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決戦!旗艦アフロディーテ!⑥

 アンドロメダ銀河中心のブラックホール。

 その周囲に無数の人工物が浮かぶ。中心部に光が現れる。

 銀河跳躍砲とは巨大ブラックホールの無限のエネルギーを集束して空間を歪め兵器として撃ち出すシステムである。銀河間を越える射程距離を持つ。

 光はどんどん明るく大きくなる。

 突然現れる宇宙船。スペースインパルスに似た大型宇宙戦艦6隻。

 ブリッジで艦長らしき軍人が命令する。

「スーパーノヴァボンバー発射!」

 放たれる24門の光。

 それは銀河跳躍砲のコントロール基地でもある惑星ヤルーマを破壊する。


 量産型<スペースインパルス2>はトスーゴ第三艦隊と銀河連合艦隊の戦いの場にも現れる。同じく6隻。その一つにラプトン副大統領も乗艦していた。

 ジグから銀河跳躍砲の情報を入手した銀河連合は銀河系中心のブラックホール周囲でそのシステムの建造に着手した。砲自体は作れなかったが250万光年を越えるワープゲートとして使えるまでに漕ぎ着けた。そして完成したばかりのインパルス2を使って敵に奇襲をかけたのだ。

 <スペースインパルス2>の全長は666m。特筆すべきは無人でも稼働する事とスーパーノヴァボンバーを4基搭載している事。6隻のうち有人は2隻だけであとの4隻は無人艦だ。

 ラプトンが得意気に命令する。

「スーパーノヴァボンバー発射!」


 形勢逆転。インパルス級の超弩級戦艦は元々一騎当千いや一隻当千の戦力だ。その改良型であるインパルス2は破竹の勢いで敵艦を撃破していく。それでも敵の数は多い。

 多くの命が失われていく。

 旗艦<アフロディーテ>ブリッジ。

「はあはあはあ・・」

 戦いの末、明は親衛隊をすべて倒す。

 明はアリアに銃を突きつける。

「お前たちの負けだ。降伏しろ!」

「トスーゴに敗北の文字はない」

 アリアの指がかすかに動いた。

 <アフロディーテ>から無数のビームが発射される。

 インパルスに向けてではない。それらは赤色巨星に吸い込まれて行った。

 膨らみ切った風船の様な爆発寸前の星。

 そしてそれは弾けた。

「!」

「測定しきれないニュートリノを検出!」

「艦首逆噴射!敵艦より離れる!全艦へ!直ちにこの宙域より脱出しろ!」

 艦長席で流は操縦する。

 ズズズズズ・・・ インパルスは<アフロディーテ>より離れる。

 流は操縦桿を倒す。最大戦速で隣の白色矮星を目指す。

 赤色巨星は表面が波打ち、不規則に明るさを変える。

『流艦長!何を勝手に命令している?勝利は目前なのだぞ』ラプトンよりクレーム。

「超新星爆発です。副大統領」レオパルド将軍が説明する。「逃げないと巻き込まれる」

「!」ラプトンは血相を変える。「撤収ーっ!急げえ!」

 敵味方とも我先にワープして行く。

 <スペースコンドル>も近くの艦隊と共に避難する。

 インパルスは白色矮星の陰に退避する。遠く離れたら明がテレポートで帰って来れない。

 赤色巨星はさらに明るさを増す。赤から黄、そして白へ。ひかりかがやく。

 明はアリアと戦わずテレポートで戻ろうとする。

 その明の脚をアリアがつかむ。 

「逃がさない・・あなたはここで死ぬのよ」


 超新星の衝撃波が<アフロディーテ>を襲う。

 科学の粋を集めたであろう巨大な船も自然の摂理の前ではあまりにも無力だ。

 城は崩れ去り、砲塔はへしゃげ、船体は焼かれ原子に分解される。

 ひかりの中・・アリアの手が離れる。 

「リイン・・・」

 何を見たのかアリアの顔は満足げだ。

 ひかりがアリアを包む。 

 明はテレポートで逃れる。

 爆発する<アフロディーテ>。

 明は<スペースインパルス>のメインブリッジに還る。

 そのインパルスにもひかりが来る。

 白色矮星が盾となるが超新星爆発はその白色矮星をも動かす。衝突寸前、

「ワープ!」

 インパルスは数光年先に現れる。船体はもうボロボロ。

 メインブリッジ。

 操縦桿を握る流は何も訊かない。

 明はひとりで還った。残念だがそれが答えだ。 

「はあはあはあ・・」

 息の荒い明。ぽろぽろと涙が落ちる。

 誰も声をかけられない。


 指揮官を失ったトスーゴ第三艦隊は総崩れとなる。 

 量産型<スペースインパルス2>は追撃戦を続ける。

 アンドロメダM31の兵士の反乱もあり、トスーゴ第三艦隊は敗れ去った――


 数え切れぬ命が失われていった。

 <スペースインパルス>艦内。 

 艦内通路にはおびただしい血痕。

 ミクロ化シティは閉鎖され立ち入り禁止。

 クルーは疲れ切っていた。 

 負傷者を手当てするQ。

 泣きながらサライの包帯を巻く麗子。 

 ベッドに横たわるロイ。

 薄暗い部屋で半透明の水槽のような人工子宮に触れるグレイ。

 グレイの子供は生きていた。妊娠確認後ショーンは胎児を人工子宮に移していた。

 奇跡的に回収できたショーンの認識票を握りしめる。 

 ブリッジでうたた寝するアラン。

 弟と親友を失い泣き疲れたクリス。

 数多くの遺体が並ぶ霊安室。

 パネルに映るラプトン副大統領をぼんやり見るキークとイグニス。

 リックの死にヘルメットを落とすリュウ。無言のロミ。

 ぐずる望をあやすシャーロット。

 疲れて眠るヨキ。 

 ひたすら働くマーチン。何かをしていないと落ち着かない。

 艦長室。無言で美理の写真をみる流。

 明は艦内をさまようように歩く。どこにも美理とピンニョはいない。

 医務室へ。

 眠るボッケンをぼーっと見る。

 窓際に移動し外の星々を眺める。

「啓作が死んだ時、俺は自分の無力を悔やんだ。強くなりたかったんだ。

 もう誰も失いたくなかった。なのに・・・。

 俺はバカだ。大バカだ。

 君がいなくなって初めて気がつくなんて・・こんなに・・好きだなんて・・

 美理!必ず助け出す。

 ・・・戦ってやる!たとえ相手が神だろうと、悪魔だろうと!」 


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