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第36話 へー、紗奈ちゃんって料理できたんだ

 休み時間が終わるギリギリまで自動販売機コーナーで時間をつぶしてから戻って授業を受け、三時間目が終わった後の休み時間に関しても上手いことやり過ごし、四時間目が終わっていよいよ昼休みに突入した。


「じゃあ二人ともよろしくね」


「ええ、私と春人がしっかり学校の中を案内してあげるから」


「とりあえず教室から出よう」


 周りから死ぬほど見られているため俺達は教室を出る。一部の男子達からの殺意と嫉妬の視線から一刻も早く逃れたかった。そのまま俺達は三人で校内を歩き始める。俺を中心に左右に紗奈と瑠花がいる並びだ。


「あんたも転校初日から質問攻めにあって大変ね」


「いくら転校生が珍しいからってみんながっつき過ぎだよな」


「そうかな? 私はみんながいっぱい質問してくれて嬉しかったけど」


「瑠花のそういうところは全然変わってないのね」


 マイペースな返答をしてきた瑠花に対して紗奈は呆れつつも懐かしそうな表情を浮かべながらそう答えた。


「逆に紗奈ちゃんは雰囲気がめちゃくちゃ変わった気がする、上手く言い表せないんだけど柔らかくなったように感じるから」


「私も瑠花と別れてから成長したってことよ。ほら、三日会わざれば刮目して見よって言葉もあるでしょ?」


「いやいや、その言葉は女子には使わないだろ」


「細かいことは気にしなくてもいいの」


 いつものことではあるが紗奈はその辺りがだいぶ適当だな。まあ、紗奈らしいとも言えるが。


「でも、紗奈ちゃんのそういう勝ち気なところは昔のままみたいだね」


「紗奈から勝ち気なところを抜いたら何も残らないからな」


「それは私に対する戦線布告と受け取っていいかしら?」


「冗談だから拳を振り上げるな」


 本気で殴ってくるつもりはないとは思うが一応そうなだめておいた。するとそんな俺と紗奈のやり取りを見ていた瑠花は少し悲しそうな顔になる。


「ハル君と紗奈ちゃんは仲が良さそうで羨ましいな、やっぱり私と一緒にいた時間よりも長いからだよね……」


「心配しなくてもまた一緒になったんだから離れてた時間の分はこれから仲良くなればいいだけだろ」


「そうそう、どう考えても私よりも瑠花の方がその辺りは得意なんだから」


 ちょっと落ち込んだ雰囲気になった瑠花に俺と紗奈はそう声をかけた。今いる三人の中では一番社交的なタイプなので空いてしまった期間の距離なんてすぐに取り戻せるはずだ。

 それに俺と紗奈がここまで良い関係になったのも最近だったことを考えるとなおさらだろう。そもそも紗奈との関係はちょっと前までマイナス方向に進んでいたわけだし。


「そうだよね、ありがとう。元気出てきた」


 俺と紗奈の言葉を聞いて瑠花の表情には笑顔が戻った。その後はしばらく過去の思い出話で盛り上がりながら学内を案内する。

 体育館や理科実験室のようなよく行く場所を中心に案内しつつ、進路指導室や図書室などたまに行く可能性がある場所も紹介した。ひとまずこれで教室移動がある際もそんなに心配しなくて済むだろう。


「ハル君も紗奈ちゃんもありがとう、どこに何があるか全然分からなかったから助かったよ」


「どういたしまして。まあ、俺達も入学してからまだ二ヶ月だから入ったことがない場所は結構多いんだけど」


「そうそう、私なんかいまだにコンピュータ教室の場所がよく分かってないし」


 案内を終えた後、俺達は食堂で昼食をとっていた。最初は普通に教室で昼食をとる予定だったのだが、またクラスメイト達に取り囲まれて瑠花がゆっくり出来ない気がしたのでわざわざ移動をしたのだ。


「さっきから気になってたんだけどハル君と紗奈ちゃんの食べてるお弁当って中身が同じじゃない?」


「ああ、今は私が春人の分も作ってるのよ」


「へー、紗奈ちゃんって料理できたんだ」


「そこにツッコミを入れるのかよ」


「ごめんね、でも出来るイメージが全くなかったから」


 一番最初に触れるのがそことは思わなかったため俺は思わず声をあげた。小学校で調理実習の授業が始まる学年には東京へ転校していた瑠花だが、やはり紗奈にはそういうイメージを持っていたのかもしれない。


「さっきも言った成長してるって言葉の意味がこれでようやく分かったでしょ?」


「うん、よーく分かったよ」


 瑠花は納得したように頷いていた。本当に昔の紗奈と比べて成長をしているので、瑠花は大幅に知識をアップグレードした方が良いだろう。


「私も余裕が出てきたらハル君にお弁当を作ろうかな」


 そんな言葉を瑠花がつぶやいた瞬間、紗奈の顔から一瞬で表情が消え失せる。隣に座っている瑠花はお弁当に視線を落としていたため気付いていなかったが、対面に座っていた俺はその変化に気付いた。だが、すぐにハッとしたような表情になった紗奈はすぐに普段の表情に戻る。


「私が春人にお弁当を作ってるのは料理の練習のためよ。瑠花は料理は出来そうだし、春人に味見を頼まなくても大丈夫だと思うわ」


「あっ、そういう理由だったんだ」


 やはり瑠花は先程の紗奈の変化には気付いていないようでそう返していた。その一方で紗奈の声にはあまり覇気がなかったため、先程のことを気にしているのかもしれない。

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