第43話 そう言えばそんなこともあったな
だが俺は瑠花の口にした言葉を聞いてもあまりピンときていない。だって特にヒーローのようなことなんてした記憶が無いし。そんな俺に気づいているのかいないのかは分からないが、瑠花はそのまま話し続ける。
「ハル君は覚えてるかどうか分からないけど、うちのお母さんって色々と厳しかったじゃん」
「ああ、それは覚えてる」
瑠花の両親はどちらも超がつくようなエリートで教育にはかなり力を入れるタイプだった。特に母親は岡山県では超少数派な小学受験をさせる方針で、瑠花にはめちゃくちゃ厳しかったのは未だに覚えている。
だが俺や紗奈と同じ誰でも入れる普通の小学校に通っていたことからも分かるように、瑠花は小学受験で不合格になってしまった。それが原因で母親とは一時期ギクシャクしていたはずだ。
「あの頃色々と辛かったのは未だに忘れられないんだ」
「確かに学校でも死んだような顔をしてた時期があったもんな、でも瑠花が転校する小学三年生になった頃には元気になってただろ?」
「うん、ハル君のおかげでね」
「えっ……?」
先程のヒーローという言葉と同じくやはり意味が分からなかった。恐らく俺のおかげという部分がヒーローという言葉に繋がるとは思うのだが。
「お母さんと喧嘩して泣きながら家を飛び出した時に、私を一番に見つけてくれたのはハル君だった」
「そう言えばそんなこともあったな」
小学二年生の冬休み瑠花が家出をして行方が分からなくなり、俺を含めた近所の住人で手分けをして瑠花を探すことになった。そして瑠花が行きそうな場所に心当たりがあった俺が向かった先で瑠花を見つけたのだ。
「その時にハル君は私に言ってくれたよね、瑠花が凄い頑張ってきたことを俺はちゃんと知ってるからって」
「細かい部分までは思い出せないけどそんな感じのことを言った記憶はある」
瑠花が母親と喧嘩した理由は成績のことであり、小学受験の時の失敗を掘り返され耐えられなくなったのが家出をした理由だったとその時に聞いた。確かに小学受験の失敗は事実かもしれない。しかし瑠花の頑張りを俺はしっかりと知っていたため、そんな言葉を瑠花にかけた。
「その言葉を聞いて私は駄目な人間じゃ無いんだって心の底から初めて思えた、だからハル君のおかげで私は救われたんだよ」
なるほど、俺が何気なくかけたあの言葉のおかげで瑠花は立ち直ったらしい。子供ながら何とかして瑠花を励まそうとした俺の言動が、ハル君は私のヒーローという言葉を生み出すきっかけになったのだろう。
「それがさっきの紗奈ちゃんと同じかそれ以上にハル君と仲良くやってたと思うって言葉の根拠かな」
そう口にした瑠花はキラキラとした笑顔を浮かべている。その表情にドキッとさせられる俺はめちゃくちゃ単純な人間かもしれない。
そんなことを思っていると入り口の方からガチャガチャと音が聞こえてくる。ようやくこれで外に出られる。そう思いながら立ち上がる俺だったが長い間座りっぱなしだったせいで足がかなりしびれていた。
それは俺だけではなく瑠花も同じだったらしい。なんと瑠花は立ち上がった瞬間足の痺れが原因でバランスを崩してしまったのだ。そして俺を巻き込んでそのまま二人でマットに倒れ込む。
「マットが柔らかくて助かったね……ハル君は大丈夫?」
「ああ、俺も特に怪我とかはしてないから大丈夫なんだけどこの体勢は流石にまずいから今すぐに退けてくれないか?」
「この体勢……?」
俺の言葉を聞いた瑠花は俺達がどんな状態になっているかにようやく気付き顔を真っ赤に染める。瑠花は仰向けになっている俺の上から覆い被さるような体勢になっていた。今の姿を誰かに見られると体育倉庫の中で不純異性交遊を行っていると勘違いされかねない。
だから即刻退けて欲しかったのだが無慈悲にも体育倉庫の扉は開かれる。そして開かれた扉の先にいた紗奈にバッチリと見られてしまった。
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