二時間目を待ちながら(1)
奈良県の(別に奈良県でなくともよい訳ですが)とある教室にて。
ある日。二時間目を待ちながら。
心春は自分の席に座りながら、空いた窓から見える雲を眺めていました。そこに夏海がやってきます。
「ほんま心春はよく外眺めてるな」
心春は視線を夏海に移しました。
「あっ、夏っちゃん。おはよう」
「おはよ。何見てたん?」
「えっと……」
心春はまた空を見て言葉が続きません。夏海が言いました。
「あぁ。ええよ。特に何って訳でもなく、ぼんやりと空でも眺めたい時ってあるもんな」
心春は少し感心したように言いました。
「ふ~ん。そうなんだ?」
「えっ? 違うん? ほんまになんか見てたん?」
夏海は心春と同じ視線で空を見ました。しかし、大きな雲が浮かぶだけで空には何もありません。
「何もないやん」
心春がのんびりと言いました。
「う~ん。こうやって夏っちゃんと一緒に空を眺めているのも、悪くないかなー」
「はい? 何それ?」
夏海が鼻で笑うと、心春は言いました。
「この空にはきっと、何かある気がするの」
夏海は眩しい日差しに顔を上げて微笑みました。
「まぁ……。そうかも知れへんな。この空の向こうには何かあるかもな。何かありそうな気もする。でも、何て言うか、『どうしたん?』て、なるわ。急にそんな事言われたら」
「そう?」
「心春はほんま変な子やわ」
苦笑混じりに言う夏海に、心春は言いました。
「あの雲の中には巨大宇宙戦艦が隠れているの」
「ん?」
「きっといつかやってくる宇宙人との対決に備えているんだよ」
「え?」
「いつ現われるか分からない。だからね、私……」
心春は椅子から立ち上がると、力強く言いました。
「ずっとそれを監視してたの!」
夏海はわずかに一歩下がると、言いました。
「え? ……心春ってもしかして、ほんまに変な子?」
「あれ? 夏っちゃん。さっきもそう言ってなかった?」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。