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53プリムローズ竜になる。最終話&エピローグ

 

 「ブレディ?それで宝珠はどうなったんでしょう?」

 「多分だが…プリムローズが覚醒を起こした時一緒に身体に吸収されたんじゃないか?まあ、宝珠が欲しければアルナンドから授けてもらえばいいだけだし‥兄貴はここが片付いたら助けに行こう」

 「はい、お願いします」


 それから話は早かった。

 ライゼウスから事情を聞きだし、人身売買のすべてはルジェス商会が取り仕切っている事がわかる。

 ルジェス商会は第2王太子セザリオの祖父が取り仕切っている商会で、多くの金が側妃にも流れているとか。

 アルナンドはライゼウスを連れてすぐにラルフスコット辺境伯の所に出向いた。

 セザリオは捕らえた大勢の男達や魔導士たちと一緒に取りあえずライゼウスの屋敷に閉じ込めておくことになった。

 見張りはカイトに任せることになる。


 一方プリムローズの心は行方不明になったままの母の事ばかりで。

 「アルナンドほんとに母の行方が分かるかしら?」

 「ああ、きっとわかる。俺たち竜人には色々な能力がある。例えば…」

 アルナンドが手を伸ばす。

 いきなり大気中の水蒸気が凍ったと思うとそれがはらはらと降り注ぐ。

 まるでダイアモンドのような氷の欠片が空中で光り輝き舞い踊る。

 「うわぁぁぁ、きれ~い。すごいわ。アルナンド」

 沈んでいたプリムローズが一気にはしゃぐ。

 「喜んでもらえてうれしい。俺は君を喜ばせるならどんな事もする。お母さんは必ず見つける。だから…」

 「ええ、ええ、アルナンドの言う事を信じるわ」


 アルナンドはその言葉を聞いてうれしさで胸が震えた。

 「ありがとうプリムローズ。こんな俺を信じてくれて…さあ、辺脅迫と話をしに行こう」

 一緒に辺境伯の屋敷を訪れる。

 プリムローズは大きな屋敷を目の前にしてそれを見上げた。

 (ほんの少し前までここに住んでいたなんて。今までは何もかも諦め生きる気力さえ失っていた気がするわ。でも、今はもう違う)

 アルナンドが手を差し出して来た。プリムローズが手を差し出すと、大きくて温かなぬくもりにぎゅぅぅと握りしめられた。

 「さあ、行こう」

 「はい、アルナンド」


 それからラルフスコット辺境伯と話をして一緒に王宮に向かうことになる。ライゼウスも証人として同行することに。

 もちろんアルナンドとブレディが竜化して王都まで行く。

 ライゼウスはブレデイが背に乗せることになった。

 「プリムローズ?覚醒したなら竜になれるはず。一度やって見ないか?」

 「えっ?今なんて…」

 プリムローズ目が点になる。

 「最初だからな。まず、手を広げて‥そうだ。脳内で翼を羽ばたくようにイメージをして身体の中心をぐっと押し広げる感じで…」

 目の前でアルナンドが一気に竜化する。

 「さあ、やってみて」

 「ええ…お腹に力を込めて…エイッ!」

 ぼわん!


 プリムローズが竜に変身した。

 その姿はとても美しかった。身体のベースははちみつを溶かしこんだような金色でプリムローズは少し体を揺らすと鱗が七色に輝き、まつ毛や爪はピンク色、瞳は淡いピンクローズのような色合いで…

 「うっわぁ!すげっ。ぷ、プリムローズ。やばいよ。こんなきれいな女の子見たことない。俺もう、メロメロになりそうだ」

 いち早くそう言ったのはブレデイだった。プリムローズのそばに寄り付きその首元にすりすりしそうな勢いだったが…

 「どす~ん!」地響きがした。


 「ブレディ!!下がれ!この、プリムローズは俺の。俺の番だ。近づくんじゃない!…プリムローズ。やっぱり竜になるのはよそう。こんなきれいな竜今まで見たことがない。ほんとにきれいだ。ああ…それになんて可愛い…」

 アルナンドはブレディを一撃で張り倒すとプリムローズの首に自分の頭をこすりつけた。

 そしてプリムローズの元に跪くようにして前足の爪をそっと持ち上げキスをした。


 (これってマーキング?もう、アルナンドったらくすぐったい。それにさっきからそんなに騒いでるけど私自分の顔すらまだ見れてないのよね。何だか身体が思うように動かないし、あっ、振り向いたら全く視界が違うじゃない。えっ?何?これが私?)

