二時間目を待ちながら(3)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が夏海の席にやってきました。
「夏っちゃん、見て」
「ん?」
心春は夏海にシャーペンを見せました。
「イエロー!」
心春が夏海の目の前に差し出したのは、真っ黄色なシャーペンです。
「黄色やな。いいんちゃう?」
心春は嬉しそうにいいました。
「いいでしょ?かわいいでしょ?」
夏海も筆箱からシャーペンを取り出しました。
「うちも、ほら」
シンプルな青いシャーペンです。
「青シャーペンだ。なかなか知的なイメージがするね」
「やろ? うちにピッタリやん」
「そうだね。夏っちゃんは名前には青色の『海』が入ってるもんね」
「あー、そっちもやけど、『知的』な方も含めてやで?」
「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて」
そこに冬菜がやってきました。心春は夏海にこっそりいいました。
「ふーちゃんはどんな色のシャーペン使ってるんだろね?」
※心春は冬菜のことを『ふーちゃん』と呼んでいます。
「せやなー、冬菜の(清楚な)イメージからすると、白かな?」
「私もそんな気がする」
冬菜が二人に話しかけました。
「おはようございます」
心春が冬菜にいいました。
「おはよう、ふーちゃん。ねぇ、ふーちゃんはどんなシャーペン使ってるの?」
「え?『どんな』と言われましても、普通のシャーペンだと思いますが……」
「見せて!」
「うちも見たい」
冬菜は小首を傾げながらも
「少し待ってくださいね」
と言ってシャーペンを取って来ました。
「これですが」
と二人の前に見せました。心春と夏海は驚いていいました。
「黒!?」
「黒か! なんか、そんな気もしたなー」
「そっかぁ。ふーちゃん、黒だったんだ?」
「裏表的なもんかなー」
心春と夏海はがっかりした様子ながら、妙に納得していました。冬菜が慌てながら言いました。
「あの、なんでしょうか? 黒だったらいけなかったのでしょうか?」
夏海がいいました。
「いや、別に悪い意味じゃないから……」
と言いながらも、うつむいて小声で言い直しました。
「あっ、でも、悪い意味やわ……」
冬菜は更に慌てて尋ねました。
「わっ、悪い意味ですか!? 何が悪かったのでしょうか? 教えてください! 気になります!」
心春はいいました。
「黒でもふーちゃんの事、大好きだから!」
夏海も続けていいました。
「うちも冬菜の事、好きやで? 例え黒であってもな」
冬菜は少し泣きそうになりながら言いました。
「黒色がいけないのですか? ですがシャーペンって、『黒』が多くないですか?」
心春と夏海は頷きながらいいました。
「あれ? そういえば、そうだね?」
「うーん、せやな」
急に納得した心春と夏海は、低姿勢になっていいました。
「えっと。ごめんね、ふーちゃん」
「なんか、すまん。冬菜」
冬菜は一層、混乱気味にいいました。
「なんですか? どうして私、急に謝られたのですか!?」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。