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第3話 私のこと嫌いになったりしない?

 切羽詰まった紗奈の両親から俺あてに電話がかかってきたのは夜になってからのことだった。紗奈が俺の名前を呼びながら激しく錯乱しているらしく手がつけられそうにないため今すぐ来て欲しいと言われたのだ。

 事情はよく分からないがとりあえず俺は大急ぎで外出の準備をしてそのまま母親の運転する車に乗って病院へと向かう。すると病室の中には目が真っ赤に腫れて青白い表情を浮かべた紗奈がいた。紗奈は俺の姿を見るやいなや号泣し始め、両親がいる前だというのに思いっきり抱きついてくる。


「お願い春人、私を見捨てないで!?」


「お、おい。一体どうしたんだよ?」


「もっと素直な女の子になるから」


「どうしたんだよ急に?」


「一方的に春人に甘えて調子にばかり乗ってた私が全部悪いの」


 表情は虚ろで言っていることもかなり支離滅裂だったが、流石にこんな明らかに普通ではない状態の紗奈を放置するわけにはいかない。


「大丈夫だ、俺は紗奈を見捨てたりはしないから」


「本当……?」


「ああ、だから落ち着け」


「私のこと嫌いになったりしない?」


「世界で一人しかいない大切な幼馴染を嫌いになんかなるわけないだろ」


「嘘じゃないわよね?」


「神様に誓って嘘じゃないから安心してくれ」


 目の前で泣きじゃくっている紗奈の姿はあまりにも弱々しく、まるで小さな子供のようだった。普段は涙なんか絶対に流さないタイプの紗奈が号泣した上にここまで憔悴するって、一体何があったんだよ。

 しばらくして紗奈が落ち着いて再び眠った後、俺は彼女の両親に事情を尋ねたが二人も全く分からないようだった。目覚めた途端、急に泣きながら錯乱し始めたらしい。結局はっきりとした理由は分からなかったため、俺は不完全燃焼でモヤモヤした気持ちを抱えたまま病室を出る。


「病院の先生は何か精神的な理由が関係してるかもって言ってたけど、それも正直よく分からないんだよな」


 アウトレットで紗奈が意識を失ったのも貧血が原因で精神的なショックなどの理由ではなかった。それに急に取り乱し始めるまでは意識を失っていたはずだ。だから突然あんなふうになった理由がやはり全く分からない。


「……もしかして意識を失ってる時に何か怖い夢でも見たのかな?」


 もはやそんな馬鹿な理由しか思いつかなかった。もしその仮定が正しいとして悪夢を見てああなったのだとしたら、高飛車で負けん気が強い紗奈をあそこまでぼろぼろに弱らせた夢の内容が非常に気になってしまう。

 凄惨な内容には違いないがちょっと想像出来ない。そんなことを考えながら俺は母親の待つ車へと戻る。すると母さんは心配そうな表情を浮かべて話しかけてきた。


「紗奈ちゃんは大丈夫だったの……?」


「あれは大丈夫とは言えない気がする」


「えっ、一体どういうこと?」


 俺は先程見た紗奈の様子を母さんに説明し始める。すると母さんは相変わらず心配そうな表情を浮かべつつも、よく分からないと言いたげな顔をしていた。


「あの紗奈ちゃんがそんなに取り乱すなんてちょっと信じられないんだけど、一体どうしたのかしら?」


「俺も実際にさっきの紗奈の様子を見てなかったら多分今の母さんみたいに信じられなかったと思う。紗奈のお父さんとお母さんも、病院の先生もああなった理由は分からなかったみたいだし」


 母さんは紗奈についても俺の幼馴染ということで子供の頃から見てきており、どんな人間かについてはよく知っているはずなので、信じられないと言いたげな表情になる気持ちについてもよく分かる。

 ひとまず紗奈は様子がおかしかったこともあり、この土日は念のために入院するそうだ。今の弱々しい感じのままだと調子が狂うので早くいつもの紗奈に戻って欲しい。

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