①出会い
夏が終わり、残暑の残るある日、俺、明神和也は、バイト終わりの家への帰路についていた。
「あー、疲れた。」
なんか口に出したら、余計に疲れた気がする。時刻を見ると、夜23時を過ぎていた。
「あー、何かいいことねーかなー」
また、独り言を言ってしまった。
俺は空を見上げ、ため息をつく。星が雲に隠れているのか、ただ黒い空が広がっている。
星空も見えないのか。まったくとことんいいことねーな。
俺は、視線を歩いている方へと戻した。
思えば、今日一日、ろくにいいことがなかった気がする。
朝起きた瞬間に、部屋の窓ガラスが割れる+野球ボールが頭部にヒットして気絶したり、不良を相手にしてたらバイトに遅れたり、遅刻したから上がるのが2時間遅くなったり...etc。
今日は本当に災難だったな。
と、一日を反省しながら歩いていると、
---ボンッ!
ん?何か音がしなかったか?
俺は立ち止まり、周りを見わたしてみた。特に、何も起こったわけでもなさそうd--。
---ゴンッッ!!
「痛ぇ!!」
何かが頭部に勢いよく当たった。俺は思わず頭を押さえてうずくまる。
「なんだよ、もー」
頭に落ちたものは、近くに転がっていたので、俺は「それ」を拾う。
なんだこれ、棒?いや、ステッキかな?
俺は拾ったそれを確認し、上を見上げた。すると---
人が落ちてきている。
拾ったものが手から落ちる。
いやいや、何かの見間違えだろ。目をこすってもう一度見れば大じょ---
人が落ちてきている。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
思わず叫んじまった。それにさっきよりも近くなってるし!!やばい、どうしよう!?
俺がしどろもどろしている間にも、距離はどんどん近くなってきている。
とりあえず、なんとかしないと!!
俺は落ちてくる人をキャッチすることにして、その場で構えた。
構えている間もどんどん近くなってくる。
え!?待って!?これ落ちてくる速度、速いって!!俺、保たな--
とか思っている最中、俺は人をキャッチした。
グキィッ!!
---腰を犠牲にして。
「~~~~~~~~~~~~っ!!」
やばい!腰やった!すげぇ痛ぇ!
俺はその体勢で少し悶絶しつつ、声にならない悲鳴ってこういう時にあがるのかと初めて知った。
ふぅ、大分腰もよくなってきたみたいだな。
腰の痛みが徐々に引いてきた俺は、落ちてきた人を確認することにした。
パッと見、身長130~140くらいで小学校3~4年生くらいの少女で、オレンジ色のショートヘア―で来ている服は修道服みたいな服を着ていた。手には大きな三角帽子を握っていた。
少女は体に傷はなかったが、気を失っていた。、
「なんで空から落ちてきたのか」とか、「何この格好」とか、いろいろ疑問はあったが、とりあえずその疑問については考えるのをやめた。
それよりも---
この子どうしよっかな...。警察に届けるにしても、理由を説明したところで信じてもらえないしな...。ここに放置ってのは、人間としてダメだし...。
う~ん。とりあえずは目が覚めるまで、家で休ませよう。
という結論に至った俺は、まだ痛む腰を酷使し、少女を背負った。
「あ、あとこれも落ちてきたな。」
ステッキみたいな棒も改めて拾い直し、俺は家に帰るのを再開した。
はぁ、今日は本当に災難な一日だな...。
俺は、そう思うと同時にため息をこぼした。
この出会いから、生活が変わり始めるのを、この時の俺はまだ知らない---