二時間目を待ちながら(7)
心春と夏海が話していました。
「大阪ってすごいよね」
心春が言うと夏海が自慢げに答えました。
「そりゃな。日本で二番目の都市やからな」
「人が多いよね」
( ※ 夏海は大阪出身ですが奈良に引っこしてきました。心春は奈良出身です。)
「まぁ、奈良よりは断然多いな」
「鹿を足してもかなわないなー」
「なんで鹿足す?」
「大仏様も一人としてカウントされるかな?」
「人間じゃないしな、大仏様は。しかも一人足した所で……」
「大阪はすっごくすごいけど、私、人の多い所苦手だから、やっぱりのんびり田舎の奈良がいいかなー」
「うちも人込みは苦手やけど、大阪は色んな物あるから、いい勉強になるで」
「そうだね。いいものがありすぎて、迷うんだよね~」
よだれを垂らしそうになって言う心春に、夏海は目を細めて言いました。
「食べ物以外も色々あるよ?」
「今度大阪行ってみない?」
「全然いいよ。うちが案内したるわ」
「ほんと!」
「うん。って言うても、うちが知ってる所なんか知れてるけどな。うちの実家とか」
「実家?」
「うん」
「夏っちゃんの?」
「せやで?」
「あれ? 夏っちゃんの実家って『何とか村』じゃなかった?」
「千早赤坂村」
「村?」
夏海は不機嫌そうに言いました。
「何か?」
「大阪なのに『村』?」
夏海は気まずそうに言いました。
「せや。まぁ、もしかしたらここより田舎かも知れへんな。山は多いかなー……」
「大阪に行きたいんだけど?」
「大阪やし!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。