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52プリムローズお前もか?

いつもたくさんの方に読んでいただきありがとうございます。明日はいよいよ最終話です。最後までよろしくお願いします。はなまる

 

 「ぷ、プリムローズ。俺と結婚して欲しい。俺の番。俺の唯一。俺の希望。俺の愛しい番。結婚しよう」

 アルナンドはどもりどもりながらついに告白した。

 「はっ?子供が出来たから?そんなつもりもないけど?仕方なく?どうして?いいのよ別に気にしなくてもお腹の子は私一人で産んで育てるんだから。じゃ、さようならアルナンド」

 プリムローズはちょうど服を着終えてさっさと扉に向かう。


 慌ててアルナンドはプリムローズの前に跪く。

 「違う。そうじゃないんだ。プリムローズが好きなんだ。愛してるんだ。唯一なんだ。プリムローズなしでは生きてはいけないんだ。だから俺と結婚して欲しい。いや、絶対結婚してもらわないと困る。お腹の子供だって。俺は父親なんだ。その権利はあるはずだろう?」

 「何よ!そんなプロポーズ。これは一生の記念なのよ。思い出になることなのよ。そんな大事なプロポーズをこんな場所で?たった今嫌な奴にどうにかされそうになったこの部屋で?いったい何考えてるのよ。あなたなんか大っ嫌い!」

 跪くアルナンドを足蹴りにしてプリムローズはさっさと部屋を出て行った。


 階段を下りて行くとライゼウスの手下だろう男たちがざわついていた。

 ライゼウスも部屋から飛び出して今まさに階段をあがろうとしている所だった。

 「プリムローズ。殿下は?殿下は無事か?」

 「はっ?ベッドで伸びてますけど、死んではいません」

 「そうか。ちょっと待てお前はどこに行くつもりだ?いいからここで待て。いいな?」

 ライゼウスはまだ宝珠の束縛の術が聞いていると思っているのだろう。えらそうにプリムローズに命令した。

 「そんな術がいつまでも効くと思ってるの?馬鹿にしないで!私はあなたの奴隷じゃないの。勝手にさせてもらうから」

 プリムローズは上がりかけているライゼウスを突き飛ばした。

 「バッコ~ン!!」

 そんなに力を込めたつもりはないのにライゼウスは見事な放物線を描いてフロアの床まで吹っ飛んだ。

 したたかに腰を打ち付けてライゼウスは悶絶した。

 「くぅ~。女のくせに…おい、何をしている。いいから早くあいつを捕まえろ。殿下の用が済んだらフェルザルに売り飛ばすんだ。ああ、それから身体に傷をつけるんじゃないぞ。価値が下がるからな」

 ライゼウスは手下に命令を出す。


 男達が一斉にプリムローズを捕まえようとした。

 その時一人の男の顔に見覚えがあると思った。

 (この男、確か母を連れて行った男じゃ?ある夜母はあの男に連れて行かれてそのまま帰ってこなかった。数日して宿の主人が困ってマグダに聯絡をしてマグダが連れに来てくれて…マグダも心配してたけど何年待っても母は帰ってこなかったからみんなはもう死ん田に違いないって事になって、私もそう思うようになって行って…でも、もし母が生きていたら?)

 そんな考えが脳内をよぎる。

 (ずっと十数年もそんな事考えないようにして来たのに…私どうして今日はこんなに色々ん事を思い出すんだろう?)

 そんな事を思っていて動きが遅れプリムローズは男たちに取り囲まれる。


 「プリムローズ俺に任せろ!」 

 アルナンドが部屋から飛び出して来たと思ったら取り囲んだ男達をあっという間になぎ倒した。

 「あ、ありがとう…アルナンド。あの男だけど…私のお母さんを連れて行った奴だと思うのよ。だから聞きたいことがあるからちょっと下がっててくれない?」

 プリムローズは階段下になぎ倒されている男のひとりの首元を掴んだ。

 グイっと力を込めると信じられないほどの力が出て男は首吊りみたいに吊り上がった。

 「うわぁ!助けてくれ…女のくせに化け物みたいな怪力なんて…」

 男はすでに涙目で。

 「ちょっと私の聞くことに正直に応えなさい。そうすれば下ろしてあげるから。いいわね?」

 男はこくこくと頷く。

 「12~3年前。ロッサドで私と同じ髪色と瞳の女性を連れ去ったでしょう?女の子を連れた母親よ。名前はローラ。嘘を言うと首を絞めるわよ」

 プリムローズの母は彼女と同じはちみつ色を溶かしこんだような金色の髪で瞳は淡いピンク色だった。

 男の顔が歪む。何かを考えているようで眉間にはしわが寄って行く。


 そしてやっと思い出したというようにはっと目を見開いた。

 「ああ…そう言えば。あんたとよく似た女をフェルザル国に売り飛ばした気が…」

 「そんなあいまいな答えで許されるとでも?」

 プリムローズの撫子色の瞳に一筋の光が宿る。

 

