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魔道具研究所  作者: いしまる
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01話 魔法石

 「おう!今戻ったぞ。」

”分析課”と書かれたドアと開いて中に入る。

中には何かを熱心に読みふける白衣を着た小柄の女性がいた。いや、”女性”というより見た目は”女の子”の方が相応しいように見える。

彼女の名前は”千晶”これでも18歳というのだから、女性は見た目じゃわからない…そういや、所長も同じようなものか。和也はそう思いながら部屋の中にいる女性に声をかけた。


 「うわっーー!」

 その千晶は大げさにびっくりして椅子に座ったまま後ろに倒れそうになっている。

結果、持っていた本を机の上に放り出し、両手をバタバタさせてバランスをとっているが、どう頑張っても後ろへ倒れる未来しか見えない。

やれやれと、左手で頭の後ろをかきながら右手で椅子を抑えてやる。

 こちらを向いたその顔はぷっくり膨れており、ちょっとかわいい。

「も~、なんでいつもノックしないのかな!」

「別にいいだろ?いつものことだし。それとも、見られちゃいけない様なものでもあるのかな~」

机の上に放り出された本をニヤニヤと見ながら聞き返す。

うん、まぁあれだ。細マッチョなイケメンらしき男二人が上半身裸で書かれている漫画だな。

「えっ、ちょ!まって!見るな!!」

慌てて机の本の上にかぶさり千晶は顔を伏せる。おーお、耳がまっかっかだなぁ。

「お前が腐ってんのは知ってるから今更だろ。ほら、仕事仕事。」

千晶はほほを膨らませながら、上目遣いでこちらを睨む。


 「ほら、今回の戦利品だ。」

サックの中から直径1cmほどの半透明の宝石の様なものを取り出し、千晶に渡した。

「はぁ、和也だけに仕方ないかな。ちょっと見せて。」

千晶は本を机の引き出しにしまうと、宝石を受け取り透かして見る。宝石の中には幾何学模様が描かれていた。

「へ~。発火の魔法石だね。」

「見て分かるのは流石だな。俺にはさっぱりだわ。」

「ふふん。もっと褒めたまえ。」

千晶は胸を張ってドヤ顔をする。体の小ささの割に立派な胸が大いに主張するように上下に揺れ、視線が吸い付けられる。ここだけは歳相応なんだよねぇ…うむ、今日もロマンがいっぱい詰まってて非常によろしい。

「……あんた、ほんと遠慮ないね。」

千晶が遠慮の無い視線に気づいて呆れ気味に言う。

「まぁ本能に近いし今更だしな。いつもゴチになっております。…触っていい?」

「おし、ばっちこ~い!」

「ですよね~……ってマジでか!……本当にいいの?じゃお言葉に甘えて…」

こう、下から支えるように…こいつ何の反応もしねーな。

非常に良い弾力で触り心地は抜群なんだが……なんか違うんだよなぁ。

「なに、もういいの?和也がいつも言っているロマンが詰まってた?」

「確かにロマンにあふれてて非常に良かったんだが、なんというか、なにかが違うんだよなぁ。」

「そうか。なんか難しいんだな。」

「さっきみたいに、恥じらいがというかなんというか……そういった反応が欲しい。」

「いまさらあんたに触られても恥ずかしくないかな。減るもんでもないし。昔はよく一緒に風呂にも入ったし?」

「いや、昔と今じゃいろいろ違うだろ……」


 「で、この魔法石はどんな風に使うんだ?」

「これはね~、これ単体では使えない事はないんだが、大体はこれを使うんだよ。」

千晶は、机の上に置いてあった小さな箱に手を伸ばす。

 箱は5x3x2cm程のの直方体で、一番面の小さい底に小さい穴が空いていて一番広い面の片方にに丸い模様が描かれている。

千晶は箱の穴に発火の魔法石を嵌め、丸い模様に親指を重ねた。そしてグイっと親指を押し込むように力を入れると、穴に嵌めた魔法石の先1cm程のところに直径5cm程の光の魔法陣が浮かび、その中心に蝋燭ほどの火が灯る。

「お~何度みてもすごいな。理屈がさっぱりわからん。」

「私にも納得できる説明はね…決まった手順で特定の刺激を与えると魔法石が何かしてくれるとしか言えないかな。」

 千晶が丸い模様から親指を外すと魔法陣と火が消える。

「魔法陣の内容の意味とか今でも不明だし。魔法石の中の模様で用途がわかるだけだね。」

「なるほど。で、今回の魔法石は火が付くだけなのか?」

「そうよ。これはこれで貴重だし使い道も色々だね。類似品としては火花が飛ぶだけってのもあるけどね。そっちはもっと小さいくて使い勝手がいいけど数も多いからなぁ…価値としてはこっちの方が貴重かな?」

「へ~、火より火花の方が使い勝手がいいんだ。なんか思ってたのと反対なのな。」

「焚火とかにはこっちの火が付く方が便利だけど、機械とかに組込むときは火花の方が便利ね。魔法石も小さくて済むし。」

ほうほうと、和也は顎を撫でながら何かを考えている。

「つまりあれか、銃とかに使われているとか?」

「おっ、和也にしてはスルドイ!爆発の起点として使われることが多いね。爆発自体を魔法石で行うと規模の調整ができなくなるからねぇ…数も少なくて貴重だし。」

「なるほどね~」


 「ちなみに魔法石には2種類あって、これは特化型魔法石で決まった現象しか起こせないけど、こっちの汎用魔法石は色々なことができるかな。」

千晶は引き出しの中を漁りながらそう言うと、直径3cmほどの魔法石を取り出す。

「ほ~どんなことができるんだ?」

「ほぼ何でもできるかな。火も起こせるし風も起こせる。水も出せるし温度も変えられる。」

「……それってもしかして凄くね?」

「ええ、すごいわよ。数もほとんどないし。ただ、これはランクが低いから起こせる現象も規模も小さいけどね。」

「マジか。どうやって使うんだ、それ。俺にも使える?」

「使い方は簡単だけど……結構疲れるよ?」

「OK、OK。体力には自信があるから大丈夫。貸して貸して!」

「そういう疲れじゃないんだけどね……はい、これを手にもって。」

千晶は立ち上がり、和也の手に魔法石を渡した。

「起こしたい現象を声に出して言うか、心のなかで強く念じてみて。」

 よし!と和也は魔法石を握りこんで目を見開く。すると千晶のスカートがフワリと捲り上がる。

「魔法石をこんなバカな事に使うなんて、初めて聞いたわ。」

千晶は疲れたように溜息をついた。


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