第33話 逆にハル君と紗奈ちゃんは昔のイメージと全然変わってないね
だが俺は目の前に立つ女性を見ても一体誰なのか全く分からない。こんな知り合いなんていたっけと思い出そうとするも、マジで全く心当たりがなかった。
「春人、何してるのよ……って、その子は誰?」
「ひょっとして紗奈ちゃん?」
どうやら紗奈のことを知っているらしい。紗奈も最初はポカンとした表情を浮かべていたが、すぐに驚いたような表情で口を開く。
「あんたってまさかだけど瑠花?」
「良かった、覚えててくれたんだ」
「えっ、瑠花ってもしかしてあの瑠花?」
「うん、ハル君もやっと思い出してくれたみたいだね」
瑠花はそう言って微笑んだ。久遠瑠花は元々近所に住んでいて俺や紗奈と幼稚園や小学校が一緒だった、もう一人の幼馴染だ。
ただし、小学三年生の時に親の転勤の都合で東京に引っ越してしまい、その頃はスマホなんてものも持っていなかったため連絡を取る手段もなくそれっきりになっていた。
だから五年以上は会っていなかった計算になる。外見もかなり変わっていたため気づけなかったのは正直仕方がないと思う。ひとまず俺達は用事を済ませてから本屋を出て外で話し始める。
「東京に行ったはずのあんたが何で倉敷にいるのよ、もしかして里帰り的なあれ?」
「ううん、ちょっと前に引っ越してこっちに戻ってきたんだ」
「ちなみに転校先は決まってるのか?」
「えっと、確か星稜高校って名前だったはず。一応六月頭に転校する予定だよ」
瑠花が口にした名前はうちの高校だった。なるほど、うちの高校に転校してくると噂になっていた転校先の正体は瑠花だったらしい。
「ちなみに私と春人もそこの高校よ」
「えっ、凄い偶然でびっくり。また昔みたいに三人で過ごせるね」
「だな、小学生の時以来だから楽しみだ」
瑠花は嬉しそうな表情を浮かべていたが何故か紗奈からは警戒心が感じられた。恐らく瑠花は気づいていないと思うが、長年付き合いのある俺にはよく分かる。しかし、何故そんなふうになっているのかに関しては分からなかった。
「それにしても瑠花ってめちゃくちゃ変わったよな、最初はマジで誰か分からなかった」
「まあ、最後にハル君と会ったのは小学三年生の冬が最後だから仕方がない気はするな」
俺の中にあった瑠花のイメージはおかっぱで小柄な女の子だったため、百六十五センチくらいありそうな長身で黒髪ロングな今の姿は完全に過去のイメージとは違う。今の瑠花はまるでどこかのお嬢様みたいな外見だ。
「逆にハル君と紗奈ちゃんは昔のイメージと全然変わってないね」
「確かに俺や紗奈の場合は昔のまま順当に成長した感じだもんな」
「瑠花が変わりすぎなのよ」
久々の再会ということで俺達はしばらく話し込み、それから瑠花とは別れた。俺は久々の再会で普通に嬉しかったのだが紗奈はどこか浮かない表情を浮かべている。
「さっきからちょっとテンションが低い気がするんだけど、どうしたんだ?」
「テスト終わりなのと驚きのダブルパンチで普通に疲れてるだけよ」
「ああ、なるほど。確かにテスト中は紗奈も頑張ってたもんな」
俺以上に気を張り詰めていたので疲れているのは間違いないだろう。テンションが低い理由は他にもありそうな気がしたが、あえてそれ以上追求はしなかった。多分聞いても教えてくれるとは思えないし。
「でも瑠花が戻ってくるなんて完全に予想外だったよな、もう二度と会わない可能性も普通に高いと思ってたし」
「そうね、私も瑠花がこっちに戻ってくるとは思わなかったわ……余裕だけはなくさないことって言葉はそういう意味だったのね」
紗奈の言葉の後半は声が小さ過ぎて聞こえなかったが、答えが分かって納得したような表情を浮かべていた。ひとまず六月から転校してくるということはもうすぐだ。




