星のない宇宙で⑦
夜の居住区。
<スペースインパルス>の居住区と格納庫は約1/8にミクロ化されている。
ヨキも同室のマーチンもよく眠っている。
≪ヨキ!ヨキ!≫
「がああああああ・・・すぴー・・・があああ・・・」
謎の声はいびきにかき消される。
≪起きろ!危険が迫っている!≫
「むにゃむにゃ・・だめだよ麗子ちゃん・・おいら未成年だもん・・・ああっ。そんなにケーキ食べれないって」どんな夢を見ているのか?
ケーキに反応してマーチンが飛び起きるが、まわりを見渡し、また寝る。ヨキは起きる気配ない。
≪・・・・≫
医務室でQはひとり悩んでいた。
「明2号か・・明のクローン。睡眠教育を施せばまともな人間になれるかもしれない。もちろん教育次第で戦闘マシンにも出来る。・・いや、それよりもこれは神の与えたチャンスかもしれない・・精神移植で弓月明の精神を明2号に移せば彼は蘇るかもしれない・・だが・・それでは連中と同じだ」
良心の呵責に悩まされる。
「!」
2号が目をあける。身体を起こして座る。
「すまん。起こしてしまったか?」
2号の目が輝く。
再び居住区。女子部屋。
ピンニョも同室の美理も麗子もぐっすり眠っている。寝息が聞こえる。
≪ピンニョ!ピンニョ!≫
”巣”でピンニョは丸まって熟睡中。
≪危険が迫っている≫
ピンニョの起きる気配はない。
≪すまん。お前の身体を借りる!≫
ピンニョは目を開ける。暗闇でその目は猫のように光る。
次の瞬間。ドガアアアーーーン!
ものすごい音と震動で美理たちは飛び起きる。
艦内に警報が鳴り響く。
艦長室の流は着替えながら枕元のマイクで問う。メインブリッジに繋がっている。
「何があった!?」
当番のアッシュが答える。
『医務室で小規模の爆発。強いESP反応が検出されています』
「ESPだと?」
ボッケンが一番に医務室に到着。
すでに火は自動低温ガスで消火されている。爆発で吹き飛んだ破片が散らばる。
入院患者が明以外いなかったのは幸いだった。
「先生!」
倒れているQを見つけ、起こす。外傷はない。気を失っているだけ。
「兄きは?・・!!」
殺気を感じてボッケンはQを咥えてぱっとその場を飛び退く。
ゆらりと立つ影。明の顔をした坊主頭の男。
「兄き?いや2号?・・でもない?・・お前は誰だ!」
男は無言でゆっくりと徘徊する。
ガルム陸戦隊長やリックらが到着する。「何だ?こいつ」
続いてナトウと麗子らが到着。心配で美理もついて来た。非常時はブリッジに集まらねばならない、職務放棄だ。後で怒られるだろう。現場の状況に驚いて声が出ない。
ナトウらはボッケンからQを託される。「先生!」
美理は明を探す。「!」 明が隣の部屋の床に倒れているのを見つける。
「兄き!」ボッケンが駆け寄る。美理が続く。
明を起こす。破片で額を切っているだけのようだ。
「そっちの方がよかったか」
美理は声の主を見る。「!」
男の髪が一瞬で生える。「まあこれでいいか」
ガルムらは銃を構える。「動くな!止まれ!」
男は歩き回るのを止めない。
「パラライザーを」そうガルムが言うのと同時だった。衝撃波が彼らを襲った。
ガルム達は吹き飛ばされる。ボッケンはとっさに美理を庇う。
衝撃波が止む。美理の耳に笑い声が聞こえてくる。
「くくくくく・・・」
ボッケンは刀を咥える。刃が伸びる。
「・・・この身体、気に入った」
美理は勇気を振り絞って問う。「あなたは誰なの!?」
男はちらとこちらを見る。次の瞬間、目の前に迫る。
ボッケンは刀を男の右腕にぴたりと当てる。「それ以上近づくな」
男は無表情のまま、ためらいなく自分の腕を動かす。
「!」刃が腕を通過する。
ボッケンの刀は皮膚や筋肉を通過し斬れないが骨は斬れる。肉を切らずに骨を断つ。
「あれ?へーこうなるんだ」骨が斬れているはずだが痛がる様子はない。
「ああっ」麗子は手当てしようと動く。
ボッケンが(危険だからと)止める。「それよりも今のうちに兄きを!」
美理と麗子はうなずき、ふたりで明を引きずって運ぶ。
男は彼女らに左手を伸ばそうとするが、ボッケンが割って入る。
その時声がする。聞き覚えのある澄んだ声。
「こいつは痛みを感じない。持ち主は相当痛いだろうがな」
声の方を見る。ピンニョ!
「違う。ピンニョじゃない・・」
ボッケンの勘は半分当たっていた。ピンニョの姿をした者が喋る。
「こいつは他次元生命体じゃ」