第19話
「レオン、大丈夫、ピコ!」
「ええ、大丈夫、ですよ」
「それに、しても、レオンは、体力、あるな」
「そう、ピコ!全然、ペースを、落さない、ピコ」
「これ、くらい、なら、問題、ない、ですよ」
俺達はせっせと体を動かしている。
そのせいで言葉が途切れ途切れになってるぐらいだ。
そう。俺達は今は山の中を移動しているのだ。
なぜかって?次の町へ行くのが山越えだからな。
ラドン西の町から、アンチモン東の町へは山越えのルートだった。
乗合馬車もあるって話だが、山をウネウネと蛇行するルートのため
非常に時間が掛かってしまうらしい。
まぁ徒歩での山越えでも20日ぐらい掛かってしまうって事だが・・・
夜の山は危険なので、途中途中に山小屋ある。
なので今までの移動と比べると、夜は多少安心なのだが・・・
寝る時は、やはり俺が真中である。
まぁ案外慣れるもんで、俺はちゃんと寝れるようになった。
そういうわけで俺達は次の山小屋を目指して移動中である。
◇◇◇◇◇
「ん?何か聞こえたか?」
立ち止まり、辺りに耳を済ませる。
「何も聞こえないピコ」
「ああ、私も聞こえないな」
「う~ん。なんか聞こえた気がするんだけどな。
まぁ気にしないことにするか」
俺達は山の中を進んでいく。
「やっぱり、聞こえた!
こっちだ!」
「ちょ、おい」
「待つピコ!って、早いピコ」
俺は声の聞こえた方に走り出す。
「!これは悲鳴か!」
「急ぐピコ!」
近くになってくると2人にも聞こえたようだ。
「よし、今日も大量だったな。
馬は逃げないように繋いどけ!女は奥に連れて行くんだ!」
「だれか!だれか!」
「騒いだ所で誰も来ないぞ。まぁ後で楽しませてやるから、おとなしくしてろ」
男達はニヤニヤしながら、洞窟に入っていく。
「あれは山賊だな」
「どうするピコ?」
「って、あれ?レオンは?」
俺は馬を繋いでいる山賊たちの背後から、静かに近づき
ガガッ
即座に気絶させる。
「早業だな。レオンは魔法以外もいけるんだな」
「そうみたいピコ」
2人が俺の方に近づいてくる。
レオナさんが剣を抜き
ドスッ・・・ドスッ・・・
「な、何してるんですか!」
「こいつらは山賊だからな」
「だからって、殺さなくても・・・」
「目が覚めても厄介ピコ。かといって放置しておく訳にも行かないピコ」
「こんな山の中じゃ、兵士に引渡しも出来ないしな」
「そうかもしれませんが・・・」
なんかモヤモヤするが、これがこの世界のルールなんだろう。
俺はそう思うことで、無理やり納得することにした。
「さて、中の奴らはどうする?」
「さっき連れて行かれた女達もいるピコ。
下手なことすると危ないピコ」
「そうですね。どうすれば・・・
そうだ煙を洞窟内に充満させれば、出てこないですかね」
「なるほど。自分達が助かる為に捕まえた者達を置いて出てくるかもしれないな」
「じゃあ、燃えそうな物を集めるピコ!」
こんな山の中だ。燃えるものはあっという間に集まった。
俺が魔法で火をつけ、レオナさんが風魔法で煙を洞窟に送り込む。
「な、なんだ!?どうなってやがる」
「とりあえず外に急げ!」
山賊達がワラワラと出てくる。
「って、なんだお前達は?
お前達がやったのか?ふざけやがって!
男のガキは殺していい。後は捕らえろ」
山賊達が俺達の方に・・・ボテッ・・・来なかった。
「なんだこりゃ?」
「なんで、こんな所に穴が開いてんだよ」
「痛え!誰だ上に乗ってんのは!」
俺は咄嗟に深さ2メートルぐらいの穴を魔法で作ったのだ。
「レオン?これもお前か?」
「ええ、まぁ。これなら安全かなって」
「凄いピコ!」
「それよりも、連れて行かれた人達を助けないと」
「じゃあ、私はこいつらを見てるよ」
俺とノンさんで洞窟に入る。
「ゲホッゲホッ」
「煙いピコ・・・」
もう煙を送り込んでないから、多少煙いくらいだけど
煙はちょっと失敗だったかな・・・
途中、逃げ遅れて苦しんでいた山賊を、ノンさんがサクっと殺していく。
やはりモヤモヤするが、仕方がないと思うことにする。
奥に行くと檻の中に女の人達がいた。
あーーーこっちも凄い苦しんでる。
魔法で鍵の部分を壊し、外へと連れて行った。
外に出ると・・・山賊たちは死んでいた。
「な!?殺しちゃったんですか?なんで?」
「いや私は何もしてないよ。
逃げられないと悟ったんだろうな。
落ちた時に持ってた武器で自害したよ」
「なんで・・・」
「山賊や盗賊は、重い犯罪ピコ!
