4-2 遂に始まる勉強生活は、魔術から
~あらすじ~
ルカに魔術というものを教えて、午前は終了
昼食にしようという所でシルヴァは自分の部屋の前で、見知らぬ銀髪の美女と鉢合わせになる
「...」
女性は俺の目を、何か思い詰めたような顔で見ている
「...」
今まで受けたことのない視線に、一瞬躊躇する
一瞬の沈黙ののち先に口を開いたのは、女性のほうだった
「ありがとうございます」
お礼の言葉と共に礼儀作法のなった、キレイな礼で頭を下げてきたのだ
「...俺が何かしましたか?」
迷ったような口調で聞くと、女性も迷った顔で返答に困っていた
埒が空かないので自分で考えてみる
この家に住む者の中で銀髪と言ったら...
思いのほか答えは簡単だったようだ
「貴方はルカのお母様ですか?ルカに用があるなら既に食堂へ行きましたよ、それとも、俺に何か用ですか?」
「はい...シルヴァ様、今回は家庭教師を引き受けてくれてありがとうございます」
再度頭を下げる
「いえ、こちらも仕事が欲しかったので、貴族の申し出なんて滅多に無いですので」
「そう言うことじゃないんです...シルヴァ様が家庭教師になってくれたことにお礼を言いたいんです」
「?」
「...私が北の地平線の生まれという事は知ってますね?そのせいでルカの髪は白いんです」
白い色合いの髪と言えば北の下民の象徴だ
「私の存在は貴族の間では嫌われています、ですが、ルカまでそのせいで嫌われるのは耐えられません。ルカのような年頃の子供なら、学校に等に連れていく家庭は多いです。でも髪の色で、嫌悪され、煙たがられ、虐められると分かっているのに連れていけません、なので家庭教師を雇う事にしました」
「...」
俺は無言のまま、目で話の続きを促す
「ですが、王都で働く教師を雇うにしても、差別等の思いもあり、誰も受けてくれ無いことは予想が付くでしょう」
「それで私を雇ったと?ですが、教師でなくとも教えられる方々はたくさんいるでしょう?噂ですが、ベルモンド様は昔王族直属の騎士団長であるとお聞きしました」
昨日執事から聞いた話だが、詳しくは後でまた聞くつもりだった
「そうですね、確かに教師以外にも教えられる相応しい方はいます。ですが、それよりももっと相応しい方を雇うのは普通でしょう?夫はともかく、やはり下民に抵抗の無い方が好ましかったですから。それに、【力皇】様の推薦とあらば、なおさら」
力皇の言葉に、俺は目を見開いた
「...まさかその名前が出るとは、驚きました」
「夫がよくしてもらってるのです、昔の友人として、私も初めて会ったときは驚きました。力皇様...アルデバラン様はシルヴァ様の事を様々語っていましたが...」
そこで俺は手で話を遮る
「その話はあとでにしましょう、長話が過ぎましたね、食堂に行きましょう。せっかくの料理が冷めてしまいます」
「そうですね...午後の予定は?」
少し考える
「午後はルカの実技訓練、お母様も一緒に見られてはどうでしょうか?」
提案すると、ルカの母も少し思考する
「...分かりました、そうしましょう」
「では、昼食の後に庭でお待ちください」
ルカの母は頷く、同意が取れた所で一緒に食堂へ行くことにした
ちなみに、行く途中で聞いたのだが、ルカの母の名前は【マリア】だった
雇い主の名前を知らないのは失礼だからな
名前を聞く時点で十分失礼だが
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午後
ルカの魔術技術の訓練に入る
今日はルカの魔術の才能を見るとこから始める
「でも先生、才能というのは何を見て判断するんですか?」
「言ってなかったな、単純に魔力総量と得意属性を見る」
まだルカの顔は疑問が残っているような顔だ
「お前が疑問に思ってるところは、その方法だろう?今から説明する、その前に【魔力】の説明だな」
【魔力】
通称【マナ】
空気中に存在する物質
人に限らず、【魔力適正】のある生物はそれを利用して魔術を使う
通常マナは空気中に存在している物が多いが、魔力適正のある生物はマナを自家生成できる
体内器官【魔臓】を心臓の内部に備えている
ただ、マナ自体存在しているだけ見えないのと同じなのか、その器官も存在しているだけで目には見えないし、触れも出来ないらしい
最初に発見したのは、魔力を直に見れる虚無魔法(的を省くと言いやすくなるので省く)、【魔力眼】を持つ科学者もとい世界を変えた世紀の発明家
「名前は、【ニコラ·バルテスラ】、そうですよね、先生?」
