死闘はてなく⑤
メインブリッジに敵が侵攻の情報はガルムたちにも伝えられた。
「くそお。なんとかしてここを突破できんのか」
明は腕時計端末で艦内図を投影する。敵の位置も投影される。
「現在地はここ。そこのエアロックから艦外に出て、第2サブブリッジの手前から中に入れば敵の背後をつける」
「だが誰が行く?大勢で行ったら奇襲にならない」
「俺が行きます」明は非常用ヘルメットを被る。
「わかった。頼む。部下2名を付ける。第2サブ前の開閉コードは4126だ」
明とパワードスーツ2体はエアロックに入る。
減圧。艦外へ。
目の前に宇宙が広がる。美しいガス雲。星の最後の姿。
感動している場合ではない。明は装甲板を蹴る。
上へ。磁力シューズのおかげで重力下のように走れる。垂直に壁を走る。
パワードスーツはバーニャを噴射。明より先に目標ポイントに近づく。
爆発。流れ弾だ。パワードスーツ2体共巻き込まれる。
明は砲火の中を駆ける。
「何やってるの?この人」
美理は艦内レーダーで艦外を走る乗員を発見。明みたいな無茶をする人と思ったが、それが明本人だとは思いもしなかった。だってさっきまで寝たきりだったんだもの。
メインブリッジにレオン数頭がなだれ込む。仲間の屍を踏み台にしてネバネバを免れる。
陸戦隊が応戦するが、レオンはその攻撃をすり抜けて奥へ。
その目をピンニョが羽根手裏剣で潰す。グレイが止めをさす。
音速の獣たちは艦長席にも迫る。
流艦長は立ち上がりビームブレードを抜く。
一閃。レオン二頭の首が飛ぶ。
次の瞬間、別のレオンが流の左腕に噛みつく。
「!・・・」クリスの声にならない悲鳴。
流は噛まれた腕でレオンを床に叩きつける。左腕は超金属製の義手だった。
「アラン!艦の指揮を任せる」
そう言うと流は拳銃とビームブレードで陸戦隊に加勢する。
グレイとピンニョとアッシュも戦闘に参加する。
美理は何もできない。怯えるだけ。それでも自分の任務を励行する。
艦の外。明は垂直の壁を駆け上がる。
明を発見した敵戦闘機<メギド>が急旋回、狙いを定める。
機銃掃射が来る。走る明の後ろに次々と命中、どんどん近づく。
ビームバルカンが命中し<メギド>は爆発。
上空をリュウの<スペースコンドル>が飛び去る。
明は走りながら左腕を上げて合図する。
なんとか無事に目標ポイントに到着。コードを入力する。
エアロックの中へ。
警報が鳴る。止めるの忘れた。敵にバレバレだ。
艦内通路の扉が開く。
敵兵がエアロックの中を覗く。誰もいない。機械の誤作動と思わせた。
明は天井に張り付いていた。そっと敵情視察。
メインブリッジ方向の敵は近くにいない。反対側のガルムらの方向にはパワードスーツが10体にライオンもどきが5頭、兵士が20人程。
素早く飛び降りエアロック内の敵兵を手刀で倒す。扉の陰に隠れて息を整える。銃を抜く。
GO! 明は通路に飛び出す。
最初の銃撃でレオン3頭を倒す。
銃声を合図にガルムたちも攻撃を開始する。はさみ撃ちに成功する。
機関室。
サムソンは二丁のビームマシンガンを撃ちまくる。
ボッケンは弾を避けながら走る。壁を蹴り、反撃に転じる。
銃を切断。そのまま走り去る。サムソンのキックは空振り。
「ふん」サムソンは斬られた銃一丁を捨てる。
「やはりこいつじゃないと無理か」
大剣を背中の腕から左右の腕に持ち替え、迫るボッケンに斬りかかる。
ボッケンは難なくかわす。大剣が床に突き刺さる。
サムソンは大剣を引き抜く。
ボッケンは攻撃せず待っている。フェアじゃないからではなく隙がないからだ。背中の腕でビームマシンガンが狙っている。
そのボッケンを狙う敵兵は電撃に倒れる。仕掛けたのはマーチンだ。
「!」マーチンがそれに気づく。「ちょっと待て」
エンジンルームとの隔壁に何かが仕掛けられている。光学迷彩で肉眼では見えない。
「爆弾だ!」
「よく気づいたな。俺の心臓が止まれば爆発する」サムソンの声。
「!」ヨキが透視で確認、「こんなもの・・」テレポートさせようとする。
「移動させる気なら止めておけ。ESPを感知したら爆発する」
ボッケンと戦っている最中なのに全く息が切れていない。
「・・・」ヨキは手が出せない。
「しゃーないな。やってみるか」
マーチンは爆弾に近づき座り込む。バイザーのアンチステルス線で隅々までチェック。
「ふーん、なるほど・・めちゃめんどくさ」ポケットから七つ道具を取り出す。
おそるおそる爆弾に触れる。
何も起きない。
解体作業可能だ。つまりテレポート以外で絶対に防げない自信があるのだろう。
こうなるとマーチンは燃える。メカニックのプライド、だがそれだけではない。
ニコライと約束した。船を託された。
作業中のマーチンをヨキは守る。
ボッケンは戦いにくくなった。爆弾の解除が済むまでサムソンを倒してはいけない。もっともそう簡単に倒せる相手ではない。
明とガルムら陸戦隊は中央作戦室前の敵を全滅させた。
「ありがとう。病み上がりなのによくやってくれた」ガルムが握手してくる。
「すみません。あの(パワードスーツの)二人・・」
「お前が気に病むことはない。よし、次だ」
一行はメインブリッジに向けて歩き出す。
明はいたたまれない気持ちになったが、確かに悔やんでも仕方ない、後につづく。
前方から銃撃が来る。反撃。
ガルムを先頭に敵を次々と倒しながら前へ進む。
そのころ、ミクロ化を解除され破棄された居住ブロックでは。
その扉にびしっと衝撃。扉に亀裂が入る。それは衝撃と共に徐々に広がる。
銀河連合艦隊は白色矮星を一周して元の場所に戻りつつあった。
待機していた遠隔操作艦と合流する。ここではレーダーも遠隔操縦も効く。
しかし<スペースインパルス>の状況は何ら変わっていない。いや悪化している。
早速ワープアウトしてくる敵の大艦隊5000隻。
応戦する銀河連合艦隊。すでにその数は半分近くになっている。
リックは第一砲塔に到着。主任席に座る。前を見据えスイッチを押す。
主砲発射!
いくつもの光の束が敵艦隊を一掃する。
メインブリッジでは銃撃戦が続いていた。
読み通り敵は重火器を使えない。それでも死傷者が続出する。
「ミサイル到達まであと15分」
「やつらここで心中する気か?」
流がグレイがアッシュが銃を撃ち続ける。
怯える美理は祈る。
「早く来て。明くん」
ビシッ
操縦するサライの脇腹に流れ弾が命中する。
明は通路を走る。
疲れていた。何人の敵を殺したのだろう。いつまでこの戦いはつづくのだろう。
何のために誰のために、それさえ忘れて、それでも戦士たちは戦場を駆ける。
問題 : 第2サブブリッジ前の開閉コードは何の番号でしょう?
(ヒント=ポッポー 年配の人しかわからんか・ローカルかも)




