第12話 そっか、確かに二人の邪魔をするのもよくないよね
紗奈と秋夜が謎に意気投合した後、俺達は部屋に戻る。ちなみにもう一方の部屋に戻りにくくなった秋夜はこちらにやってきた。
一応大人しくしていたが、また誰かが幼馴染の話題を出すと暴走しかねないため要注意だろう。いや、普通に考えたらオタクだけのグループならまだしも普通のクラスメイトもいる中で幼馴染について議論するようなシチュエーションになるとは到底思えない。
ということは先程の幼馴染は勝ちヒロインか負けヒロインか論争の発端は絶対秋夜な気がする。俺の前で呑気にアニソンを歌っている秋夜には目を光らせておいた方が良いな。
「……なあ、さっきからずっと思ってたんだがちょっと近くないか?」
「そうかしら? 確かに人数の関係で多少詰めてる気はするけど」
「いやいや、多少ってレベルを越えてるだろ」
体は完全に密着しており後少しで顔同士がくっつきそうな距離感だった。だが、紗奈は全くおかしいと思っている様子すらない。言っても無駄だと判断した俺は体を少し横にスライドさせたわけだが、紗奈もその動きに合わせるように移動をしてきた。
「だから何で一緒に移動してくるんだ」
「スペースは限られてるんだから仕方なくやってるだけよ、それとも春人は嫌だったかしら? それならすぐに辞めるけど」
「……別に嫌ではないけどさ」
紗奈はあの日変わって以降、俺が本気で嫌がっているかそうではないの見極めがめちゃくちゃ上手くなったと思う。もし俺が少しでも嫌がるそぶりを見せれば引くようになったのだ。
つまり今の俺は紗奈から見て本気で嫌がってはないと判断されたのだろう。実際に恥ずかしさこそあるが嫌ではなかった。
紗奈のような美少女から密着されて嫌がる男などまずいないのではないだろうか。そんなことを思っていると俺と紗奈の様子に気付いた秋夜がまだ曲の最中だというのにマイクを通していじってくる。
「おいおい、春人と伊吹さんは相変わらず見せつけてくれるな。羨ましいぞこの野郎」
「周りから誤解されそうなことを大声で言うのは今すぐ辞めろ、お前は歌うのに集中しとけばいいから」
「私はただ他のみんなのことを考えてスペースを作るために詰めてるだけよ」
慌てる俺に対して紗奈は冷静だった。だから絶対にそんなわけがないのだが本当に紗奈が周りのことを考えて密着しているのではないかとすら思えてくる。
そんな俺達の様子を室内にいたクラスメイトはニヤニヤしながら見てきていた。うん、とりあえず秋夜のやつは後でぶん殴ることにしよう。
その後昼食などを挟みながら歌い続け、あっという間にお開きの時間になった。受付の近くで集金係のクラスメイトが精算を終わらせるのを待っていると進藤さんが話しかけてくる。
「この後、まだ時間のあるメンバーで二次会をやろうと思うんだけど紗奈ちゃんと黒崎君もどう?」
「進藤さん、それはダメだって。後は若い二人に任せないと」
「おい、秋夜は急に何を言い出すんだよ。そもそも若い二人も何もお前は同い年だろ」
「そっか、確かに二人の邪魔をするのもよくないよね」
何と進藤さんまで秋夜の悪ノリに付き合い始めてしまった。だから俺は思わずツッコミを入れる。
「進藤さんもこんなやつに付き合わなくていいから」
「それなら今日は夜景が綺麗なレストランで食事をしたいわ」
「やっぱりそこでプロポーズをする流れかな?」
「紗奈も乗ってくるなよ。てか、何で天崎までさらっと参戦してくるんだ」
紗奈の後に言葉を挟んできたのはクラスメイトの天崎颯だった。天崎も進藤さんと同じくクラスの中心的人物だ。ちなみに今回のカラオケを企画したのも天崎だったりする。
ガワだけの秋夜とは違い天崎は中身もイケメンでザ陽キャという感じの人間だ。だが普通に良いやつなので隠キャ寄りの俺でもあまり苦手意識はない。そんなやり取りをしたが最終的に俺と紗奈は二次会までしっかりと参加した。




