流血のアンドロメダ③
「来るぞ。次元レーダー、ワープアウトポイントを見逃すな!」
「はいっ」美理は計器を操作。
「スーパーノヴァボンバー、エネルギー充填100%完了」アランが静かに報告。
「トスーゴ艦隊ワープアウト予測ポイント出ました!」美理はデータを各席に送る。
サライが「艦を向けます!」操縦桿を右下方へ。
「爆裂モードで使う」
「了解。発射角度修正」ロイは爆裂モード専用ゴーグルを付ける。
両翼下の発射管がわずかに内側を向く。
ロイはトリガーに指をかける。
「5・4・3・2・1・スーパーノヴァボンバー発射!」
<スペースインパルス>は銀河連合艦隊の最先鋒にいる。その両翼下より超エネルギーが放たれる。
伸びる二本のエネルギーの束はワープアウトして来た敵艦隊へ。
敵艦を次々と消滅させ直進。徐々に二本の光が近づく。
それらは艦隊中央で接触、巨大な光の玉が輝く。
人工の超新星。光が四方八方へ広がる。
約半数の艦が爆発・消滅。
「すげ・・」思わずグレイから言葉が漏れる。「(俺も撃ちてえ)」
辛そうな美理。トスーゴ艦の多くは無人だが機動要塞や大型艦は有人だ。
光がおさまった後、敵艦隊の反撃。
無数のビームが来る。
エスメラルダ級帆船型イージス艦数十隻が突出する。
旧暦のイージス艦とは異なり、エネルギー吸収金属ラミルコンの帆を装備し、文字通り盾となり敵の攻撃を防御するのが役目だ。
敵のビームは帆に吸収される。そしてエネルギーに転換され船首に蓄えられ発射される。難点はミサイル等実弾兵器には効果がないことだ。
敵戦闘機の大編隊が迫る。半減したと言え4万機の大群だ。
迎え撃つスペースコンドルや友軍戦闘機。こちらは7万機だ。
宙空戦。
飛び交うミサイル、ビーム。数え切れない光の爆発。
続けて敵本隊。生き残った機動要塞ドプラスの大集団。約50基が左右正面三方向より迫る。
トスーゴ前衛艦隊の指揮をとるのは昆虫人のギジンダ。乗艦はひときわ巨大な<ドプラス2>。形状は似ているがその八つの先端には長い砲身の巨大砲が備わる。
中央砲塔が回転。次々ビームが発射される。それらは連続的に向かって来る。
帆船型イージス艦が防御。ビームは屈曲し帆に吸収される。
吸収したエネルギーが蓄積すると船首より発射!
『艦隊火力を正面へ集中。スペースインパルスは左右を頼む』フォアーロンの通信。
「了解した。スーパーノヴァボンバー充填はどうなっている?」流が訊く。
「エネルギー充填95%」
「通常モード、左右時間差で使用する」
「了解。オートバランサー正常。まず左から撃ちます」ロイがトリガーに指をかける。
「取舵10度」サライが艦を左に向ける。「上下角修正」
「発射!」
インパルス左翼下より光の束が放たれる。
ドプラス艦隊を次々と消滅させ突き進む。
「面舵20度」サライが艦を右へ向ける。「上下角修正」
「発射!」ロイがトリガーを引く。
再びインパルス右翼下より光の束が放たれる。
左右のドプラス艦隊は全滅。残るは正面のみ。
ギジンダは顔面蒼白となる。身体が緑色のためよくはわからないが。
それでも<ドプラス2>をインパルスに向ける。八門の巨大砲を発射する。
それらは帆船型イージス艦に阻まれ、インパルスには届かない。
流が命じる。対ドプラス戦では一番の経験者だ。
「攻撃を正面に集中!本艦両翼の艦は上下へ避けろ!ウィングサーベル展開!」
インパルス両翼よりエネルギーの剣が伸びる。
敵を次々斬り裂いて進撃する。
ギジンダの乗艦<ドプラス2>が目前に迫る。
光の翼がドプラス2に喰い込む。引き裂きながら進む。ブリッジをねらう。
「!」
一刀両断。
555mのインパルスが64kmのドプラス2を撃破る。それは銀河連合軍に歓声と興奮と自信をもたらす。
トスーゴの前衛艦隊はほぼ全滅した。
「ここまでは順調ですね」
旗艦ブリッジでフォアーロンが言う。エスザレーヌは表情を変えずに
「戦いはこれからだ。必ず何か仕掛けてくる。気をぬくな」
<スペースインパルス>メインブリッジ。
「8方向より新たな敵艦載機接近!」緊張した声でクリスが伝える。
約5万機もの戦闘機が銀河連合艦隊へ迫る。
リュウのスペースコンドルを先頭に迎撃に向かう。
宙空戦。
さらに続けて巡洋艦駆逐艦を中心としたトスーゴ艦隊6000隻が接近。
「主砲!全砲門一斉発射!」
インパルスから銀河連合艦艇からビーム・ミサイルが飛ぶ。
無数の爆発光。
「敵の本隊は?旗艦と思しき艦はどこだ?」サライが問う。
内通者より”敵旗艦は超巨大な艦”という情報がもたらされていた。
「偵察機から連絡なし」ショーンの返答。
「それらしき艦影は認められません」クリスの返答。
「まだ雑魚ってことか」計器を操作しながらロイがつぶやく。
第一砲塔が旋回する。
リックが操作する。 発射!
命中し、四散する敵艦。
ちょっとにやけるリック。すぐに戻り「次!」
「二時方向上方70度、距離200万kmに大型艦の反応多数あり。約500。今の敵のコントロール艦と思われます」指向性サブレーダー担当のカノンのお手柄。
「エネルギー充填85%完了」
「スーパーノヴァボンバー発射!」
再び発射される超エネルギー。
無数のきらめき・・・そして一瞬の静寂。
トスーゴ第三艦隊旗艦<アフロディーテ>。その現在位置はわからない。
広大なブリッジで戦況を見ているアリアは静かに命令する。
「行け!」




