第16話
乗合馬車は順調に進んでいる。
出発してから15日経った日
「おーい。そこの馬車!止まってくれ!」
「どうしたんですか?何かありました?」
「ああ、この馬車に護衛は乗っているよな?」
業者が馬車を止めて話をしている。
「ん?私達に用事か?
ちょっと見てくる」
「了解ピコ」
「あんたが護衛の冒険者か?」
「そうだ。もう1人仲間がいるが・・・何かあったのか?」
「ああ、魔物退治の依頼を受けたんだが
街道から少し離れた所で魔物が群を作っているんだ」
「なるほど。そういうことか。
だが難しいな。さっき言ったとおり護衛は私の仲間の2人だけだ。
片方は馬車の護衛から離れるわけにはいかないから1人しか出せないぞ」
「そうか。こっちは前衛が3人だから厳しいな」
外の話が聞こえてくる。
「ノンさん、協力することで話が進んでいるけど良いの?」
「これは冒険者の義務ピコ!
冒険者は街などの入場税を払わなくていい変わりに
街道付近で問題が起きた場合、可能な限り対処するピコ!」
「なるほど」
「とはいえ、群の対処はかなり厳しいピコ。
範囲攻撃が出来る魔法使いが欲しいピコ」
「あ、俺、範囲攻撃魔法使えますよ」
「本当ピコ?ちょっと一緒に来るピコ!」
馬車の外に連れ出され
「ちょっといいピコ?」
「どうした?ノン。レオンを連れてきて」
「どうやらレオンは範囲攻撃の魔法が使えるらしいピコ」
「本当なのか?」
「ええ、村にいた時も魔法で魔物を倒してましたから」
「よし。じゃあ君も来てくれ。
君は魔法で攻撃してくれ。
魔物は前衛の俺達が引きつけるから」
俺は冒険者達と共に魔物の群がある方に向う。
「あれか。なかなか大きい群だが大丈夫か?」
「冒険者として何とかするしかないだろう」
「まぁそうだな」
「レオン、得意属性はなんだ?
できれば火魔法で範囲攻撃できればいいんだが・・・」
「大丈夫です。火魔法で範囲攻撃できます」
「よし。じゃあ火魔法で範囲攻撃後、
こっちに来るのを私が風魔法で攻撃する。
撃ち漏らしたのを、そっちで片付けてくれ」
「ああ、わかった。
レオン君だったな、もし危なくなったら君は馬車まで逃げるように。
よし!じゃあ、頼むぞ!」
俺は魔物の群を確認し火魔法をイメージする。
最初は爆発をイメージしようかとも思ったんだが
爆風がこっちまで来ちゃいそうだし、魔物が吹っ飛んでばらけても困るかと考え
炎の壁が魔物を取り囲み、徐々に狭くなっていくのをイメージする事した。
ゴゴゴゴゴ
「な、なんだこれ!」
「炎の壁が群れを飲み込んでく・・・」
後には魔物の群だった消し炭が残った。
「えーっと・・・なんか私の風魔法は必要ないみたいね・・・」
「あそこに群が合ったんだよな・・・」
「そうですね。今は消し炭になってますが・・・」
「あ、すいません」
「なんだ!どうした?」
「消し炭にしちゃったので、毛皮とか取れなくなっちゃいました」
「あ、いや。それは別にいい」
「まぁそのなんだ。とりあえず馬車に戻るか」
「レオンは先に馬車に乗ってていいぞ」
「わかりました」
そう言われ、俺は馬車に乗り込んだ。
「どうしたピコ?
だいぶ早いけど何かあったピコ?」
「あ、いや、魔物はもう倒し終わったんだ」
「小さな群だったピコ?
それにしても早すぎる気がするピコ」
「群は大きかったんだが、レオンの魔法が凄すぎてな。
一瞬で終わったよ」
「そんなに凄かったピコ?」
「ああ、あんなのは初めてだ。
まだ子供だが仲間に欲しいぐらいだな。
王都に行くらしいから、付いていこうかと思う」
「レオナがそこまで言うなんて、よっぽど凄いみたいピコ。
分かったピコ。王都まで付いてくピコ」
「ああ、上手く仲良くなったり恩を売れれば
レオンが冒険者になった時に仲間になってくれるかもしれないからな」
俺はそんな2人の会話を知らず、魔物を群を倒したことで浮かれていた。
数日後、乗合馬車はラドンの町に着いた。