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シオンの協定書

作者: シュウ@広島

 十二才になるアーサーは学校の自分の机で憂鬱になっていた。

 今日から新学期だ。

 また、いじめっ子のジャック達にいじめられる。

 そう思うと憂鬱になった。

 担任の先生が教室に入ってきた。

 一人の少年を連れている。


「はい!みんな!席について!転校生を紹介します。」


 担任の先生が黒板に名前を書いた。


「転校生のシオンだ。みんな仲良くするように!」


 シオンは小柄で頭髪は金髪、瞳は青かった。瞳が大きく美少年だった。同じクラスの女生徒達は色めきたった。


「シオンです。よろしくお願いします。」


 そう言うとシオンは担任の先生に案内され、席についた。

 アーサーはジャック達にいじめられるだろうなぁと思った。


 午前中の授業が終わり、昼休みになった。

 案の定、ジャック達がシオンを取り囲んだ。


「おい!シオン!お前は俺達の子分になるか?それともアーサーみたいになりたいか?」


 シオンは冷静に質問した。


「アーサーっていうのは誰だい?」

「あの席に座ってる腰抜け野郎さ!お前はどうする?」


 するとシオンは冷静に答えた。


「アーサーって子分にならなかったのかい?」

「あぁ!だから毎日、いじめてやってるのさ!お前はどうする?」


 するとシオンが冷静に答えた。


「アーサー。君は誇り高いんだね。こんな豚どもの子分にならないなんて!」


 シオンは冷静に低い声ではっきりと答えた。


「なんだと!この野郎!いい気になるなよ!」


 ジャック達はシオンの体をよってたかって殴ったり蹴ったりした。

 顔を殴らないのは、すぐに先生にバレるからだ。


「どうだ!この野郎!いい気になるなよ!どうだ!俺の子分になるか!」


 シオンは青い瞳でジャック達を睨み付け言った。


「もう一度、言ってやる!この豚野郎!」


 ジャックは顔を真っ赤にして怒った。


「よくも言ったな!」


 ジャックがシオンの顔を殴ろうとした時だった。

 アーサーが止めに入った。


「やめてよ!もういいでしょ!もう、許してあげてよ!」

「うるさい!どけ!」


 アーサーはジャックに弾き飛ばされた。

 ジャックがシオンの顔を殴ろうとした時だった。

 担任の先生が教室に入ってきた。


「こら!ジャック!何をしているんだ!こっちに来なさい!」


 ジャック達は担任の先生に連れていかれた。


「大丈夫かい?シオン?」

「君がアーサーかい?君は毎日、こんな目にあってるのかい?」

「ジャックの父親はこの町の資産家なんだ。だから、多額の寄付を学校にしてるから先生達もあまり強く言えないんだ。」


 そう言うとアーサーは汚れたシオンの服をはたいてあげた。


「これで綺麗になったね。シオン。気をつけてね。」

「アーサー。君はただただ毎日、堪えてるだけかい?」

「シオン!神様はきっと見ているよ!いつかジャック達もわかってくれるよ!」


 するとシオンは冷たい目でアーサーを見つめて言った。


「ふん!くだらないな!じゃあ、君の信じる神様は君がいじめられてる時に、目の前に現れて助けてくれた事があるのかい?」

「なんて事を言うんだい!シオン!神様はきっと見ているよ!」

「役に立たない神など要らないよ!アーサー!」


 シオンは教室から出て行った。

 分厚い鍵のかかった本を持って。

 アーサーはただ見送るしかなかった。


 放課後になり、ジャック達がシオンを連れて何処かに向かった。

 アーサーはきっと裏庭に連れていかれたと思った。

 アーサーはこっそりと付いていった。

 裏庭に着くと、ジャック達が言った。


「やい!シオン!お前のせいで怒られたじゃないか!仕返しをしてやる!覚悟しろ!」


 するとシオンは自分の鞄から、分厚い鍵のかかった本を取りだし、左手で本を水平に持つと、右手をその上に乗せた。


「いつでもこいよ!豚野郎!」

「なんだと!ふざけるな!ヤられるのはお前だ!」


 するとシオンが聞いた事のない言葉を唱え始めた。


「リール・ベール・アール・ベール・レギス。」


 シオンはジャック達を睨みながら、呪文を唱え続けた。


「リール・ベール・アール・ベール・レギス。リール・ベール・アール・ベール・レギス。リール・ベール・アール・ベール・レギス!」

「この野郎!そんな脅しに騙されるか!」


 その時だ!

