第21話 へー、私を見て興奮しそうなんだ
二人でシャワーを浴び終わったタイミングで浴槽の壁に設置されていた浴室リモコンからお風呂が湧きましたという音声が流れてきた。
「あっ、ちょうどいいタイミングでお風呂が沸いたみたいね」
「いつの間にお風呂なんか沸かしてたんだよ? 特にリモコンなんて操作してなかったような気がするんだけど」
「最近はそこのリモコンじゃなくてスマホのアプリからでもお風呂を沸かせられるのよ」
なるほど、確かに最近は俺達が子供だった頃とは違ってそういう家電とかもかなり増えてきたもんな。ちょうど浴槽も蓋で閉じられていたので全く気が付かなかった。ということは紗奈はこのままお風呂に入ろうとしているのかもしれない。
「じゃあ早速お風呂に入りましょうか」
「いやいや、流石にこのサイズの浴槽だと二人はどう考えても狭くないか?」
「詰めたら多分二人でも大丈夫よ。ほらっ、早く入りましょう」
「あっ、おい」
紗奈は俺の手を引くとそのまま浴槽の中に入っていく。そのため俺は紗奈の行動に流されるがまま後に続いた。やはり予想していた通り二人で入ると明らかに狭かったため浴槽の中はかなり窮屈な状態だ。
「あんたと一緒にお風呂に入るなんていつぶりかしら」
「それも小学校低学年くらいが最後だった気がする」
「幼馴染と裸の付き合いをするのは普通なんだから今後はもっとたくさん付き合いなさいよね」
そんなことを口にする紗奈に対し首を縦に振って共感する俺だったが、内心ではやはり今の状況はおかしいのではないかと再び思い始めていた。
先程まではちょっとおかしなテンションになっていたのと紗奈があまりにも堂々としていたため信じてしまったが、冷静になって考えると色々とおかしい気しかしない。そこまで考えると猛烈に恥ずかしくなってきた。
「私の体も昔より大人っぽくなったでしょ」
「ああ」
「小学生の頃とは大違いと思わない?」
「そうだな」
「……ちょっと、返事が適当過ぎないかしら?」
俺の適当な相槌が不満だったらしい紗奈は抗議の声をあげてきたが正直それどころではない。いくら幼馴染とは言え目の前に全裸の美少女がいたらドキドキしないわけがないのだ。これが百戦錬磨のモテ男ならこうはならないと思うが、俺はそうではない。
むしろそれとは真逆なモテない童貞男子だ。だから紗奈の体には何とか視線を合わせないようにしていたのだが、どうやらその行動が良くなかったらしい。
なんと紗奈は立ち上がると俺に迫ってきた。顔の目の前に胸が迫ってきたせいで俺の心拍数は間違いなく右肩上がりだろう。
「さっきから目すら合わせてくれないけど一体どうしたのよ?」
「いや、あれがこれでそれなだけだから……」
「……もしかして私と一緒にお風呂に入るのは嫌だった?」
俺が支離滅裂な言葉を口にしていると紗奈は突然悲しそうな表情になってそう言葉を漏らした。そんな顔をされては流石に嫌なんて言えるはずがない。
「恥ずかしかっただけで全然嫌ではないぞ」
「本当に、嘘じゃないわよね?」
「ああ、ちょっと興奮しそうで紗奈を直視できないだけだ……あっ」
俺はついつい余計なことまで喋ってしまった。すると何故か紗奈は顔を真っ赤に染めながらぼそっと呟く。
「へー、私を見て興奮しそうなんだ」
さっきまでは自然体でいつも通りに振舞っていた紗奈が急にしおらしくなってしまう。お互いに無言になってしたい気まずい空気が流れ始めたためお風呂から出ることにした。ひとまず雨に濡れて冷えた体を温めるという目的は達成出来たので良しだろう。




