流血のアンドロメダ⑥
レオンの群れはボッケンに襲いかかる。
一角獣の角がボッケンめがけて来る。
ボッケンはわずかに身体を沈めて下にかわす。咥えた刀がそのままレオンの顎に当たる。
レオンは急に止まれない。鋭利な刃はそのままレオンの身体を真っ二つに斬り裂く。
次のレオンが来る。鋭い爪を右に避け、刃は首の付け根から背中へぬける。
次は二頭同時だ。ボッケンは身体をくねらせ二頭の間を駆け抜ける。二頭は上下に分断される。
ボッケンは攻撃を避けつつ次々とレオンを斬り裂く。
最高速は機械のレオンの圧勝だが、狭い通路ではそれよりも直感と小回りの方が勝る。
レオンを片付けたボッケンはさっさと先に進む。
「・・つづけー!」リック達も後を追う。
「エネルギー80%、発射!」ロイが引き金を引く。
スーパーノヴァボンバー発射!
その衝撃で接舷した揚陸艦がすべて吹き飛ぶ。
光の束は数え切れぬトスーゴ艦を巻き込みながら飛び去っていく。
ロミの<スペースコンドル>は<ネーガー>を追っていた。
<ネーガー>はインパルスの脇を抜けて荷粒子砲を発射する。
左のスーパーノヴァボンバー発射孔に命中。
「ちっ」ロミは舌打ちする。
ビームバルカンが<ネーガー>を撃ち抜く。爆発。
スーパーノヴァボンバー発射孔にヒビが入る。発射に支障はないと思われるが、点検した方がいいだろう。
「ミザールまだ復帰していない。白兵戦のせい?・・・」
メインブリッジ。
「トスーゴ兵は居住区、エンジン、ブリッジ、メインコンピューターへ向っています」
クリスの報告にロイは
「なぜ、こうも艦内の事を知って・・(はっ)リインか!」
艦首方面通路からボッケンが駆ける。リック達がつづく。
その行く手から光。列車砲!
「ふせろー!」ボッケンが叫ぶ。
リックらも従う。頭上をビームが通過、後方で爆発。
狭い通路内だ。煙突現象で爆炎が来る。身構えるリック。
爆炎はESPバリアーに守られ届かない。
「よっ!」バリアーを張ったのはヨキ!ナイスタイミングの参戦。
ヨキは瞬間的にはS級エスパーに匹敵する実力があり、対ESPシールドのある艦内でも少しはESPが使える。ただしフルパワーだと3分しかもたない。
前方、ボッケンが列車砲を切断する。そのまま走り去る。
「あいつ先行しすぎだ」
ボッケンが急ぐには理由がある。
ラカン隊は居住区ミクロ化シティの入り口に到達していた。
ラカンは両手にビームバズーカを持ち、命令する。
「第7連隊はここで敵を寄せ付けるな!ほかの者は俺につづけ!」
列車砲炸裂。
居住区の隔壁が破られ、レオンと多数の敵兵が侵攻する。
蛇型列車砲は戦車に変形し中へ。
「はあはあはあ・・」ミザールの息が荒い。
サムソン第6連隊の向かった先はここ遠隔操縦室。
二重扉の外に配備されていた陸戦隊の装甲兵は全滅したようだ。
<スペースコンドル>や装甲兵を”シンクロ”で遠隔操縦する部屋だ。ここを攻撃されたら機体が操縦不能になるばかりでなく、なす術もなく操縦者の命も奪われる。
バアン。壁を打つ音。
ミザールはライフルを構えて待つ。何を?敵が来るのを?手が震える。
音はどんどん激しくなる。やがて扉に亀裂が。
ミザールは亀裂に銃口を差し込み「うおおおおお・・・・」引き金を引く。
敵はひるんだのか静かになる。だが次の瞬間、扉が爆破される。
「!」
敵戦闘機を追っていたロミは通信機のスイッチを入れる。
「隊長、すみません。離脱します!」
『どういう事だ?ロミ!な・・』通信途中で切れる。
ロミは遠隔操縦室で目覚める。シンクロ用ヘルメットを取る。
静かだ。他のメンバーは遠隔操縦で戦闘中だ。
ロミは自分のブースを離れる。腰の銃をぬく。嫌な予感しかしない。
入口へ。扉が破壊されている!
「ミザール!」
陸戦隊に囲まれて血まみれのミザールが倒れている。
「我々が到着した時にはもう・・」
「褒めてやってくれ。ひとりでここを守り抜いたんだ」敬礼する。
ロミはミザールの亡骸を抱きしめる。
後で報告を受けたリュウはこう答えた。
「ばか野郎が。戦闘機乗りなら宇宙で死なせてやりたかった・・・・」
インパルス艦内の方々で激しい戦闘が起こっていた。
医務室も例外ではない。
次々と運び込まれる負傷者。Qたちは懸命に医療行為を行う。
その行為を銃声が一瞬で無駄にする。
ガガガガガガガガガ・・・・・
銃声と共に敵兵がなだれ込む。地球人と変わらないヒューマノイドだ。
精鋭のはずの陸戦隊装甲兵を瞬殺、敵兵は銃を乱射する。その口元は笑っている。
ビーム弾が次々とベッド上の患者たちに浴びせられる。
とっさに麗子は明をかばう。
「やめろ~!!」
ドクターQが叫ぶ。手を広げ患者を庇う。
そのQに向け銃口が・・・
「!」麗子は腰の銃に手を伸ばす。「!?(銃がない!)」
銃声。
敵兵が倒れる。
撃ったのは・・・ 起き上がる弓月明。
戦士はよみがえった。




