死神の館
(あれ、僕はどうなったっているんだ)
頭の中にモヤがかかっているような、そんな状態でも僕の足は動いていた。
歩く。歩く。
とにかく歩いた。
どこに向かっているのか。何のために歩いているのかわからない。
僕の足が僕の物ではなくなったのだろうか。
闇の中を、火の中を、針の中をひたすら歩いた。
痛いとか苦しいとか嫌だとか、感情が芽生えることは無かった。
そして……僕は自分の足が止まるまで歩き続けた。
「ははっ、僕はどこに行くつもりなんだよ」
目の前の建造物を見て、笑った。
久しぶりに足元ではなく、顔を上げたらとんでもないものがそこにあった。
足が止まったから、ようやく目的地に着くことができたと思うがここが目的地なのか考えものだった。
そこは古びた洋館。
錆びだらけの屋根に、外壁はボロボロで今にも崩れてしまいそうだ。
何度かゲームで見たことがあるようなオンボロ洋館だ。
そんなところへ何のために僕は……。
そんな時、後ろから声が聞こえた。
「あら、お客さんだなんて珍しいわね」
「えっ」
振り返ると彼女はそこにいた。
僕と同じ背で、銀色の髪をなびかせて神秘的だった。
一瞬にして、僕の目は奪われて見惚れてしまう。
まるで、人形のような手足を動かし、素通りすると館の門に手を触れて開けた。
「ようこそ、死神の館へ。私はこの館の持ち主のアリス。あなたは……どんな力を手に入れたくてここに来たのかしら」
彼女は……アリスは新しいおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべた。