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第42話 もし逆に紗奈ちゃんが転校して私が残ってたらどうなってたと思う?

 昼休みも終わり午後からの試合に臨む俺達だったが、引き続き勝率は悪くなかった。完全勝利という結果にはならなかったが、普通に楽しい球技大会だったと思う。

 閉会式も先程済んだため、後はグラウンドの片付けさえ終われば終了だ。後片付けは一年生が行うことになっているが、三百人以上いるため手分けをすればすぐだろう。


「球技大会楽しかったね」


「瑠花は大活躍だったな」


「あんたが一番楽しんでたんじゃない?」


「えへへ、そうかな?」


 瑠花は相手コートに次々とサーブを叩き込んで点を決めていたため、間違いなく俺達のチームの勝利に大きく貢献したと言えるだろう。

 俺達は雑談をしながらネットを畳んだりカラーコーンを回収したりしてグラウンドの上にある道具を片付けていく。やはり人数か多かったためグラウンドの上はあっという間に綺麗になり、後は残っているものを体育倉庫の中に運ぶだけだ。


「これで最後だよね?」


「ああ、さっさと奥に運ぼう」


 俺と瑠花はバレーボールの入ったカゴを体育倉庫の奥まで二人で押していく。元々は瑠花と紗奈がカゴを運んでいたのだが、疲れて顔が死んでいたため俺が変わってあげた。

 紗奈も体力があまりない割には結構バレーボールを頑張っていたし、今日はぐっすりと寝れるのではないだろうか。そんなことを思っているうちに奥まで到着したためこれでミッションコンプリートだ。


「よっしゃ、終わった」


「ハル君って昔から喜ぶときの癖が全然変わってないよね」


「喜ぶときの癖?」


「うん、幼稚園の頃から嬉しいことがあったらそんなふうに右手でガッツポーズをしてたよ」


 瑠花はくすくすと笑いながらそう声をかけてきた。なるほど、そう言われると確かに毎回こんな感じの動きをしている気がする。そして何だかんだ瑠花も俺のことをよく覚えてるんだな。そんなことを考えていると入り口の方からバタンという鉄製の扉が閉まるような音とガチャっという鍵がかかるような音が聞こえてきた。


「……なあ、鍵が閉まるような音が聞こえてきたのは俺の気のせいか?」


「ううん、私の耳にもしっかり聞こえたよ」


「ひょっとしてまさかとは思うけど閉じ込められたりしてないよな?」


 俺達は大急ぎで入り口に戻り扉を開けようとするがびくともしない。どうやらそのまさかの展開に巻き込まれてしまったようだ。


「まさか閉じ込められるなんて思わなかったね」


「中に人がいるかどうかすら確認せずに締めるのはマジでやめて欲しいぞ」


 ひとまず俺達は中から鍵を開ける方法がないかや、別の出入り口が他にないかを二人で探し始める。だが、残念ながら二人で探し回っても何も見つからなかった。滅多にないことだとは思うが運悪くこういうトラブルに巻き込まれる人間がいる可能性も考えて設計して欲しい。


「外と連絡が取れないのは普通に困るな、このまま取り残されたら最悪なんだけど……」


「心配しなくてもそれは大丈夫じゃないかな? 帰りのホームルームになっても私とハル君がいなかったら異変には気付くと思うし」


 心配になる俺に対して瑠花は冷静だった。どうやら瑠花はこんなときでも相変わらずマイペースらしい。まあ、でも瑠花の言う通りだとは思うので過剰に心配する必要はないか。そう思った俺は瑠花が座っていたマットの隣に腰掛ける。マットは思っていた以上に柔らかかった。


「それにしてもハル君と二人きりなんて本当に久々だね、いつもは紗奈ちゃんも一緒だから」


「確かにそうだな、何だかんだ紗奈とはいつも一緒に行動してるし」


「もし逆に紗奈ちゃんが転校して私が残ってたらどうなってたと思う?」


「うーん、どうだろう」


 瑠花から突然そんなことを言われたためひとまず真面目に考えてみる。紗奈との大きな違いは社交性の部分であり、瑠花は周りと比較しても圧倒的に高い。

 これは性格も関係していると思う。素直になる前の紗奈は高飛車で傍若無人な性格が災いして友達が少なかったし。そのためわがままを言える俺にベッタリだった紗奈ほど一緒に過ごす時間はなかったと思う。

 それどころか、同じようなタイプの友達と仲良くなって俺とは疎遠になっていた可能性が高いとすら思う。それが俺の出した答えだったのだが瑠花は違ったらしい。


「私は紗奈ちゃんと同じかそれ以上にハル君と仲良くやってたと思うな」


「どうしてそう思うんだ?」


「だってハル君は私のヒーローだから」


 瑠花はニコニコした表情でそんな言葉を口にした。

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