 アルナンドはその様子をそばでじっと見ながら確信する。

 きっとプリムローズも覚醒したんだ。あの力、あの瞳、そして何より彼女の髪ははちみつを溶かしこんだような髪色から七色の髪色に変っていた。

 本人はまだ知らないだろうが、アルナンドの髪色と同じ色になっている。


 「その人は金色の髪で撫子色の瞳だったの?どうなの?はっきりしなさいよ!」

 「それが…あなたの髪色はどう見ても七色のように…いえ、とっても美しくて…あっ、でも顔つきはあなたによく似てますよ。確かローラと言ってました。すごく高値で売れた記憶がありますから」

 「やっぱり!あなたが母を売ったのね。許さない」

 プリムローズの手に力が籠る。

 「プリムローズ止めるんだ!そんな奴お前の手を汚すまでもない」

 アルナンドがその男をプリムローズからかっさらうと男の腹をぎったぎったに拳で打ちのめす。

 男は意識を失い口からあぶくを吹いて白目をむく。

 そしてアルナンドの腕からずるりと抜け落ちて床にどさりと倒れ込んだ。

 まるでぼろ雑巾のようにふにゃりとなった身体をプリムローズが足蹴りした。

 「お母さんはこいつに…こいつに無理やり…」

 プリムローズは意識のない男を何度も蹴る。その顔は苦痛に歪み涙がぽろぽろ零れ落ちている。

 アルナンドはおろおろしていたが、やっとプリムローズをそっと後ろから抱き締める。

 「プリムローズ。お母さんを探そう。きっと見つけるから…そしてこいつらは決して許さないから。俺がきっちり片を付けてやる。だから…」

 ぎゅっと抱き留められた力強い温もり。

 そこから伝わってくるのは心配している気持ち。

 思いやる優しさ。

 そして何より君を愛しているという溢れんばかりの愛。


 プリムローズはたまらなくなる。

 くるりと向きを変えるとアルナンドの胸に飛び込んだ。

 「アルナンド。愛してる。もう二度と私を手放さないで」

 「ああ、俺も愛してる。だからもう泣くな…もう二度と手放さないから」

 「ちがっ!今はうれしいから泣いてるの。あなたに愛されてるってわかったから‥おかしいのよ、自然と考えが伝わるの」

 「心配するな。俺が覚醒した時きっとプリムローズにも覚醒が起きたんだろう。俺達はほぼ同時に覚醒したらしい。愛してるプリムローズ。俺と結婚してくれるな?」

 プリムローズは背伸びをするとアルナンドの唇に自分の唇を重ねた。

 アルナンドの目が泳ぐ。

 「これは、オッケーって事だよな?」

 「決まってるじゃない!それとも私が他の人にこんな事すると思ってるの?」

 アルナンドは首を千切れるほど振る。


 「目出たいのはわかったからさぁ…そろそろいい加減にしてくれないか?」

 ブレディがすぐそばに立っている。カイトもいる。

 「なんだブレディ。妬くな。少し待ってろ。俺は竜帝なんだぞ。これは命令だ」

 アルナンドはそう言うと今度は自分からプリムローズに熱い口づけをした。

 それは一度や二度ではなかったのは言うまでもない。

 

 「はぁぁぁぁ…やってらんない。カイト、外で待とうか。その間にあいつらみんな片付けてしまおう。俺は今誰かれ殴りたい気分なんだ!」

 ブレディは鼻息を荒くした。

 「そうですね」

 ふたりで飛び掛かって来る男たちを殴りまくる。


 カイトたちは庭に出て倒れた連中をひとまとめにして空を見上げた。

 「「あっ!」」

 さっきまでどんよりと雲が垂れこめていた空はあっという間に晴れ渡りふたりを祝福するかのように晴れ渡っていた。



                     






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