始まりの日
時は、2018年、夏真っ盛りの8月末日。
日本全国で暑さが激しく、熱中症注意報が各地に出されていたある日のことだ。
その日は、ニュースで大々的に取り上げるような事件もなく、たいしたことが起きていない普通の晴れの日だった。
人々は、暑さに参りながらも通常と変わらない毎日を過ごすはずであった。
しかし、その日起きたことは日本に住む人々のすべてを変えた。
生き方、性格、仕事だけではない。
ありとあらゆる個人に対する何かを変えた。
人々は、後にその日を『始まりの日』と呼ぶようになった。
☆
『やぁやぁ、日ノ本のみんな。こんにちは~。』
突然頭の中に声が聞こえてきた。
その声は、男の声のようにも女の声のようにも聞こえる、なんとも言えない不思議な声であった。
通りを歩いていた人は立ち止まり、自分に話しかけられたものと思い声の主を探し回る。
家の中にいた人は、テレビかラジオの声かと思い声の出所を探し回る。
寝ていた人は、頭の中に声が直接聞こえたので、無理やりにでも目覚めることとなった。
『周りを探しても、私はそこにはいませんよ~。みんなの頭に直接話しかけていますからね~。』
8割の人々は、幻聴が聞こえると嘆き始めた。
2割は、これってテレパシーwwwまじ超能力ってあったんだと喜んだ。
ほんの少しの勘のいい人々は、これはまずいと直感的に感じ、人によって様々な形ではあるが動き始めた。
『ん~~~。お、これでみんな聞ける状態になったね。いやね、日ノ本のみんなに声を聞かせるのは、初めてじゃないんだけどね。昔とは違って人がいっぱいだからちょっと手間取っちゃったよ。』
大抵の人々は、この声の言うことが正しいのかどうか判断しかねることではあったが、正しいとするなら日本にいるすべての人に対してこの声が聞こえているんだと考えた。
それこそいったい何なんだ、こんな超常現象を起こせるなんてどういうこと?と頭の中はパニック状態だった。
『あ、みんなの声もこっちに聞こえているけど、めんどくさいから返事はしないよ~。お前は誰だ、神なのか?宇宙人なのか?とか私のことを聞きたい人が多くて困っちゃう~。私のことに興味津々みたいだけど、みんなの困った顔とか好きだから~~~教えない。キャハハハ。』
笑い声が頭の中に直接響いてくる。
話しかけてくる時の声は、普通に聞こえたのだが、なぞの声が笑い声になると何故か人々の体に震えが起きていた。
寒いわけでもないのに、体が勝手に震えだし、人々はなぞの声に対し黙りこくった。
『はははぁ~~~。話が中断しちゃったね。ごめんね~。』
声だけが聞こえていた人々の脳裏には、黒い人型のようなものが片手でごめんしている姿が映っていた。
『んで~本題なんだけど。最近の君たち、輝いてないよ。』
(???)
人々は、なぞの声が何を言っているのかわからなかった。
『私はね~、それなりに昔からみんなのことを観てきたけれど、最近のみんなが一番残念。輝きが足りない。人がいっぱい増えたから、もっと輝く存在が増えるかと思っていたのに、全然そんなことなかった。むしろ、人が増えるにつれ、輝く存在が少なくなっていくのが不思議だよ。何故なんだろう?』
(輝くって何?)
人々は、なぞの声が何を言っているのかわからなかった。
『輝く存在を観るのが、私の趣味なのに~。このままだと輝く存在がいなくなってしまうと私は感じたのですよ。これはまずいと、私の大事な趣味がなくなってしまうのでは?と考えたんですよね~。そこで私の鋭敏な頭脳は、解決策を思いついたんですよ。』
(趣味って?解決策?)
人々は、なぞの声が何を言っているのかわからなかった。
『お、みんな、気になっているようですね~。私の解決策が何か、教えて欲しいようですね~。うーーーーん。どうしよっかなぁ~。教えようっかなぁ、みんなが気になっているようだから、あえて教えないで突然はじめたほうが面白いかもなぁ。悩むなぁ。』
(はじめるって、なにを?)
人々は、なぞの声が何を言っているのかわからなかった。
『うーん。…よ~し、決めた。ここは多数決だぁ。私の計画[またみんなで輝こう]の詳細を教えて欲しいという人が8割超えたら教えてあげる。さぁみんな、教えて欲しい人は、肉体を使ってもよし、心の中でもよし、手をあげて。』
(突然多数決って?心の中で手をあげてって?)
人々は、なぞの声が何を言っているのかわからなかったが、とりあえず手を上げることにした。
『お~~~。手を上げてる人が9割超えているよ。すごいねぇ。私の計画[またみんなで輝こう]は、大人気ですね~。こんなに賛成してくれる人がいるなら、成功間違いなしじゃないですか。うれしいですね~。』
(賛成なんてしてない。内容を聞きたいだけ。)
人々は、喜ぶなぞの声に盛大なツッコミを入れていた。
『じゃあ教えてあげますね~。簡単に言うと、みんなに輝きを取り戻してもらうために、この私が一肌脱ごうかと~思ったんですよね~。』
(…はい?意味わからない。)
人々は、簡単に言われてもまったく何を言っているのかわからなかった。
『これから詳細を教えてあげますよ~。私は優しいですからね~。ただ、私って自分で言うのもなんですが、ちょっと意地悪なんですよ~。というか、私の言うことに賛成しない人には、日ノ本に変わっておしおきよ!って感じですかね~。』
(………)
『というわけで、さっき手を上げなかった人たちはここまで~。計画の内容は教えてあげませんから~。誰かに聞いても、理解できないようにしとくからね~。私の言うことに賛成しなかったからしょうがないよね~。これからつらいだろうけど、がんばってね~。』
(………賛成とか反対とか、そういう話じゃなかったような?)
『あ、でも自分で言うのもなんだけど、私って優しいんですよ~。というわっけで、手を上げなかった人たちにも計画を知る方法を教えてあげるよ~。一言で言うと、私の選んだ存在のうちの誰か、もしくは上位100人のうち誰かを倒せ!っていうことだよ~。まぁ、意味わからないだろうけど、そんな感じです~。』
(………倒すってなに?選んだ存在?上位100人ってなに?)
『じゃあ、手を上げなかった人たちの未来を祈ってぇ~。手を上げなかった人たちは、ばいば~い。』
ぶっつん!!!
☆
とある存在が始めた計画[またみんなで輝こう]の内容を知ることができなかったものたちの数
1528人
彼らもしくは彼女らは大変不利な状態で、これからを生きることになっってっしまったことを誰もまだ知らない。