五時間目を待ちながら
教室で心春はぞうきんがけをしていました。そこにほうきを持った夏海がやってきます。
「頑張ってるな、心春」
「うん。ゴミを救ってあげて、綺麗な湖(バケツの事)の中へ導いてあげるの。そう! 私はまるで女神様!」
「そっか。心春は『ゴミの女神様』か」
「言い方!」
「あなたの落としたのはこの綺麗なゴミですか? それともコッチの汚いゴミですか?」
心春は答えました。
「ゴミに綺麗も汚いもありません。でもゴミを拾う人の心は綺麗だと思います」
「あなたの心も綺麗だと?」
心春は気恥ずかしそうに言いました。
「えへへ、もしかしたら、そうかも知れません」
夏海は即答しました。
「あなたは噓つきです」
「なんで!?」
「褒美にゴミを全部あげましょう」
「いらない!」
「そもそも湖にゴミを捨てるなんてもっての他やん!」
「うっ!(湖ってバケツの事だけど……)」
心春一瞬ひるみましたが、すぐに言い返しました。
「じゃ、女神様に尋ねます。地球のゴミは一体どこに捨てればいいのですか?」
夏海が返事に困ります。
「そうですね。えーと・・・・・・」
「女神様でも解らない事が・・・・・・」
心春の台詞の途中で夏海が言いました。
「宇宙です!」
「宇宙?」
「そうです。宇宙です」
「それじゃ、宇宙の女神様に怒られます」
「じゃ、その向こうの方です」
「『向こうの方』ってどこ!?」
夏海は会話に詰まってしまい、自分の掃除場所に戻りながら言いました。
「何億光年先の宇宙の彼方です」
夏海が教室から出た後も、心春は考えました。そして夏海を追いかけて心春は大声で叫びました。
「じゃ、『何億光年先の宇宙の彼方の女神様』に怒られるよ!」
叫んだ後に、心春はすぐ近くにいた先生からしばらく質問を受けました。