死神の館⑤
感慨深く、座っているとアリスはどこからか取り出してきた辞書みたいに分厚い本を持ってきた。
そして、とことこと歩いてくると……僕の膝の上に座って本を開けた。
「さて、これで見れるわね」
「いやいや!! ちょっとまって!?」
「なに? 声が大きいわよ」
「なんで、膝の上!?」
僕は目を丸くしながら突っ込んだ。
妹と同じぐらいだろうか。女子の体重とは羽のように軽いんだと思いつつも、嗅いだことのないいい香りが広がり、恥ずかしさでいっぱいだった。
「仕方ないじゃない。こうしないとあなたは文字を読むことができないの……それとも、恥ずかしいからやめておく?」
「なっ!」
くすくすとからかわれる。
思いっきり力を入れれば、この場から逃げ出すことができる。
でも……それは負けを認める。
女の子にからかわれて、負けを認めるのはなんだか嫌だった。
「べ、べ、別に! このままで、いい、よ……」
それが僕にとって精一杯の返事だった。
「声で動揺しているのがバレバレね。かわいいわ」
「……くぅ!」
ぐぅの音も出ない。
とにかく、僕はアリスを膝の上に乗せたまま、ふかふかの玉座の上で持ってきた本を見ることになった。