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第1話 いやいや、皆んなからMって思われてるのは紗奈のせいだからな

 美少女な幼馴染がいると聞くと羨ましいと思う人はそれなりにいると思う。だが現実はそんな良いものではない。それが実際に美少女な幼馴染がいる俺の感想だ。


「ちょっと、春人(はると)。私はカフェラテを買って欲しいって言ったわよね? 何でコーヒー牛乳なのよ」


「ごめん、でも売り切れてて似たようなのがこれしか無かったんだ」


「カフェラテとコーヒー牛乳は全然違うわよ、もういいわ」


 こんなふうに俺は幼馴染である伊吹紗奈(いぶきさな)から昼休みに購買までパシリにされた挙句、文句を言われているのだから当然だろう。紗奈とは幼稚園から今までずっと同じ学校だが、昔からずっとこんな扱いを受けている。

 たまに優しくもなるが基本的には女王様気質で俺をこき使ってくるため、幼馴染に夢を持てなくなっても仕方がないと思う。ラブコメ漫画のように幼馴染と恋愛をするなんて現実ではあり得ないに違いない。


「相変わらず春人は今日も伊吹さんと仲が良いな」


「さっきのやり取りに仲が良さそうな要素なんてあったか?」


「だって伊吹さんがあんな態度を取ってるのは春人だけだろ、やっぱり幼馴染って良いよな」


 ようやく紗奈から解放された俺に話しかけてきたのは中学時代からの友達である川口秋夜(かわぐちしゅうや)だ。

こいつはクラスの陽キャグループにいそうな整った顔をしているというのに幼馴染萌えという残念な要素が強過ぎて、俺のような地味系男子とつるんでいる。


「そういうなら秋夜が変わってくれてもいいんだぞ」


「いやいや、伊吹さんは俺の幼馴染じゃないからそれは無理だ。あーあ、俺も春人みたいに美少女な幼馴染がいれば毎日がバラ色だったのにな」


 うん、幼馴染というフィルターを通した途端正常な思考が出来なくなるような秋夜に言っても無駄だったわ。もし秋夜が紗奈と幼馴染だったら何を命令されても喜んで言うことを聞くと思う。こいつはそういうやつだ。

 それから昼休みが終わり午後の授業を終えてあっという間に放課後がやってきた。俺は特に部活には入っていないため家に帰るだけなのだが、いつも通り紗奈と一緒に帰らないと行けないため憂鬱だ。

 ちなみに紗奈が一緒に帰っている理由は男避けのためらしい。紗奈の容姿は飛び抜けて整っているため声を掛けようとするものが後を絶たない。つまり俺はそんな奴らを追い払うためのボディーガード扱いされているというわけだ。


「春人、帰るわよ」


「もう少し待ってくれ、まだ日直の日誌を書いてる途中だから」


「日誌なんて適当でいいでしょ、どうせそんなに確認なんてしないんだから」


「適当に書いて怒られるのは俺って分かって言ってるか?」


「春人はMなんだから怒られてもご褒美だから大丈夫よ」


「いやいや、皆んなからMって思われてるのは紗奈のせいだからな」


 紗奈から理不尽な扱いを受けつつも言うことを聞いていたせいで周りからそう思われるようになってしまった。言うまでもなく俺は虐められて悦んだり気持ちよくなったりはしないためMの素質はない。


「私のせいにするなんて春人も随分偉くなったわね、昔はあんなに私に色々と頼りっきりだったのに」


「それはあくまで昔の話だから」


「私的にはあんまり変わってるようには見えないけどね」


 確かに小学生の頃は紗奈に勉強を教えてもらったりなど助けて貰うような場面はかなり多かった。だが高校一年生になった現在は全くそんなことはない。

 むしろ容姿とコミュニケーション能力以外のスペックは俺の方が紗奈よりもだいぶ高いレベルにある。だからむしろ俺が紗奈を助ける場面の方が多いほどだ。

 だというのに紗奈の中では俺のイメージが昔のまま全くアップデートされていない。それも間違いなく俺に対して理不尽な扱いをしてくる大きな要因と言えるだろう。

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