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高速道路での戦い

 話し合いの翌日。

 僕達は高速道路の料金所の陰に隠れながら、銃を構えていた。

 ゲーム内でも屈指の糞マップとして知られる高速道路での防衛戦が始まったからだ。

 敵が隠れる場所はなく、味方が隠れる場所も料金所だけ。駐車している車でもあればいいけど、そんなものもないこのマップはプレイの選択の幅が少なく、プレイヤーに嫌われていた。僕も照準を構えて待つだけのこのマップは本当に嫌いだった。


 しかし今はありがたい。ゲームのときには歯応えを求めたけど、今は歯応えなんていらない。ぬるゲー万歳だ。


「来ませんねぇ」


 茉莉ちゃんがぼやく。ここにきてもう三十分以上も料金所の機械の陰、同じ場所で敵が見えるのを待っている。ゲームのときもそうだったけど、待つだけというのは本当に疲れる。

 ゲームでも敵がここまで来るまでに、どれくらい時間が必要かわからなかった。ゲームのときには面倒だから待つんじゃなく自分から行ってやれ、ということができたけど今はリスクはできるだけ避けたい。


「しかたがない。迎撃する場所がここにしかないからな」


 そんなヴィルヘルムの声にも多少の気疲れがみえる。


「俺達の方から……と、来たな」


 御堂が話し始めたところで、ミニマップに赤いマーカーが表示された。茉莉ちゃんが敵を視認したらしい。

 茉莉ちゃんが遠距離戦仕様のライフルを構えて撃ち始める。僕もそれに続くべく、銃を構えてミニマップの情報を頼りに撃つ。

 レーザー銃にはそれぞれ射程距離というものがあって、その距離が過ぎるとレーザーが消滅してしまう。

 遠距離戦仕様レーザーライフルは火力が高くレーザーの射程距離が長いが、スコープがついているわけでもないので僕には敵がはっきりと見えないのだ。


 茉莉ちゃんからの情報を頼りに撃っていると、ミニマップの赤いマーカーが消えた。そして続くように多数の赤いマーカーが表示されはじめる。

 僕の目にもオークとゴブリンの集団が、こちらに向かって走ってきているのが見えた。

 

 1、2、3、……8体のオークが見える。それぞれ武器を抱えながらこちらへと突っ込んでくる。

 後ろにはオークを盾にするようにして、その倍ほどの数のゴブリンの姿も視認することができた。


 エイリアンは何を考えてこんな不利な道を来るのか、敵の考えはさっぱりわからないが、とにかく目に見える敵を撃つ。

 茉莉ちゃん以外もそれぞれレーザーライフルで敵を撃っていく。


 こちらに走ってくるオークやゴブリンは僕達の銃撃に怯むことなく、真っすぐにこちらへと向かってくる。

 背後で爆発でもあれば、まるで映画のワンシーンのようだ。

 シューティングゲームの効果音のようなレーザーの発射音が響き、目の前の敵が灰になっていく。

 ある程度、距離が近づいてきたところで敵のオークとゴブリンも、こちらに向けてレーザーを撃ってきた。

 しかし、遮蔽物に隠れられるこちらの方が圧倒的に有利だ。

 誰も被弾することなく、敵の数を減らしていく。


 残り二十メートルほどまで敵が近づいてきた。

 オークは2体、後ろにはゴブリンも4体が残っている。

 敵は手に持っていた銃をその場に捨てると、背負っていたらしい斧に持ち替えてこちらへと向かってきた。

 ゴブリンの手には片手で持てそうな小さな斧。オークの手には両手持ちの大きな斧が握られている。どれも刃の部分には紫色のレーザーが光っている。


 ゴブリンの持つ近接武器は当たっても即死することはないが、オークの持つ近接武器は初期のパワーアーマーなら即死もあり得る強力な武器だ。

 肉薄されると被害が出る可能性がある。


「オークを集中的に狙って下さい!」


 みんなに指示をだして、僕もオークを狙ってレーザー銃を撃つ。 


 オークが一体、二体、灰になる。しかしゴブリンはもう目と鼻の先だ。


「いきます!」


 もう少しでこちらに肉薄しそうだ。みんなに後ろに下がりながら撃とうと伝える前に、皆本さんのマーカーが敵に向かって駆け出していくのが見えた。

 そして、それに続くように津組さんまで、レーザーブレードを手に敵に向かっていく。


 あーー……そういえば昨日、今持ってる武器の情報について共有するの忘れてたね。うん。  


「お、おい!」

 

 ヴィルヘルムが止める間もなく、敵のゴブリンに向かって駆け出した津組さんは二体並んでいたゴブリンのうちの一体を袈裟斬りにして灰にする。

 しかしもう一体、ゴブリンは残っている。射線の関係でレーザーライフルを撃つと当たる位置に津組さんがいるため、僕は撃つことが出来ない。

 残ったもう一体のゴブリンが横合いから津組さんに向けて斧を振りかぶり、津組さんの肩に当たった。パワーアーマーのシールドが弾ける音が聞こえて、体が斜め後ろに吹き飛ばされる。


「うっ……」


 その後を追ってゴブリンが津組さんへともう一度、斧を振り下ろそうとしたところで、射線があいたのを見た僕が撃ったレーザーライフルがゴブリンの体に当たりゴブリンは灰になった。


 なんとか間に合った……と、ほっと一息。料金所の壁で直接は見えないが、皆本さんの方も敵のマーカーが消えていることから何とかなったようだ。


 下がりながら撃てば、ゴブリンは体が小さくて足は早くないから安全に対処できたのに、まさか津組さんまで突っ込んでいくとは思わなかった。

 これは反省会で反省してもらわないといけないなぁ……。

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