょう? だって私たちは家族なんだから!」
「………」
俺は前世からのこの人生で、ずっとこの言葉をかけてもらいたかったのかもしれない。
家族。
それは普通だったら誰もが当たり前に持っているものだ。
だが俺はそんな当たり前を知らずに、家族の無条件の愛情っていうものを知らずに生きてきた、それを少しでもその《《当たり前》》を感じたくて、俺はアニメやラノベを見まくった、それでも心の中にぽかっと空いた穴が埋まらなかった。
それでも今の言葉を聞いた瞬間、その心の中に空いた穴が埋まっていったような気がした。
やばい、また涙が………
そんな俺を見て姉は
「もう、クリスは泣き虫なんだから」
そう言って声をあげて、うれしそうに笑った。
これが家族なのか。
この時感じた感情を俺は一生忘れない。
そして、俺はこの感情を始めてくれた《《お姉ちゃん》》のことを一生大事にする、そして一生守って見せる!
俺は心の中で誓う。
俺は姉のことを一生大事にしようと心の中で誓った。
「ははっそうだねお姉ちゃん! これからもよろしくね」
お姉ちゃんは太陽のような笑顔で言った。
「もちろんよ! こちらこそよろしくね、クリス」