第15話
チラッチラッ
う~む。気になる。
只今ラドンの街行きの乗合馬車の中なんだが
俺と同じくらいの女の子が乗ってるんだよ!
でもナイフとか装備してるんだよね~
なんだろ?護身用のナイフとかかね?
この子も王都で魔法の勉強に行くのかな?
「さっきから、何チラチラとこっち見てるピコ?」
ピコ?
語尾にピコだって、なんか面白いな。
「あ、えっと、すいません。
俺と同じくらいなんで、ちょっと気になりまして・・・
あ、俺はレオンって言います」
「ぷっ、同じくらいだって・・・くっくっく・・・」
「笑うなピコ!
俺にお前、こう見えても私は42歳ピコ!」
「はぁ?何でそんな嘘を?
どう見たって俺と同じぐらいですよね」
「良かったな。ノン!
可愛いお友達が出来そうだぞ。ぷっくっく」
パコっと隣の女性を殴りつつ
「だから笑うなピコ!」
「そのピコって語尾もなんかいいですね。ピコピコ~って」
「あ、それはマズイ・・・」
「え?」
バコン!
いきなり殴られた!?
さらに蹴りまで飛んでくる。
「痛っ!ちょ、待って、良くわらないけどゴメンなさい。
あやまるので勘弁してください」
「ノン。ストップだ!
たぶん、この坊主フィールドランナーを知らないんだよ」
「でも侮辱されたピコ!」
「ほらノンは大人だろ?
ここは広い心で、子供を許してやらないとな」
「ちっ・・・分かったピコ。
しょうがないので許してやるピコ」
フィールドランナー?
って、妖精族のフィールドランナーか!
「えっと、こんな小・・・ムガっ」
横の女性に口を押さえられた。
「お前、本当に知らないみたいだな」
口を押さえられているので、コクコクと頷く。
「ノン。こいつ本当に知らないみたいだぞ」
「今時、フィールドランナーなんて珍しくないピコ。
こいつ何で知らないピコ?」
「んーんー」
「あ、すまん。まだ口押さえてたな」
「ぷはっ。俺はずっと村で暮らしてたから
フィールドランナーどころか他の種族について名前ぐらいしか知らないんですよ」
「え?おまえ人間だよな。人間の子供だろ?」
「そうですよ。それが何か?」
「商人の子供で、やっと親から手伝いで買出しにさせてもらえるようになったとかじゃないのか?」
「いえ、俺は魔法が使えるので王都の学校に魔法を勉強しに行くんですよ」
女性とノンと呼ばれている女の子は向かい合ってキョトンとしている。
「ん、ああ、すまなかったな。てっきり商人の子供が手伝いをしてるのかと思ってた。
商人でフィールドランナーを知らない奴はまずいないし
乗り合い場所に乗る人間の子供なんて、だいたいが商人の子供だからな」
「そうピコ!でもレオンは親と一緒じゃないピコ?」
「王都までかなり時間も掛かりますし、乗合馬車も結構お金掛かりますから・・・
俺は一人で王都まで行くんですよ」
「そういうもんなのか?人間の子供は良く分からないな」
「あの人間、人間って言いますけど・・・」
「ああ、私はレオナ、エルフだ」
「エルフ!初めて見た!
でも人間と同じなんですね」
「外見は殆ど同じだな、違うのは・・・ほら」
「あ、耳が尖ってる」
レオナさんは髪を書き上げて耳を見せてくれた。
「ダークエルフも同じ感じだな。あっちは肌の色が黒いからすぐに分かるだろうけど・・・」
「私も自己紹介しておくピコ。
フィールドランナーのノンと言うピコ。42歳ピコ!
ちなみにレオナは40歳ピコ。私の方が年上ピコ!」
「あ、俺は・・・」
「さっき聞いた。レオンだろ?」
「あ、はい。そうです」
42歳と40歳か・・・
そうは全く見えないな。
レオナさんって人も、20歳ぐらいだと思ってたよ。
妖精族ってのは年齢は分かりにくいのかな?
「1つ忠告しておくが、フィールドランナーの語尾を馬鹿にしたり
笑ったりすると大変な目にあるぞ」
「はい。それはもう良く分かりました」
「レオンが子供だから殴られた程度だが、大人だったら殺されてるかもしれないからな」
「そんななんですか!?」
「そうピコ!これは遠い昔の先祖が作った大事なものピコ!」
「そうなんですか・・・」
「これからは気をつけるピコ」
「ところで2人は何者なんですか?
商人ってわけでもなさそうですし・・・」
「ああ、私達は冒険者だよ。
今回は乗合馬車の護衛として同乗してるのさ」
「そうピコ!魔物とか盗賊が出ても安心するピコ!」
「といっても、まだDランクに成り立てだけどね」
冒険者にはランクがあるんだなと思ったが
Dランクが、どれくらいなのか不明なので特に何も言わなかった。
何か言って、また殴られたくないしな。
道中の食事は各自で準備するのだが
俺が夕食を作ってレオンさんとノンさんにお裾分けすると大絶賛され他の同乗者にも振舞ったり
しまいには材料を渡され食事を作ってくれと頼まれ、せっせと頑張った。
これぞ家族にも褒められた俺の料理!
まぁ『料理上手』スキルがあるおかげなんだが・・・
それに前世で料理アニメに嵌って色々と研究もしたからな。
途中でラドンの街からの折返しの馬車とすれ違ったりしたが、特に何事も乗合馬車は進んでいく。