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星のない宇宙で②

 M31アンドロメダ銀河。(トスーゴや銀河連合の呼び名は違うが、わかりやすいように地球語で記載する)

 地球から約250万光年の彼方にある楕円型銀河である。銀河系より大きい。

 核恒星系にある惑星ヤルーマはトスーゴ第三艦隊の本拠地である。

 巨大な旗艦<アフロディーテ>の艦橋で司令官アリアは部下の報告を受けていた。

 長いベルベットの髪にスレンダーな身体。エスザレーヌとは違うタイプの美女だ。

「銀河跳躍砲は現在修復中です」

「いつ使えるようになる?」

 アリアが尋ねる。彼女は妹リインの死に逆上して調整中の砲を使ってしまい、現在使用不能だ。反省しているようには見えない。

「正確にはまだ答えられませんが、100ガイス(約110日)はかかるかと」

「急がせよ。それより、アルゴン。あの船に我らの血をひくものがいるというのは本当なのだな」

 アルゴンはエスパー戦団副隊長でリインの副官だったトカゲ系の異星人だ。

「リイン様の報告に間違いはございません。エレーヌ様の娘だけでなくオズマ様の御子息もおられるようです」

「なぜリインは彼女たちを救出しなかったのか?」

「リイン様は決闘に勝ったら渡してもらうと彼らと約束しておられました」

「妹はなぜ負けた?敵にはあれより強いエスパーがいるのか?」

「リイン様の力は別格でした。星を動かせたのはリイン様だけでした。・・リイン様は奴に勝っていました。すべての面で圧倒していました。ただ戦略を間違われた。月を落として力を使い果たしてしまわれた。しかしあれでとどめをさせるはずでした。なぜ奴が逃れる事ができたのかわかりません。それに・・」

「それに、何だ?」

「いえ・・別に」

「申せ」

「・・リイン様は敵を愛してしまわれた。なので殺せなかった」

「馬鹿な!いい加減な事を言うな!」


 流啓三は特別通信室を出る。リモート参加だった。

 銀河系外縁にある二連星。二つの水惑星は高速で自転しており、巨大な水が凍らず蒸発せず周囲を周っている。明がいたら「(回転型)そうめん流し」と表現しただろう。その滝(水流)の中のドックで<スペースインパルス>は補修と補給を受けていた。

 流は医務室に立ち寄る。

 弓月明はICU(集中治療室)のベッドに横たわったまま。目覚める気配はない。一言で言えば”廃人”に等しかった。

 マリアンヌ看護師長と目が合う。太った?と訊けば殴られるから訊かない。バツイチで息子がいるらしいが医療班長のQも知らない。

 マリアンヌは首を横に振る。右を指差す。

 そのカーテンの向こうでは流美理が銀河連合の医師団の検査を受けている。

 トスーゴと地球人の混血である美理と望は貴重なサンプルだ。

 第二格納庫の<フロンティア号>も元々はトスーゴの船と判明し(啓作と母エレーヌが乗って来た)徹底的に調査されている。

 ナースステーションで山岡麗子とナトウは美理が映るモニターに見入る。

 麗子は美理の親友、容姿端麗だけでなく頭も切れる。言い寄る男は多いが本人は仕事一筋、実はまだ失恋のショックを引きずっている。ナトウは新人研修医、インド人だ。麗子に気がある。

 シャーロット=流はぐずる望をあやしている。

 未亡人のシャーロットは凄腕のワーププログラマー。望は啓作との間の子供。つまり血は繋がらないが流啓三の孫だ。

 流に気づいた麗子たちは立ち上がり敬礼。流は必要ないとそれを制止する。

「じいじ」望は流に近づき飛行機のおもちゃを渡す。

「こ、これは!」スペースコンドル!軍事機密が漏れている?

「これマーチンが作ったの」シャーロットが説明。「ここ押すとロボットに変形するの」

 プチッ。ボタン一つでトランスフォーム。

「すごいな」

「実物も変形するの?」しません。

「流、来ていたのか」

 医療班チーフのドクターQ。凄腕の外科医で、流の親友であり、明の戸籍上義理の父親でもある。

「大丈夫だ。ふたりに変な真似は絶対にさせない」

 Qはそう言うとカーテンを開けて中へ入る。忙しい。

 流は軽く礼をして医務室を後にする。シャーロットに「君もメインブリッジに上がってくれ」

「わかりました。望を預けたら上がります」

 流は望に手を振り、メインブリッジへ向かう。

 そのメインブリッジは重い空気に包まれていた。


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