ドヤァという言葉が似合いそうな顔をするルカ
「そうだ、よく知ってるな、ニコラは数百年前に魔力器官の存在を証明、後にありとあららゆる道具や技術を生み出してきた、いわば技術の親だな、そして、今の技の世界を統治しているのも、ニコラ、別名【技皇ニコラテスラ】その本人だ」
そこでルカは疑いの目を向ける
「...数百年前に生まれた偉人が、今も生きてるんですか?」
「数百年の間技皇の座に居座り続けているのはニコラテスラだ。ニコラテスラが開発した災害級再生魔術と時間魔術の賜物だな」
「何も言えませんね...雲の上のような存在です」
「そうだな、まだルカには程遠いな」
苦笑混じりに同情する
「本題に戻るぞ、今回はルカの魔力総量と得意属性を見ると言ったな」
「具体的にはどうやって?でしたよね」
俺は頷く
「魔力眼があれば簡単だが、生まれつきの物だからなあれは。今回はそれを模した道具を使う」
俺はポケットから眼鏡を取り出して、掛ける
ルカはおもむろに首を傾げる
「これは、この眼鏡を通して見たものの魔力総量を色で表すという【魔道具】だ、技の世界で貰ったものだ、ルカ、目を瞑って手の中に魔力をイメージしろ」
「...魔力のイメージがわからないんですが...」
「単純に手に力を入れてみろ、そうすれば手から魔力が溢れる。そうすると自然に体からも魔力が溢れる」
そう聞くとルカは目を瞑り力を入れる
ルカの周りが色づき始める、魔力が放出されている証拠だ
さて、ルカの才能はどんなものか...
一瞬、目を疑う
刹那、目を見開く
「...常人の倍、だと?」
魔道具で見た色には段階がある、それを数値で表すと
白:1~3 3等魔術師級
赤:4~6 2等魔術師級
青:7~9 1等魔術師級
紫:10以上 超級魔術師級
黒:測定不能領域 災害級魔術師
といった具合で現れる
ルカの年頃(約5歳)の子供ならほとんどが白色、親の能力によっては赤色を示すはず
だが、ルカの色は、青色、だった
しかも手の辺りの魔力濃度が高い部分は僅かに青紫色を示している
この結果が指す結果、およそルカの魔力総量は【9】、ヘタすれば超級魔術師級の魔力量なのだ
「(だが何故...!こんなもの魔力を鍛えている魔術師でしかあり得ない数値だ、どれだけ良くても精々赤色を示すのが関の山)」
これには絶句せざるを得ない
母親から聞いた話では教師は俺が初めて、ルカに教育を施したような様子もない
理論的に説明がつかないのだ
「先生...?魔力総量はどれくらいあったんですか?」
少しワクワクしたような口調でルカは聞いてきた
真実を言うべきか迷った、だがすぐ切り捨てた
真実を言わない理由が私情以外で何も無かったからだ
「...お前の魔力総量はかなり多い、俺にも近いほどの魔力量を秘めている。所謂...天才だ」
天才と言う言葉を使うかは迷ったが、それも切り捨てていた
ルカは喜ぶことなく淡々とした口調で言った
「天才ですか...ちょっと嬉しいです、先生からそういってもらえるなんて」
「...もっと喜んでいいんだぞ、魔力総量が高いと言うことは素晴らしい天性だ、誰でも持てるような物じゃない、魔力総量というものはこれからいくらでも増やせるが、始まりが高ければ高いほど、さらなる高みに近づく時間も短く済むと言うものだ」
だがそんな言葉もルカは苦笑混じりで受け流す
「何か最初から優れているなんてもの、僕は気に入らないんです、面白みがないというか...」
本当に子供か、と思うほどな大人顔負けの思想だ
この年頃の子なら跳び跳ねて喜んでもいい気がするが
「そうか、だが事実は事実だ、それはお前の持ち味だ、それをうまく利用するのはお前の努力しだいだ、何から何まで優れている訳じゃない、そこは理解しておけ」
ルカは頷く
「分かっています」
「気を取り直そう、次は得意属性の確認だが...」
ふと、物音がした、庭と家を繋ぐ扉から、ルカの母親がメイド長と共に出てきたのだ
いい頃合いだ、母親にも子供の飛び抜けた才能を示せば喜ぶだろう
だが、ルカの才能は飛び抜けたでは収まり切らなかったのであった
【魔力適正】
魔力適正のある生物は身近な所で
各世界に住む、人類
魔力高密度地帯、虚無地帯に生息する、森精【エルフ】
同じく、妖精【フェアリー】
同じく、精霊【エレメント】
他には、山脈に住む龍をはじめとする、魔力生命体等がいる
魔力適正のある生物は一般的に
「魔力錬成が出来、魔術を扱える生きとしける者」
というのが技皇ニコラテスラによって定義されている
他にも様々な仮説が出ているが、これが一番理屈に合った説明だ