 カラスがジャック達の周りを飛び回り始めた。

 シオンの呪文の詠唱はさらに早くなっていった。


「リール・ベール・アール・ベール・レギス。リール・ベール・アール・ベール・レギス。リール・ベール・アール・ベール・レギス。リール・ベール・アール・ベール・レギス!」


 するとカラス達がジャック達を襲い始めた。


「痛い!痛い!痛い!痛い!助けてー!痛いよー!助けてー!」


 カラス達はまるでシオンを守るかのようにジャック達を攻撃していく。

 アーサーはそれを見て、思わず飛び出した。


「やめてよ!やめて!シオン!やめて!やめてよ!」

「邪魔だ、アーサー!豚は餌になるといい!リール・ベール・アール・ベール・レギス!リール・ベール・アール・ベール・レギス!リール・ベール・アール・ベール・レギス!」

「助けてー!誰かー!助けてー!痛いよー!痛い!誰かー!」


 アーサーは咄嗟にシオンの両肩を掴むと言った。


「シオン!やめて!お願いだから!シオンならやめさせられるんでしょ?やめさせて!」

「何を言っているんだ?君だってずっとヤられてたんだろう?いい気味だ!死ねばいい!リール・ベール・アール・ベール・レギス!リール・ベール・アール・ベール・レギス!」


