死闘はてなく①
第3章 死闘はてなく
アンドロメダ銀河は地球から約250万光年の彼方にある。
アンドロメダ銀河と銀河系は時速約40万kmで接近しており、40億年後には両者は衝突し20億年かけて合体し新たな巨大銀河を成すと考えられている。
その美しいアンドロメダ銀河の目前で戦いは繰り広げられていた。
銀河連合艦隊は二連白色矮星の近くを航行する。レーダーは使用不能となる。
フォアーロン提督の読みは当たり、敵の攻撃は半減した。しかしこちらも敵を捉える事ができない。今のうちに味方特に<スペースインパルス>の状況改善を図るつもりだ。
スーパーノヴァボンバーの点検を依頼されたマーチンはリモートで艦外作業を行う。
マーチン自身は機関室にいる。簡易ヘルメットによる整備用装甲兵のリモコン作業。コントロール不能にならないのは、有線での操縦だからだ。
作業に没頭するマーチンは脅威が迫りつつあるのを気づかなかった。
サーベル一閃。バリケードを蹴破り、サムソンは機関室に迫る。不敵に笑う。
一方居住区を出たニコライは単身機関室に向かっていた。
ネジの位置まで艦内は知り尽くしている。この機関長兼整備長は敵の裏をかき、敵に遭う事もなく進む。
戦闘機隊ブリーフィングルーム。
「副隊長。<スペースコンドル>発進可能になりました」整備兵が伝える。
「わかった」ロミは立ち上がる。多くの隊員も。
「副隊長、自分も出撃させてください」キークが嘆願する。
「”シンクロ”ではない。撃たれたら死ぬぞ。敵討ちのつもりなら止めとけ」
「いえ、自分は兄の分まで生きます」
「・・わかった。来い」
キークはロミの後につづく。
居住区ミクロ化シティ。丘の上の学校跡。
ガルムは望らを中心に二重の円形の陣を敷く。外の陣は銃火器、内の陣は刀剣中心だ。明とガルムは外、ボッケンとヨキは内にいる。
リック他数名は後方の校舎で狙撃部隊としてライフルを構える。リックの銃は先程より威力のある対艦ライフルだ。殺し屋イエ―が使っていたものと同じと言えば判るだろうか。(*第4巻第5章参照)
丘を登って来る敵の大部隊。反対側からも少数だが敵が迫る。
ラカンはレオンを先行させる。パワードスーツの援護射撃付き。
「撃て!ここを死守するんだ!」
ガルムの命令で一斉射撃。
明はエスパーガン(通常光弾)を連射。陸戦隊員はビームマシンガンを連射。ガルムはビームバズーカで敵の援護射撃を妨害。
明はレオンを次々と倒すが、他の者の弾はなかなか当たらない。
左右に回り込まれ囲みを突破される。
ボッケンが迎撃。向かって来るレオンを次から次に斬る。
だが数が多い。手薄な後ろから襲われる。数名の乗員が犠牲になる。
葵が護身用に持たされていた拳銃を発砲。当たらない。
シャーロットは望が見ないように目を隠す。
ふたりにレオンが迫る。
バチッ! ヨキのESPバリアーに触れ、レオンがのけぞる。
その一瞬を逃さず、ヨキの脳波誘導ブーメランが飛ぶ。
命中。レオンの頭部を破壊する。
「ふう」ヨキがバリアーを解いた瞬間。
緑色のトカゲが望を奪う。エスパー戦団現団長アルゴン。
手よりも先に口が動いていた。ヨキは尻尾に噛みつく。
「ぎゃあー」アルゴンは思わず望を離す。尻尾は弱点だったようだ。
ヨキは噛みついたまま衝撃波を放つ。
アルゴンはヨキを振りほどいて逃げ出す。その視界に明の姿を確認。
「リイン様の仇!」
我を忘れて猛攻をかける。
空間から現れた無数の光の矢が明に向かう。リインも使った技だ。
明は駆けながら次々と撃ち落とす。つづけて本体に向け発砲!
片目を潰す。アルゴンは恨みの言葉を吐きながら姿を消す。光学迷彩!
泣いている望をシャーロットが抱き上げる。
「本番前に余計なESPを使わせやがって」ヨキがぼやく。
敵部隊が丘の上に到着する。ラカンの号令で敵パワードスーツの大群が攻め込む。
「もらった!」リックは引き金を引く。
屋上から放たれたエネルギー弾がラカンを直撃する。
ドン!ガガガガ—ン 大きな爆発が起こるが、ラカンは無傷だ。
「パーソナルバリアー?それもとびきり頑丈な奴?」スコープを覗くリックが悔しがる。
ラカンは屋上に向けビームバズーカを発射。望以外なら重火器を使える。
明がそれを撃ち落とす。空中で爆発。
リックは「サンキュー」別の標的を狙う。
次々と敵パワードスーツを撃ち抜く。
対艦ライフルの前ではパワードスーツの装甲などおもちゃ同然だ。
ラカンは明を睨みつける。明も負けじとがんを飛ばす。
にらみ合いの後、同時に動く。
早撃ちは明の勝ちだが、明の銃弾はラカンのバリアーを貫けない。
それでも二発はピンポイントでラカンの持つ銃の引き金に命中。ビームバズーカを二つとも落とさせる。
明は銃のパワーを上げる。連射性能は落ちるがやむを得ない。チャージ完了。
その時、空から無数の光の矢が降る。先程のアルゴンの仕業だ。姿は見えない。
明は避けつつ連射モードに戻す。連射で光の矢を撃ち落とす。
「(リックの対艦ライフルでも奴は倒せなかった。今の俺じゃ無理か)」
ラカンはビームバズーカを拾い、不敵に笑いながら明を無視して再び歩き出す。
敵部隊が迫る。50人程か。
「3・2・1・目をつぶれ!」ガルムが叫ぶ。
閃光弾炸裂。眩しいだけでなく一時的にレーダーも使えなくなる。
光の中、ヨキはシャーロットたち非戦闘員を連れてテレポートした。ラカンの裏をかく。
対ESPシールド下だが、なんとか居住区出口の近くまで飛べた。さすが準S級。
「走れ~」
ヨキたちは出口に向け走る。
「総員、撤収―!!!」ガルムが叫ぶ。
残った明たちも一斉に駆け出す。丘から離れる。
ボッケンとパワードスーツ隊は負傷兵を背負っての逃走。
ラカンらが我に返る頃、ガルムは持っているスイッチを押す。
ドガアアアアア――――――ン
学校の運動場に仕掛けられた爆弾が爆発。敵兵を飲み込む。
ふもとにたどり着いたガルムがぼそっとつぶやく。
「忍法微塵隠れ」全然違うぞ。
「はあはあはあ・・」肩で息をする明。まだ本調子ではない。
「やった・か?」リックが合流。
ガルムはスーツの拡大スコープで丘の上を見る。「ちっ」舌打ち。
丘は吹っ飛んだが、ラカンは平然としている。レオンや生身の敵兵は全滅したようだが、パワードスーツも数体残っている。
「居住区内に我々と敵以外の生命反応なし」部下が報告。
ガルムは苦渋の決断をする。それは出動時に艦長から受けた命令だった。
「遺憾ながらミクロ化シティを破棄する。総員エリアから退去せよ!」




