プレゼント is oneself
俺の友人、茶々 優都は、他人の喜んだ顔が好きだ。ひとえに他人と言っても、不特定多数の全員ではない。俺も含まれるが、一番顕著に表れるのは友人の冠 京だ。
「京ー!メリークリスマス!はい、これ!クリスマスプレゼント!」
終業式のあるクリスマスイブの今日は、ここぞとばかりに京にプレゼントをしている。クラスメートの皆はまたか、と微笑まし気に観察している。
「ありがとう優都!もう本当に優都大好き愛してる!」
『オイコラ』
クラス中から総ツッコミを受けた京。現金なヤツだ……ああ、京はそういうヤツだったな。
「はい、真夜にも!メリークリスマス!」
「メリークリスマス、優都。ほら。俺からもプレゼント」
「え……?うわ!有り難う!」
「どういたしまして」
もらったプレゼントを受けとり、用意していたプレゼントを渡す。優都はこういうイベントには目がないからな。用意しておいてよかった。
「ちょっと聖!何で優都にはあげるのに私にはないのよ!」
「お前がプレゼントくれなかったから」
「…………」
無言で目を反らした京。オイ。
「だ、大丈夫だよ!京!ほら、もう一個あげる!」
「!本当!?ありがとう!」
もう一つプレゼントを貰って喜ぶ京。あれ、餌付けに見えてきた。眼鏡買い替え時かな。
「別にいいんだよ。……京の愛情を僕だけにくれたら、ね」
あれ、どちらかと言えば微笑ましい告白の言葉なのに。なんで薄ら寒いんだろう。
なんで優都の目が濁ってるんだろう。
なんで
優都ハ俺ノプレゼントヲ握リ潰シテルンダロウ。
まあこれもいつものことだ。しかしいくら京と仲良さそうに話していたからって何もプレゼント握り潰さなくてもいいのに。
優都はことあるごとに京に贈り物をする。誕生日は勿論、バレンタインデーにホワイトデー、ハロウィンにクリスマス。それ以外にも
「このアクセサリー京に似合いそう」
「この服安かったんだ」
「はい、京。ボールペンのインク、切れかかってたでしょ」
と、何かと理由をつけてはプレゼントをする。
一度京に優都のことをどう思っているのか訊いてみた。
「優都?すっごく親切だよね~。わざわざボールペンまで買ってきてくれるんだもん」
『親切で優しいクラスメート』。それが京が優都に抱いている感情だ。
しかし優都の方は違う。
前に京と俺が話している時、ふと見ると優都がこちらを見つめていたのだ。
顔に何の表情も浮かべず、目を黒く濁らせて。
あの顔を見たときはゾッとした。まるで能面のようだった。
それから優都を観察して見ると、分かったことがある。
優都は、京と話す全員を冷たい目で見ている。
俺だけじゃない、京と話すクラスメート、教師など全員に対して優都は冷めた目を向けていた。
そのことに気付いてからは、俺は――
――今まで以上に京に話しかけることにした。
「おはよう!京」
「京、ノート見せて」
「京。マック行かないか?優都も誘って」
わざと優都の前で必要以上に京に話しかける。たったそれだけでいい。
それだけで、優都は俺だけに冷たい目を向ける。
それだけで、
学校中の全員を見なくなる。
それだけで、
優都ハ俺ヲ、俺ダケヲ
見テクレル
「京!この後いっしょに食べに行かないか?ほら、優都も!」
「いいね!行こ行こ!」
「……そうだね」
行こうか
その顔に表情がないのをチラリと確認した俺は、隠れて嗤った。
そう、それ。その表情が見たいんだ。
だから優都、もう俺以外をそんな目で見るな。
お前が濁った目を向けるのは、俺だけでいいんだから。
はい、せーの。「何だこれ」拙い文章ですみません。
↓以下、私が書きたかった設定。本文と重なる部分はありますが、殆ど使われていない……というより私が表現できなかった。
茶々 優都
作者の別作品の弟。他人が喜ぶのが好き、というより京ちゃんが喜ぶ顔が好き。プレゼントをあげるのは愛情表現だが、物をあげることにより相手の意識を自分に向け、そこから相手を縛る。要は愛して欲しいが故に相手に尽くすタイプのヤンデレ。
冠 京
クラスメートの一人。優都が盲目的にまで愛しているのが彼女。彼女的には優都も真夜もクラスメートであり仲のいい友人でしかない。優都がヤンデレだとも気付いていないある意味強い子。
聖 真夜
クリスマスだしな~と考えた名前の彼。そしたら厨二っぽくなったのは悪いと思っている。優都のヤンデレにいち早く気付――いたのに更にヤンデレを加速させている作者にとっても謎キャラ。当初の予定ではBLルートには入らずに、ただ単に傍観するだけだった。ヤンデレには気付きつつも放置――するはずが加速している。書いてて一番楽しかったのは彼。……ちなみに作者的には真夜から優都に対するベクトルは友情(だと思いたい)。何となく書いてたら一番ヤンデレた気がする。あらためて言うが、本来の予定でこの子は病むはずではなかった。
それでは皆様もう一度『何だこれ』