二時間目を待ちながら(5)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春はペットボトルを持って色んな角度から眺めていました。500ミリリットルの空っぽのものです。そこに夏海がやってきました。
「何してるの? 心春」
「あっ、夏っちゃん。あのね、ペットボトルって・・・・・・」
「不思議やな」
「だよね!」
少し間があって夏海が言いました。
「うちはそう思ってないけど、多分心春はそう言うやろうなー、と思って言ってみた」
心春は視線を手持ちのペットボトルから夏海に移しました。
「だよね?」
「いや、『だよね?』じゃなくて・・・・・・」
「大昔にペットボトルを持っていったら、『何コレ!?』ってなると思うの」
「なるかも知れんけど・・・・・・ ペットボトルに限らず」
「ただでさえ、こんな不思議な形をしてるんだもん。大昔だったらもっと大変だよ」
夏海は尋ねました。
「何が大変?」
「大変なんだよ」
「だから、何が?」
心春はペットボトルをクルクル回しながら真剣に眺め始めました。それからいきなり夏海の顔の前にペットボトルを突き出しました。夏海は驚きました。
「わっ!」
「よく見て! 夏っちゃん!」
夏海は少し仰け反った姿勢のままいいました。
「何?」
「ペットボトルって、やっぱり不思議だよね!」
「不思議を無駄に推すの止めて!」
夏海は軽くため息をつくと言いました。
「うちももうすぐ空になるペットボトルあるから、心春にあげるわ」
心春は遠慮がちに言いました。
「それは、いいかな・・・・・・」
「え? 何でなん? ペットボトルにも色んな形あるで。比べてみたら面白そうやん」
「二本もあったら多いし」
「なんで急に実用的になるねん。めっちゃペットボトルに興味ありそうやったやん。比べてみたら絶対面白いって」
心春はペットボトルをスッと差し出すと、夏海は反射的に片手で受けとりました。
「何?」
「じゃ、夏っちゃんにあげる」
「え?」
「そんなに欲しいのなら、夏っちゃんにあげる」
夏海は口を開けて、一瞬固まった後に言いました。
「い、いらんし!」