2 告げられし晴れ舞台は、家庭教師
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王都【ユグドラ】
4つの城壁に囲まれた、この世界の中心地。
そこが俺に晴れ舞台となる場所だ。
この4つの城壁は、
中央にそびえ立つ王城と王族が住まう宮殿を囲む、城壁(通称:神門)
貴族を住まう都【ポータブル】を囲む、第1壁(通称:上門)
王都が食料事情に苛まれるなか、巨大な牧草地帯や田畑や森
(あいにく内陸のため漁業は発展していないが)
を日々管理して、農業や家畜を営む村や町が広がり、日々他の世界
(ここでは地平線外に存在する国々を訳あって別の世界と捉えている)
からの交易を行っている商業地帯【セントレア】、それを囲む第2壁(通称:中門)
その他の人類が扱える鉱石等を採取する鉱山や洞窟、魔力が充満している【ダンジョン】が数多くある
昔の大戦の後に人類が作った最大の魔法性障壁、第3門(通称:下門)
で、成り立っている
俺が呼ばれた貴族がいるのはもちろん、ポータブルだ。
「長旅ご苦労様です、代金はどのようにいたしましょ」
「あぁ、ハイリッヒ家に請求しといてくれ、そう聞いている」
「分かりました。それでは、運命神の加護あらんことを...」
カラカラと音を立て馬車はその場を後にする
別れ際の挨拶は、最近流行りのおまじないだそうだ
まぁ俺はそんな加護なんて腐るほど持ってるがな!
「...悪態ついてる場合じゃないな、行かなければ...いや目の前だったな」
あまりの家の大きさに目が慣れなかったようだ
それにしてもデカイ...貴族って全員こんななの?
ハイリッヒ家は確か有力な貴族だっけ...まぁいいや
「夜分遅くすいません、ハイリッヒ家当主、ヘルモンド·ハイリッヒ様に呼ばれてきたものです!開けてくださーい!」
貴族の作法なんて知ったこっちゃない、だって下民の出だからな
「...あ、あぁ、お客人様、お待ちしておりました、どうぞ御上がりください。奥でベルモンド様がお待ちにございます」
案の定手荒な訪問で執事らしき老人は困惑顔だ。
「ありがとうございます」
慣れない作法は逆に失礼だ、堂々と入らせてもらおう
「あ、申し訳ございませんが、靴を脱いでこちらの靴に履き替えて貰えますか...?」
「...何?靴は履き替えるものだったのか?」
確かに泥だらけだ...
やっぱり少しは礼儀と言うものを学ぼう...
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「失礼します、東の地平線より参りました、シルヴァ·ヴァーミリガンと申します。」
「!やっと来てくれたか!なかなか到着が遅くて待ちくたびれたぞ!さぁ!どうぞ腰をお掛けになってくださいシルヴァ殿」
なかなかの歓迎ムードだ
「失礼します」
ちゃんと一礼してから...っと
「ふむ、やはりシルヴァ殿は違いますな!並みの下民よりも礼儀が成っている!」
「お褒めいただき光栄に存じます、して、さっそく本題に入りましょう、急を要する物なのでしょう?」
「あぁ!そうだとも、物わかりが良くてとても助かる!」
結構寛容だなぁ、この方は
やっぱり礼儀について執事に聞いておいて正解だったな
「さて、単刀直入に聞くが、シルヴァ殿はあのシルヴァ殿で間違いないでしょうか?」
「あの...?」
「この世界に置いての地平線を超え、数々の世界を違えた龍山脈を超え、別の世界に赴き、力と技術と知力を兼ね備え、災害級魔獣 雷獣【ケフェウス】をその手で葬った、私達の住む【力の世界】で最強の名を連ねた屈強な戦士、その名はシルヴァ·ヴァーミリガン!」
いささか誇張というか大げさというか...確かにその手の魔獣を相手に取った記憶はあるが
「確かに私はここ力の世界と別の世界を遮っている、龍神が作りし龍山脈を超えて、数々の世界で修行をこなし、その手の魔獣とは戦いました」
「やはり!噂は本物であったか!」
「だけど葬ったと言うのは言い過ぎというか...撃退はしましたけど、今でも元気に生きてると思いますよ」
「撃退するだけでも素晴らしい!私の目は間違っていなかった!」
間違っていたほうが嬉しいんだけどなぁ...
「話がずれました、仕事の話に戻りましょう」
「あぁ!そうだな!だがその前に私の子供を呼ぼう」
子供...?それにしてもあぁあぁ煩いなこの人は
「入ってきなさい、【ルカ】」
その名に少し眉がひきつる
そしてベルモンドの奥にある扉から入ってきたのは...
北の地平線の下民を表す髪色、即ち白髪の子供だった
「...こんばんは」
「...こんばんは」
少し顔をひきつらせながら挨拶をする(両者共に)
「で、その子が仕事になんの関係が?」
「あぁ、実はな、シルヴァ殿に頼みたいのは...」
まさか勉強教えろとか魔法とか教えろとか言ってきそうなんだがさすがにそれは...
「この子の家庭教師を頼みたい」
この予想していた理不尽が運命神の仕業なら、滅びてしまえ
シルヴァが滞在する場所は山脈に囲まれる形で孤立しており、他の場所もその様な山脈に囲まれている所がある。
過去の大戦により作られたものであるが、詳細は後程
シルヴァ達や山脈に囲まれている者達は、自分たちの住む世界と他の住む世界で分けられているので、それぞれの発展してきた文化を元に【世界】と名乗っている。
シルヴァ達が住むのは【力の世界】
他にも、【技の世界】【魔の世界】【神の世界】がある
そしてそれ以外の場所を、生物達は揃って【虚無】と呼ぶ