第38話 二人とも春人の幼馴染なんだから気になるに決まってるだろ
瑠花が転校してきてからあっという間に二週間が経過した。この二週間で瑠花は問題なくクラスに溶け込んだため、もはやもっと前からいたような気すらするレベルだ。
「春人、おはよう」
「おはよう秋夜、今日はやけに元気だな?」
「今日は一日授業がないんだから当然だろ」
秋夜は元気よくそう答えた。今日は授業がなく一日球技大会をやる日になっている。だから秋夜のように浮かれているクラスメイト達はそれなりに多い。
六月末には考査発表となる期末テストの足音が徐々に近づいて来ているというのに、みんなあまりにも呑気過ぎやしないだろうか。まあ、俺自信も球技大会自体は楽しみにしていたが。そんなことを考えていると近くの席から紗奈のぼやき声が聞こえてくる。
「何で球技大会なんてする必要があるのよ、絶対もっと他のことをした方が有意義だと思うわ」
「じゃあ紗奈ちゃんは普通の授業の方が良かった?」
「かなり悩みどころだけどギリギリ授業の方が良かったかもしれないわね」
瑠花の質問に対して紗奈はそう答えていた。球技大会を楽しみにしているクラスメイトが大多数だが、紗奈のように嫌そうな顔をしている者もちらほらいる。
ちなみに紗奈が球技大会を嫌がっているのは球技全般が苦手だからだ。子供の頃から傍若無人なところがあった紗奈はチームプレイが基本の球技との相性が悪かった。
「私的には授業よりも球技大会の方が楽しいと思うけど」
「瑠花みたいに身長が高くないとスポーツは楽しめないのよ」
確かに紗奈の言う通り小柄なのも球技との相性が悪いことに関係していると思う。女子高校生の平均身長が百五十八センチであることに対して紗奈は百五十四センチなためスポーツをする上では不利だ。
一方瑠花のように百六十五センチくらいあれば女子の中では高いためかなり有利だと思う。そんなことを考えていると二人の会話に進藤さんも参戦する。
「紗奈ちゃんが瑠花ちゃんと同じくらい身長が高かったとしても多分同じように嫌がってた気がするのは私だけ?」
「うん、萌音ちゃんの言う通りだと思う」
「その通り過ぎて何も言い返せそうにないわね」
瑠花と進藤さんから思いっきりいじられる紗奈だったが、何だかんだで楽しそうにしていた。紗奈は意外と人見知りなところがあってクラスメイトとは壁を作りがちだったが、コミュニケーション能力が高い瑠花が間に入ってだいぶ上手くいくようになったと思う。
はっきり言って四月の入学直後よりも紗奈は明らかに学生生活が充実するようになったと思うが、一方で瑠花が転校してきてからどこか余裕がなさそうに見えることが多々ある。
紗奈は一体何をそんなに焦っているのだろうか。そんなことを考えているうちに予鈴がなり、朝のホームルームが始まる。
水分補給をしっかりとするようになどの球技大会に関する注意事項がメインだったため割とすぐ終わった。それから体操着に着替えるために男子の更衣室として指定された教室に移動をする。
「それで春人は伊吹さんと久遠さんのどっちを狙ってるんだ?」
「いきなり何を聞いてくるんだよ?」
「二人とも春人の幼馴染なんだから気になるに決まってるだろ」
「秋夜は相変わらずそういう話が好きだよな」
瑠花が転校してきてから以前にも増して秋夜は幼馴染ネタで絡んでくるようになった。瑠花が転校してきた後、お前は漫画の主人公かよとも言われたが、俺からすれば秋夜の方がよほど主人公っぽい。
こんな幼馴染に頭を汚染されたやばいやつなのに、高校に入学してから一回女子から告白されたらしいし。普通に振ったらしいが。相手が一体どこの誰かまでは知らないが、絶対にこいつの本性を知らなかったに違いない。
「で、どっちなんだ?」
「ぶっちゃけ真面目に考えたことがなかったからこれ以上話すことはないぞ」
そう言って無理矢理話を終わらせる俺だったが、一応本音だったりもする。はっきり言って紗奈も瑠花も明らかに容姿が飛び抜けて良いため俺のような普通の男子と釣り合うとは到底思えない。
多分紗奈や瑠花とは幼馴染という関係ではなかったら一生関わることがなかったとすら思う。だからそもそも考えたことがなかったのだ。
もし真面目に考えるとすれば以前までの俺であれば間違いなく瑠花以外の選択肢はあり得なかったが、はっきり言って今ではめちゃくちゃ悩んでしまう。紗奈が素直になって以来、一緒に過ごす時間はそれだけ心地良かった。




