魂が叫んだ
「それじゃあ、アリス。僕は戻るよ」
「……念のために聞きますが、どちらの方法でしょうか?」
「もちろん、弱っている人を助けるほうを選ぶよ」
「そうですか」
アリスはたんたんと口にした。
「では、やり方の説明です。その玉座で目を瞑れば、助けてほしい魂の声が聞こえるはずです」
僕はアリスに言われたとおりに目を瞑る。
「……なにも聞こえないのだけど」
「当り前です。そう簡単に、誰かが助けてほしいなんて思うはずが……」
確かにアリスの言う通りかもしれない。
まだ、帰る事は出来ないのかと目を開けようとしたその瞬間だった。
『…………し、に……たく、ない……』
「聞こえた!?」
「!?」
確かに聞こえた。
僕はもう一度、その声を聞こうと目を閉じ続ける。
「主様。もう一度、声が聞こえたら、頭の中で『憑依』と念じてください。それで、うまくいくはずです」
「わかった」
やり方はこれですべてだろう。
あとはもう一度、同じ声が聞こえるかどうか。
もしかしたら、最初の声だけがチャンスだったかもしれない。
それでも…………。
(誰かを助けられるなら、助けたい)
僕はそんなことを思った。
そして、その数秒もしないうちに魂が叫んだ。
『死にたく、ない!!』
(憑依!!)