第41話 ハル君が知らない間に私もしっかり女の子らしくなったってことかな
第一試合目から凄まじい強敵と対戦するはめになった俺達だったが、その後の対戦相手達とは良い感じの勝負をしていた。
残念ながら全勝とはいかなかったが七人で力を合わせたおかげで周りよりも高い勝率を誇っている。ひとまず午前中の試合は全て終了したためこれからお昼休みだ。
「やっとお昼ね」
「えっ、私的にはあっという間だったんだけど」
「それはどう考えても運動神経抜群な瑠花だからでしょ?」
「でも紗奈ちゃんも何だかんだ楽しんでたじゃん」
「私も昔よりも物事をちゃんと楽しめるようになったってことよ」
紗奈と瑠花は教室に戻りながら楽しそうに会話をしていた。小学生の頃はたまに意見がぶつかり合うこともあった紗奈と瑠花だが、今の二人の様子を見るとそんな感じではなさそうだ。
ただ、やはり紗奈は瑠花と再開してから今日に至るまでどこか違和感がある。何というかどこか無理をしているように見えてしまう。多分マイペースな瑠花は気づいていないだろうが、俺の目には紗奈の姿がそのように映っているのだ。
何事も起こらなければ良いが。そんなことを思っているうちに教室に到着した。俺と紗奈、瑠花は三人で一緒に食べているため今日もそのつもりだったのだが、今回はいつもと違うことがある。
「瑠花のお弁当、いつもと中身が全然違うわね」
「あっ、やっぱり気付く?」
「本当だ、かなり凝って作った感じの中身になってるじゃん」
今までは割とシンプルな中身のお弁当だったが、今日はしっかりと作り込まれていた。紗奈と二人で瑠花のお弁当の中身を見ていると瑠花は得意げな表情で口を開く。
「先週まではお母さんが作ってたんだけど今日は私が作ったんだ、転校してちょっと経って余裕も出てきたから」
「何となくそんな気はしてたけど瑠花もちゃんと料理は出来るんだな」
「ハル君が知らない間に私もしっかり女の子らしくなったってことかな」
俺と瑠花はそんな会話をしていたが紗奈は何故か会話に入ってこない。チラッと紗奈の方を見るとどこか悔しそうな表情を浮かべているように見えた。だが、俺の視線に気付いた紗奈はすぐに普段通りの表情になる。
「休み時間もそんなに長くないし、そろそろ食べない?」
「うん、そうしようか」
瑠花は相変わらず紗奈の違和感には全く気付いた様子がない。紗奈の違和感に気づくのはかなり難しいため、正直そこは仕方がないと思う。
「あっ、そうだ。せっかくだからからあげを一個あげるよ」
そう言って瑠花は箸につかんだからあげを俺の方に伸ばしてくる。だが、その行動を紗奈が黙って見てはいなかった。
「それだと瑠花の食べる分が少なくなるでしょ、それに春人には私の作ったお弁当からあるから」
「じゃあ交換にする? 私も紗奈ちゃんが作ったお弁当を食べたかったし」
「分かった、交換しましょう」
紗奈そう言い終わった後、思いがけない行動に出る。何と俺の目の前に差し出されていたからあげをパクッと食べたのだ。
「めちゃくちゃ美味しかったわ、ってわけだから瑠花も好きなのを一つ取っていいわよ」
「ありがとう、どれにしようかな……」
瑠花は特に気にした様子もなく紗奈のお弁当から何を取ろうか悩み始めていた。恐らく自分の作ったからあげを誰かに食べさせたかっただけで、あげる相手は俺でも紗奈でもどちらでも良かったのだろう。
一方で紗奈はかなり複雑そうな顔をしていた。色々な感情が入り混じった様子だったため断定は出来ないが、その中に焦りが含まれているような気がする。