 アーサーは咄嗟にシオンの右手を本から外した。

 しかし、カラスがジャック達を襲い続ける事に変わりはなかった。


「シオン!お願いだから!お願いだからやめて!もうやめて!お願いだから!シオン!」

「アーサー!君は底抜けのお人好しだな。豚は死ねばいいだろう?君だって、もう、いじめられる事がなくなるんだぞ?」

「お願いだからやめて!シオン!お願いだから!」


 シオンはため息をつくと、呪文を一言唱えた。


「トグラス!」


 そう言うとカラス達はまるで何事もなかったかのように飛び去り始めた。


 ジャック達は泣きながらこう言った。


「悪魔だー!シオンは悪魔だー!」


 ジャック達は去って行った。


「呆れたよ。アーサー。君はどこまでお人好しなんだ?なぜやめさせた?」

「シオン!こんな事は良くない事だよ。わからない?人を傷つけたりしたら駄目なんだよ?」


 アーサーは泣きながら、シオンに訴えた。


「ふん!君の信じる神の教えとやらかい?くだらないね!そんな物が何の役に立つんだ?誰も君を守ってくれなかっただろう?豚は大人しく豚小屋にいればいいんだよ!」

「シオン!クラスメイトを豚呼ばわりは良くないよ。わからない?もう誰も君を傷つけたりしないから、もう二度とこんな事はしないでね!お願いだから!」


 アーサーは泣きながら言った。

 シオンはため息をつくと、帰って行った。




 翌日、シオンは学校を休んだ。

 ジャック達は得意気な顔をしていた。

 きっと父親に頼んで、何か圧力をかけたんだろうとアーサーは思った。

 アーサーは学校が終わると、担任の先生にシオンの家の住所を教えてもらった。

 そして、学校が終わると急いでシオンの家に向かった。

 シオンの家は町外れの、大きなお屋敷だった。

 アーサーは躊躇いながら、チャイムを押した。

 するとドアが開き、初老の老人が出て来た。


「何かご用ですか?」

「初めまして。僕はアーサーと言います。シオン君はいますか?」

「あー!あなたがアーサー様ですか!ぼっちゃまより話は聞いております。どうぞ、中へ!」

「ありがとうございます。あなたは?」

「私は当家の執事をしておりますフィリップです。どうぞ中へ。」


 アーサーは少し薄暗い廊下を執事のフィリップと歩きながら、部屋に通された。


「こちらでお待ち下さい。すぐにぼっちゃまをお呼びいたしますので。」

「あっはい。ありがとうございます。」


 執事は紅茶を置いていくと、部屋を出た。

 しばらく待った。

 しかし、シオンは来ない。

 アーサーは不安になりながら、庭に出た。

 庭は植物が覆い茂っており、歩くのも大変だった。

 しばらく歩くと、大きな木の根元に着いた。

 そこでアーサーは見た!

 木の根元に大きな丸い物体があるのを!


「そこで何をしているんだ!」


 アーサーが振り向くとシオンが怒った顔で立っていた。


「ごっ…ごめんね。シオン!僕は何も見てないよ!何も見てないから!助けて!お願いだから!」

「そうか…。それを見てしまったのか…。」

「ごめんね!シオン!お願いだから!助けて!僕は何も見てないよ!何も見てないよ!」

「見た以上は仕方ない。説明してやるよ。」


 シオンはアーサーにゆっくりと近づいた。

 アーサーは怯えて、地面に膝をついた。


「アーサー!この中に居るのはね?神だよ!神なんだ!わっはっは!そうさ!これが本当の神の姿さ!」


 シオンが木の根元にある大きな丸い物体に触れた。

 すると、その物体は息をするかのように色が変わり始めた。

 青から緑へ、そしてピンクから赤に色が変わっていった。


「そっ…そんな馬鹿な…。シオン。君はどうかしてるよ!そんな化け物が神だなんて!」

「化け物?何を言っているんだ?こんなに美しい姿を君は見たことがあるのかい?この美しい触手、美しいたくさんの目。美しい肌の色と鱗!そうさ!これが神だよ!神なんだ!産まれる前のね!君はついてるよ!産まれる前の神が見られたんだからね!」

「やめて!やめてよ!シオン!君はどうかしてるよ!それは神なんかじゃない!悪魔だ!悪魔だよ!シオン!お願いだから嘘だと言ってくれ!」


 シオンはやれやれと呆れた顔で立っていた。


「いいかい?アーサー!何故、この世の中から醜い負の感情や出来事がなくならないと思う?それは人間が神に支配されているからさ!ここに眠る古代の神はずっと精神的に人間を支配してきた。まぁ…たまに反逆者が出るが、直ぐに処刑されてるだろう?何故ならここに眠る古代の神を信じる者達が邪魔者を処刑しているからだ。君に以前、聞いたよね?君がいじめられてる時に君の信じる神様は助けてくれたかと?答えはノーだろう?そうさ!間違った神を拝んでも救いは来ないんだよ!アーサー!間違った神を棄てろ!本当の神を拝め!そうすれば救われるんだ!何の役にも立たない宗教なんて棄ててしまえ!本当の神を拝め!拝むんだ!アーサー!」

「出来ないよ!シオン!どう見たってそれは化け物だ!神なんかじゃない!シオン!お願いだから嘘だと言ってくれ!お願いだから目を覚ましてくれ!」


 シオンは黙ってアーサーを睨み付けた。


「そうかい…。この美しさがわからないなんて!アーサー!君はついてるよ!産まれる前の古代神の生け贄になるといい!フィリップ!」

「はい!ぼっちゃま!」


 そう言うとフィリップはアーサーを掴んだ。


「やめて!やめてよ!シオン!お願いだから!やめてよ!シオン!お願いだから!シオーン!」


 アーサーは玉の中に放り込まれた。

 中では叫び声と、バリバリという音が聞こえた。


「最期まて馬鹿だな!お人好しのアーサー!君の信じる神様は助けに来ないよ!さようなら!」


 シオンはその場を去った。






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