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第4話 そうしないと私に明るい未来はないって気付いたから

 あっという間に土日が過ぎて月曜日がやってきた。一応紗奈は昨日の夜には退院しているはずだが大丈夫だろうか。そんなことを考えながらベッドから起き上がる。


「……今日は流石に来ないかもしれないな」


 紗奈は俺と一緒に登校するために朝から家に来るのだが、あんなことがあった後なのでもしかしたら今日は学校を休むかもしれない。

 そう思いながら俺はダイニングに用意されていた朝食を食べ、再び自室に戻って登校する準備を始めていると部屋の扉がノックされる。俺が一言返事をすると扉がゆっくりと開いたわけだが、なんとそこには制服姿の紗奈の姿があった。


「春人、おはよう」


「えっ、紗奈!?」


 こちらの都合なんて一切考えずに扉を開けてくるタイプなので、紗奈がわざわざノックをして入ってきたことに驚きを隠せない。


「先週の金曜日は色々と迷惑をかけたわ」


「いや、それは全然良いんだけど紗奈はもう体は大丈夫なのか?」


「ええ、私はもう大丈夫よ」


「そうか、とりあえず安心だ」


 紗奈の雰囲気はいつもと全然違った。何というかいつも俺に対して向けてきていた女王様気質のオーラやトゲトゲしさが全くない。そう思っていると紗奈は俺に対して深々と頭を下げてくる。


「今まで本当にごめんなさい」


「急にどうしたんだよ……?」


「春人の気持ちとかを全然考えずわがままばっかり言って困らせてたことにようやく気付いたの」


 そう口にした紗奈は少し青ざめた表情を浮かべているように見えた。なるほど、今までの俺に対して無自覚に傍若無人な振る舞いをしていたことにようやく気付いたらしい。

 正直うんざりし始めていた俺だったが、どうやっても紗奈にそれを自覚させるのは無理だと諦めていたため、自主的にそれに気付けたのは驚きだ。


「もうあんなことは絶対にしない、だから虫のいい話かもしれないけどこれからも仲良くしてくれたら嬉しいわ」


「心配しなくてもそのつもりだから」


 俺がそう伝えると紗奈は安心したような表情になった。ぶっちゃけずっと傍若無人な振る舞いをされるなら高校を卒業したタイミングで意図的に関係を疎遠にしようとも思っていたがその必要はないかもしれない。


「それにしても紗奈がそんなふうに素直になるとは思わなかったから驚きなんだけど」


「そうしないと私に明るい未来はないって気付いたから」


「未来っていきなり凄い壮大な話になったな。まあ、でも今の雰囲気の方が周りのみんなも付き合い安いとは思うぞ」


 実際に紗奈は普段の横暴な立ち振る舞いが原因で苦手意識を持っているクラスメイトは多かった。俺も紗奈と幼馴染ではなかったら間違いなく積極的に関わろうとはしなかっただろうし。


「じゃあそろそろ学校に行きましょう」


「そうだな」


 俺と紗奈はキッチンで洗い物をしていた母さんに挨拶をしてから家を出る。すると紗奈は突然俺の右手を掴んできた。


「急にどうしたんだよ?」


「手を繋いでないと春人がどこかに行ってしまいそうな気がしちゃって、このままじゃ駄目かしら?」


「だ、駄目じゃないけど」


 上目遣いの紗奈から懇願された俺は反射的にそう口にしてしまう。本当は恥ずかしかったが駄目ではないと言ってしまった以上、やっぱり無理とは言えそうになかった。

 それにしても今までツンツンしていた紗奈が急にこんなふうになると破壊力は抜群だな。これがいわゆるギャップ萌えというやつだろうか?

 素直な紗奈には凄まじい違和感があるが多分そのうち慣れるだろう。この時の俺はまだ紗奈から凄まじい激重感情を向けるようになるとは夢にも思っていなかった。

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