第6.5話 ライオット視点
最近は畑仕事も上手く出来るようになってきたし
村の仕事にも連れて行ってもらえる様になった。
周辺を見回ってる時に魔物が出来てきたのは驚いたけれど
他の大人達と協力して、なんとか倒す事ができたのは嬉しかったな。
さてと今日も畑仕事をしないとな。
この村には個人の畑というものがない。
全て村の共有の畑になる。
だから毎日、色々とやる事があるし
あちこちの畑の仕事をしないといけないんだ。
今日は柵の近くの畑で作業をしていた。
ん?あんな所にレオ達が、何やってるんだろう?
あ、柵を潜り抜けた!
マズイ。周辺を見回りしてるって言っても時々は魔物が出るのに・・・
慌ててレオ達が潜り抜けた柵に駆け寄った。
「待ちなさい!」
レオ達は聞こえないのか、そのまま走っていってしまった。
自分も慌てて穴を潜るが、子供が通れるだけで
さすがに自分だと厳しい抜けるのに時間が掛かってしまった。
レオ達は何処行った?
キョロキョロ周りを見ると
あ、森に入った。
急いで後を追う。
レオ達を探して森に入る。
何処にいるんだ?
声を出して呼びかけたいが、魔物は大きな音で寄って来る事があるので
うかつに呼びかけることも出来ない。
こっちか?
低い枝を掻き分けながらレオ達を探していく。
お、声がするな。
少し急ごう。
「わーーーーー」
なんだ?突然、走り出したぞ。
しかも、こっちから離れていってる。
ヤバイ!さらに急いで追いかける。
「痛ーい。待ってー。うわーん」
こっちか!声のするほうに急ぐ。
やっとレオ達を発見した。
「危ない!」
魔物がレオに飛び掛ろうとしていたので、とっさにレオを押し出した。
「ぐあ。っつ、この放せ」
腕に噛みつかれた。
僕は必死に魔物を殴りつける。
とにかく殴りつけて。殴りまくった。
ゴスッと良いのが入ると、魔物は離れた。
とりあえずレオ達だけでも逃がさないと
「早く逃げなさい」
「で、でも道が・・・」
「そっちに真っ直ぐです」
自分が来た方向を指差すが、魔物から目を離したのが不味かった。
「危ない」
声が聞こえた時には目の前だった。
まるでスローのように魔物が迫ってくるが体は動かない。
レオ達だけでも助かるといいなと死を覚悟した。
ドン。
突然、魔物が吹っ飛んで木にぶつかった。
何が起こったか、わからないが助かったらしい。
吹っ飛んだ魔物は動かない。
だが油断は出来ない。
僕は枝を拾うと、動かない魔物に近づいた。
枝で魔物を叩いてみるが反応がない。
さらに強めに叩くが、やはり反応がない。
どうやら死んだようだ。
「ふぅ。とりあえず大丈夫みたいだね。
この魔物は、もう死んでるよ」
僕は安心して、そう言った。
レオ達も恐々していた顔から、少し笑顔になって
「さっきのは何?」
「そうだ。突然魔物が吹っ飛んで」
魔物が吹っ飛んだ件について聞いてきた。
確かに気になる。
吹っ飛んだ方向やレオの顔を見る限り、どうもレオがやったような感じだ。
「あれはたぶんレオの魔法だね。
僕もレオに魔法の才能があるなんて知らなかったよ。
それよりも、なんで森の中に入った!
村から出ちゃいけないって言われただろ!」
説明しながら村を出たことを注意した。
「「「「ごめんなさい」」」」
すぐにレオ達は謝ってきた。
そんな強く言ったつもりはないんだが、なんだか泣きそうな顔になってきた。
まずい。ここで泣かれると他の魔物が出てくるかもしれない。
「あー泣くな。大声でまた魔物が来るかもしれない」
そういうとレオ達はビクッとして泣くのを堪えてるみたいだ。
なんだか変な顔になってるし
「ふふ。
まぁ怒るのは後にして、まずは村に帰るよ。
ここはまだ危ないからね。」
少し笑ってしまったが、まずはレオ達を連れて村に戻ろう。
歩き始めるとレオ達は、ちゃんと着いてきてくれた。
歩いていると
「ライ兄、ごめんなさい」
レオが謝ってきた。
怖い思いもしたし反省もしただろう。
それに村に帰ったら、どうせ怒られるのだしなと
「もう村から勝手に出ちゃ駄目だよ。
でも、まぁみんな無事でよかったよ」
と返すがレオは泣きそうな顔で
「でもライ兄、腕が・・・」
「大丈夫!大丈夫!大した事ないよ」
腕の心配をしていたのか。
とっさに大丈夫と返したが、どうなんだろうな?
上手く動かせないし、痛みの感覚も無いのだ。
もしかしたら、もう動かせないかもしれないなと思って
自分の腕を見ていると、光が集まりだした。
光がおさまると腕の怪我が無くなっていた。
「これは!?もしかして、これもレオか?」
腕を確認しつつ声をかけると
「えっと、たぶん」
と少し自信なさげに返してきた。
やっぱりレオには魔法の才能があるみたいだな。
こんな村じゃ魔法を教えてくれる所もないし
「そうか。これは帰ったら父さんと相談だな」
と今後のことを考えながら言うと
「え?」
と変な顔になったが、良く分からないし、まぁいいか。
そうして僕はレオ達を連れて村に帰った。