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間話2 はっきり言ってあんたには他に魅力なんてないわ

 誓いのキスが終わると場面はどこかのマンションの一室に移り変わる。部屋の中は私好みの内装だったのでもしかしたら二十九歳の私の部屋なのかもしれない。そんなことを考えつつ私はヒステリックに声をあげる。


「なんで二十九歳の私はこんなことになっているのよ!?」


 やはり私が春人と結ばれない結末になる理由が理解出来ない。今の私に問題があるとは思えないので二十九歳の私がやらかしたことが原因なのではないだろうか。


「多分あなたは私が何か失敗したせいだと思ってるかもしれないけど、残念ながらそれは違うわ」


「……どういうことよ?」


「確かに大人になった私は春人とすれ違い続けてきたし、彼を怒らせるようなことも色々やった。でも、私と春人は大人になるずっと前からすれ違い続けていたのよ」


「別に私と春人はすれ違ってなんかないわよ」


「昔の私もそう思っていたわ、だからこうなったんだけどね」


 そう口にした二十九歳の私は自虐的な笑みを浮かべていた。今の言葉には嘘や冗談が入っているとはとても思えなかったため私は何も言えなくなってしまう。


「私の一番の過ちは春人の気持ちを考えられていなかったことよ」


「別に私は考えてるつもりだけど……」


「ううん、これっぽっちも考えられてないわ。春人は私のわがままに振り回され過ぎてうんざりしてき始めてるのが本音よ、優しいから絶対に口には出さないけど」


「わ、私と一緒にいれるんだからきっと春人も嬉しいと思ってるはずよ」


「だからその考え方が根本的に間違っているわ」


 私の反論に対して二十九歳の私はそう言い切った。そのまま二十九歳の私は言葉を続ける。


「そもそも、私と一緒にいて春人は何で嬉しいと思うのかしら?」


「私みたいな美少女と一緒にいれたら男子はみんな嬉しいはずよ」


「確かに自分で言うのもあれだけど、私って顔はめちゃくちゃ良いと思うわ。でもそれ以外で春人にとって私に魅力ってあると思う?」


 そう言われて私は何も言葉が出なくなる。確かにそれ以外は何も出てこなかった。時間をかけて考えれば何か思いつくかもしれないが、すぐに出てこない時点で大した魅力とは思えない。


「はっきり言って今のあんたには他に魅力なんてないわ」


 なんと二十九歳の私は何の躊躇いもなく私に対してはっきりとそう言い切ったのだ。激しく不快感を覚える私がいる一方で納得してしまう自分もいた。

 確かに私の方が容姿は優れているし、コミュニケーション能力も私の方が高いとは思うが、それ以外に関しては春人の方が圧倒的にハイスペックだ。


「つまり春人がわざわざあなたに選ぶメリットなんてないわけ、実際に選ばれたのが()じゃなくてもっと魅力のある子だったことが何よりの証拠よ」


 もはや私は何も反論する気力すら湧いてこない。それだけ二十九歳の私の言葉には重みがあった。


「だからここであなたにはっきりと断言するわ、今のままの素直になれないあんたなんかじゃ間違いなく春人から選ばれないし見捨てられるって……だからあなたは私のようにはならないで」


 そんな死刑宣告とも言えるような言葉を浴びせられた私は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われる。最後に何を言っていたかは聞こえなかったがもうこれ以上聞きたくはなかった。

 そして次に気付いた時には真っ白な天井が視界に飛び込んでくる。起き上がって辺りを見渡すとどこかの病院の一室のようだった。


「……もしかしてさっきのは夢?」


 そうつぶやく私だったがそうとは思えないくらい記憶はしっかりと残っている。先程の生々しいやり取りの数々が次々に脳内でフラッシュバックした瞬間、私の中にあった何かは音を立てながら完全に崩れ去った。

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