死神の館④
中に入るとそこは思っていた通り、ボロボロでだった。
立ち止まって観察すると階段は穴が空き、椅子や机は脚の本が一本足りず倒れている。
こんな状態で僕に何を見せたいのだろうか。
「あまり長く立ち止まっていると穴が空くわよ」
「ひっ!?」
その言葉に反応して、思わずその場からジャンプして後ろに下がった。
着地の瞬間、足元でバキッ! と嫌な音が聞こえる。
「…………」
「運がいいわね」
冷や汗がだくだくと流れる。
「遊んでないで、早くこっちに来なさい」
「う、うん。すぐに向かうよ」
僕はどんどん先に進むアリスの後ろをついていった。
「着いたわ」
「ここが目的地なの?」
「ええ、そうよ。そこに椅子にでも座って待ってなさい」
アリスが指で示した。その先には玉座があった。
足が欠けておらず、ふかふかで座り心地がよさそうだ、
普段の僕だったらこんな高級品に座ることを躊躇うのだが、椅子自体が意思を持つかのように吸い寄せられるように座った。
「……すごい、しっくりくる」
想像以上だった。僕のために作られたと言っても過言ではないほどに高さが合う。成長期の僕としてはちょいちょい大きめの椅子が多かったからこれはとてもうれしい。
そして、ふかふか過ぎないとは恐れ入った。
(漫画やゲームの世界の王様はこんな椅子に座っているのか)
もし、そうだったなら椅子から離れない理由がよくわからない。
立つのが面倒というか、椅子に座っていることが自然体なのだ。
どれほどの強者であっても、この椅子から離れるのは至難の業だろう。