 プリムローズは首を後ろに向けた。

 その途端つばさが目に入った。身体じゅうが金色の鱗で覆われているのも…

 「わ、私。ほんとに龍になったの?なにこれ?すごい。じゃあこの翼で飛べるって事?」

 プリムローズはバサバサ翼を動かす。

 「あ、危な!!おい、プリムローズ。いきなり翼を羽ばたかせるな」

 「ごめんなさい。つい、うれしくて」

 「うれしいか?恐いとか嫌な気持ちは?」

 「ううん、だってすごくきれいじゃない。この色私と同じ…」

 ルンルン気分のプリムローズを見てアルナンドはほっと胸を撫ぜ下ろす。

 竜人はないが、人間や竜族は竜化してその身体に恐怖を抱くものもいるから心配したのだが…


 「ブレディ。少しプリムローズを連れて飛ぶ練習をして来る。少し待っていてくれ」

 「ああ、気をつけろよ」

 そうやって広い敷地に行きプリムローズに羽ばたきから飛ぶときのこつを教えていよいよ飛ぶ時が来た。

 まずアルナンドが飛び立つ。続いてプリムローズが助走をつけて翼を羽ばたく。そして身体が宙に浮く。

 「そうだ。来い。プリムローズ。さあ、上を見て、俺のところに飛び込む感覚で…いいぞ。そうだ」

 アルナンドはずっと声をかけ続けプリムローズを励まし彼女を支える。

 そしてついにプリムローズはアルナンドの舞う空に駆けあがって行った。

 すぐに楽しそうに二匹の竜が絡み合うように空で舞う姿が見られた。


 ブレディはその様を見ながら思った。

 (これって夫婦での初めての作業ってやつ??っていうか。いや、まだ結婚してないけど…俺何考えてんだろう。お熱いふたりに見せつけられて…ったく。やってられない)

 「いい加減にしろよアルナンド。そろそろ行こうぜ」

 そして3匹とラルフスコット辺境伯は王都に向かった。


 王都の上空にかかると人々が騒ぐのが見えた。

 アルナンドとブレディ。プリムローズ。3匹の竜はゆっくりと王宮の上で旋回すると王宮内の広い敷地に舞い降りた。

 周りをメルクーリ国の騎士団に囲まれ手はいたが、警戒はされてはいないらしく、ラルフスコット辺境伯が事情を説明して国王に謁見を申し出るとすぐに許しが出た。

 それからすぐに国王に謁見がかない、ライゼウスの証言で人身売買の実態が明らかになった。

 事態を重く見た国王はすぐに側妃を呼び出し話を聞きだした。側妃は諦めたのかすぐにすべてを話した。

 ルジェス商会を詳しく調べ国王自らきちんと解決することを約束した。

 カイトの兄が強制労働させられている鉱山の摘発もすぐに行われカイトの兄は無事に救出された。


 そしてプリムローズの母の行方はすぐにわかった。

 すぐにプリムローズたちはフェルザル国に向かいある貴族の屋敷で働く母の元に向かった。

 もちろん竜化を解いて人間の姿で屋敷を訪ねた。

 アルナンドはゼフェリス国の竜帝としてきちんと正装をして。

 プリムローズはその妻として美しいドレス姿だった。

 「私はゼフェリス国の竜帝のアルナンド・エステファニア。そして妻のプリムローズ・エステファニア。実はこちらにローラと言う竜族の女性が働いていると伺いました。今日はその人に会うせて頂きたく伺いました」

 その女性が妻の母だと話をするとその家の執事が慌てて主人に話を取り次いだ。

 そしてすぐに屋敷の中に案内されその女性の所に。

 その女性は屋敷の裏手の水場で洗い物をしていた。背中をまるめ一生懸命腕を動かしている。

 小さな身体は長い間苦労して来たことを思わせた。

 プリムローズの胸は震えた。すぐにお母さんと声を掛けようとするが喉の奥がつかえたみたいで声が出ない。

 「あの…失礼ですが…ローラさんでは?あなたにはプリムローズと言う名前のお子さんがいますか?」

 戸惑うプリムローズを抱きしめるようにしてアルナンドが声をかけた。


 はっとその女性の顔が上がった。

 プリムローズと目が合いその人の顔が一瞬強張った。

 次の瞬間その女性の目から涙があふれだす。次から次に涙が滝のように流れふらふらと立ち上がってプリムローズの前に来た。

 「ああ…夢じゃないの?プリムローズ。どんなに…どんなに会いたかったか…」

 「お、おかあさん?わ、私がわかるの?」

 「当たり前じゃない…でも髪の色が変わった?」

 「ええ…でも、私、ずっと忘れてたの。お母さんが男に連れ去られて…グスッ…もっと早く来れたかも知れなかったのに…ごめんなさい。お母さん。私を許して…お母さん。おかあさん…」

 プリムローズの頭に浮かんだのはお母さんがこんな苦労してたのは全部自分のせいで。

 だから…謝る言葉しか思いつかなくて…

 「お前の性じゃない。あなたはまだ幼かったの。怒るはずないわ。だってあなたがこうして来てくれた。ああ…あなたを忘れた事はなかった。ずっと…ずっと会いたかった…」

 ふたりは抱き合い再会を喜び合った。



 そしてプリムローズはゼフェリス国に行く事に。

 すぐに竜帝の婚姻の儀を執り行う準備が始まり、母親はせぶりの森に帰ることを望んだ。

 母のローラは宝珠を賜りせぶりの森の守り人となった。カイトは兄を助け出してもらい兄弟で一緒にせぶりの森を復活させることになった。


 アルナンドはプリムローズを妻に迎えそれから長い時間を幸せに暮らした。

 追記~

 アルナンドは妻の尻に敷かれっぱなしだった事は言うまでもないことだった。



                         ~おわり~



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