二時間目を待ちながら(6)
心春と夏海が話していました。
「暑いね・・・・・・ 夏だね・・・・・・」
下敷きで煽りながら、気だるい声の心春に、夏海は相づちを打ちます。
「せやなー、暑いな。ところで夏といえば?」
心春はやはり気だるい様子で言いました。
「暑いねー。夏と言えば」
一方の夏海はまだまだ元気そうです。
「暑いけど、夏といえば?」
「暑いよね」
「暑いけども! 暑いけど、他にあるやん! 夏と言えば? 何?」
「夏といえば? え? 何? スイカ?」
「スイカ? うん、いいなー。他には?」
「えっー・・・・・・」
心春はもう答えるのも面倒臭いくらいに、暑さでバテていました。
「かき氷とか?」
「うん、うん。他には?」
「他?」
「うん」
「食べたい・・・・・・」
「食べたい?」
「かき氷食べたい・・・・・・」
夏海はケラケラ笑いながら言いました。
「そこは我慢しよう! ここは学校の教室やし! それに、この暑さやったら氷も溶けそうやん?」
「かき氷・・・・・・ 食べたい・・・・・・」
「大丈夫か? 心春。思考回路回っているか?」
「暑さで回ってないよ・・・・・・。そもそも夏っちゃんが尋ねるから、かき氷が頭に出て来たんだよ?」
「いいやん。涼しいやん。かき氷を思い浮かべたら」
「頭の中にあるのに、食べられない、この苦しみ・・・・・・。一体誰と分かち合えばいいの?」
「分かち合う必要ある?」
「じゃ、『夏』と言えば何が正解だったの?」
夏海は『待っていました』とばかりに親指を自分の顔に向けて言いました。
「正解は『うち』! 夏と言えばこの私! 『夏海ちゃん』です! 名前の一字に入ってるし、うち、夏大好きやわー!」
夏海がドヤ顔で言うと、心春は前のめりに倒れ、机に顔をぶつけると、泣きそうな声でいいました。
「暑いよーーー !!」
「そこまでテンション下がらんでもいいやん!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。