特に殺人なんかをしてれば、兵士に引き渡しても拷問されたあと死刑ピコ」
「そういうこだな。だから、その前に自殺したんだろう」
「そうですか・・・」
山賊の死体とはいえ放置するのもどうかと思ったので
洞窟の中の死体も穴の中に落とし、火葬して穴を埋めなおした。
そういった事をしていると
捕らわれていた女性達も落ち着いてきたようだ。
「助けてくれて、ありがとうございます。
でも、なんでもう少し早く来てくれなかったんですか!
そうすれば主人も助かったかもしれないのに・・・」
「それは・・その・・・」
「おい!私らが来なければ、お前達は奴らの慰み者にされた後
奴隷として売られていたかもしれないんだぞ!
感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはない!」
「すいません。
その人は目も前で旦那さんを殺されたみたいで・・・」
「レオナさん、とりあえず近くの山小屋に行きましょうよ」
「そうだな。だがその前にもう1度洞窟の中を確認するぞ」
「え?なんでですか?」
「まず、こいつらの服だな。他にも何かあれば回収する」
確かに何人かの女性は、みすぼらしい服・・・というか布を巻きつけただけになっている。
俺とレオナさんは洞窟内を見て回っている。
ノンさんは女性達の護衛と周辺の警戒のため外で待ってる。
「それにしても盗賊や山賊なんて居るんですね」
「そりゃあいるさ。まぁレオンがいたラドンは王国内では
辺境の方だから、そういったのは少ないけどな」
「そうなんですか?」
「人通りが少ないし、捕まえた者たちを売るにしても売る先がないからな」
「売るんですか・・・奴隷って言ってましたけど
奴隷なんて居るんですね。」
「大抵は税金が払えなかったりとか、軽犯罪をしたやつが奴隷になるんだよ。
犯罪者は鉱山とかで数十年ほど強制労働することで、奴隷から解放される。
税金が払えなかった方は、普通のやつでも購入できるが
購入した側が奴隷の分の税金も払わなければいけないんだ。
こっちは自分で自分を買い戻せば、奴隷から解放される。
まぁどっちも死ぬまで開放されないのが多いんだがな。
今回は喋れないよう咽を潰した後、税金が払えなかった奴隷として売るつもりだったんだろう」
「そうなんですか。
それにして奴隷なんて今まで見たことなかったけど
実はどっかで見てたのかな?」
「さっきも言ったとおりラドンは辺境だからな。
奴隷の流通も少ないんだよ」
「なるほど。
ところでも山賊達は、どうやって売るつもりだったんですかね?
犯罪を調べる水晶があるから町には入れないんですよね?」
「町に行かずに行商してる奴に売るとかじゃないのか?」
「それって大丈夫なんですか?」
「あやしい奴から奴隷を買ったってだけじゃ犯罪にはならないからな。
そいつが犯罪者ってのが分かってるのに買ったのであれば別だが・・・
それよりも、これで全部見て回ったな」
「そうですね。で服以外のはどうするんですか?」
「捕まえられてた者に多少渡して、残りは私達の取り分だな」
「あ、少しあげるんですね」
「今回の被害者だし、助け出しただけで後は自分で頑張れじゃ
さすがに、まともに生きていけないだろうからな。
まぁ金があっても厳しいだろうが、無いよりかはマシだろ」
「あ、犯罪を調べる水晶でなんですけど
山賊を殺しちゃって大丈夫なんですか?」
「盗賊や山賊みたいな犯罪者に関しては大丈夫だ。
冒険者ギルドでも生死問わずの討伐依頼が出るしな」
「そういうものなんですね」
俺達は助け出した人達を連れて山小屋に移動した。
とはいえ山小屋に放置するわけにもいかず、アンチモン東の町まで一緒に移動したのだった。
おかげで大分時間が掛かってしまった。
予定どおり助けた人達に山賊の宝を渡し、兵士たちに事情を説明して分かれた。
その後、俺達は宿で休み、また王都に向けて出発した。




